ALS患者にとって、コミュニィケーション手段の確保は深刻な問題です。次々と失われていく機能の内、最後まで残ると言われている「視線」を使い、コミュニィケーションを取れるのが『透明文字盤』(以下『文字盤』)です。
右の写真が私の使っている『文字盤』です。
私の入院している病院では通常、「表」側を患者、「裏」側を読取り者に向けて使用していますが、逆でもかまいません。特に読取り者が初心者の場合は、「表」を読取り者側にした方が良いでしょう。
(便宜上、このサイトでは「表」側を患者、「裏」側を読取り者に向けて使用するものとして図等を表示しています。)
患者と介護者・看護師が『文字盤』を使いこなすことがQOL(生活の質)向上には欠かせません。
『文字盤』は、少し練習すれば誰でも使えるようになりますし、コツを掴むと、手品かと思わせる位の早さで患者と会話ができるようになります。
★慣れれば1秒に1文字程度は軽くクリアできますよ! V(^0^)
この患者の視線と読取り者が一直線になる線(目が合う状態)を、説明上このサイトでは【一直視線】と呼ぶことにします。(勝手に名付けたもので正式名は知りません)
下の図では『ね』が【一直視線】と交わりますから、患者は『ね』と言いたいことがわかります。

この原理を理解し、【一直視線】を見つけるコツを知ることが、『文字盤』読取りには欠かせませんし、上達への近道です。
(♪目と目で通じ合う〜♪そんな歌もあましたね・・・余談です。)
原理で説明した 「患者の視線と読取り者の視線を一直線にする」為には、患者と読取り者のポジション(位置関係)を適正に取れるかどうかが大きく影響します。

基本は、患者と読取り者が、間に『文字盤』を挟んで正面に向き合うことです。

右図のように患者がベッド上で仰臥位(仰向け)になっている場合も同様に、患者の顔と正面に向き合うようにします。ベッドの側面が邪魔になりますが、上半身をベッド側に倒し、できるだけ患者の顔の正面と向き合うと眼球の動き(視線)が分かりやすくなります。
患者と『文字盤』の距離を小さくすると、眼球の動く範囲が大きくなるため読取り易くなりますが、眼球を大きく動かす患者は疲れますし、患者が老眼などで『文字盤』に焦点を合わせられないこともあります。一般に20〜30センチくらいが、読取りし易く患者も疲れにくい距離のようです。お互いの疲れにくく読取りし易いポジションを見つけましょう。

読取り者が【は】を指差すか読上げればYESの合図(目を閉じる)を出し、次の【し】を見つめます。【は】以外の間違った文字を指差した(読上げた)時には、合図をださずそのまま【は】を見つめ続けます。
合図はあらかじめ決めておきます。「目を閉じる(マバタキする)」が多く使われるようですが、「口を開ける」・「目を大きく開く」など、患者の残存機能に合わせて決めます。また、合図をだすのは、「YES」の時だけで「NO」の時には何もしないのが一般的です。

患者の見ていると思われる文字が患者の目の正面にくるように『文字盤』を動かします。
右の図では、患者(ロバ)が『文字盤』の上の方の文字を見ていることが分かります。
患者が見ている文字を患者の目の正面に持ってくるには『文字盤』を下方向に動かします。『文字盤』を動かしていくと患者の視線と目が合う【一直視線】が見つかります。
【一直視線】を見つけたら、『文字盤』と交差する文字(ここでは【は】)を指差します。(又は読み上げます。)
指差した文字が正解なら患者からYESの合図があります。
合図が無い時は、指差した文字が間違っています。患者の眼球を良く見ながら『文字盤』を少し動かし、再度【一直視線】を確認して下さい。
眼球の動きが分かりにくい時は、『文字盤』を患者に少し近づけると分かりやすくなります。
【一直視線】を見つけるには、
これがコツです。
例えば、患者が左を見ていたら、『文字盤』を右に動かし、右下を見ていたら『文字盤』を左上に動かします。
尚、『文字盤』によっては裏から見ると『ち』が『さ』に(逆の『さ』が『ち』もあり)読めてしまうモノがありますので注意して下さい。
それと、慣れるまでは文字を読取ることに集中するあまり、一つ前に読取った文字を忘れてしまうことが、よくあります。
慣れるまでは、メモを取りながら! 進めましょう。
読取り者側、患者側から見た『文字盤』はそれぞれ下図[上段:パー(5本指)、下段:1本指]のように見えます。


上段のパー(5本指)と下段の1本指、どちらも【は】を指差しているのですが、患者側から見てどちらが分かりやすいか一目瞭然だと思います。
どの文字を指しているかが分からなければYESやNOの合図が出せません。
特に薄暗い照明下では本当に分かりにくいうえ、病院等施設では読取り者毎に文字を指差す指が違う(Aさんは人差し指、Bさんは中指、そしてCさんは小指等)為よけいに指を全部広げて「パー」されるとどの指で指差しているのか分かりにくいのです。
私の経験上、『文字盤』の読取りが下手な人の多くが図のように斜めになっています。


『文字盤』に慣れてくると、読取り者は患者が文字を見るより先に単語や助詞(単語の後ににくっつく言葉:いわゆる「てにをは」)を読上げてしまいがちです。その単語や助詞が患者の伝えたい言葉なら良いのですが、違うことも多々あります。
単語が違えば患者の伝えたいことが伝わらないのは当然として、助詞が一つ違っても意味が分からなくなります。
例えば、患者が「あしのうらがかゆい」と伝えたいとします。
読取り者が「あし」まで読んだところで次の文字を「を」と先読みしたら、「あしをのうら」と意味の分からない言葉になってしまいます。(患者が気を利かせて「の」を省いたとしても「あしをうら」となり、伝えたい意味とは違ってきます。)
また、「あしのうら」までちゃんと読んでも、次の「が」を別の助詞に先読みしたら同様です。
このように日本語では助詞(特に「が」「を」「に」「へ」等の格助詞)が1文字違えば意味が違ってくるのですから、先読みせず最後の1文字まで読みとって下さい。
ちゃんと【一直視線】上の文字を読み上げているつもりなのに患者からYESの合図を得られない時は、ズレが有ると考え次の方法をお試し下さい。
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@まず、患者の眼球の向きと反対方向に『文字盤』を動かします。(ここまでは同じ) そして【一直視線】が有ると思われる文字列のだいたいの位置を掴みます。ここでは大まかな見当でかまいません。 |
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A次に、先程見当を付けた文字列を指差しながら患者に「この行?」と聞きます。(例:「あ行」) YESの合図があった場合Cへ NOの合図があった場合Bへ |
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B患者がYESの合図を出すまで、行をずらしながら聞きます。(例:「い行?」)、「う行?」・・・) |
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C患者がYESの合図を出した行で、@で見当をつけた範囲内の文字を順に指差し「これ?」と聞きます。(例:「ち?」)、「に?」、「ひ」・・・) |
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D患者がYESの合図を出すまで、文字をずらしながら聞き目標の文字を見つけます。 |
これを繰り返す間に、「どの程度、視線がズレているのか?」が分かってきます。そうなれば読取りも早くなるはずです。
テクニックと呼べるほどのものではありませんが、この方法なら時間は掛かりますが、確実に患者の伝えたい言葉を知ることができますので、初心者にお勧めです。
このページの最終更新日:2008-8-30
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