用語集 Glossary
アーチ(arch)

 石造の壁体に開けられた開口部(窓や入口)、あるいは柱と柱の間の上部を閉じるためには、一般的に、アーチかリンテル(まぐさ石)を用いる2種類の方法がある。建物の規模や開口の幅が小さい場合には、それほど変わりはないが、大規模な建物になると、アーチを用いるほうがリンテルに較べて、ずっと費用が安く工事も容易になる。古代エジプトやギリシアの建築ではリンテルが一般的であったが、ローマ時代になると、アーチが多く用いられるようになり、それ以降の建築ではほとんど専らアーチを用いられるようになる。
 費用が安くなるというのは、リンテルが必ずモノリス(一本石)でなければならないのに対して、アーチは複数の迫石(せりいし)からなることに起因している。巨大なリンテルはまず、石切場で切り出すのが大変であるし(そもそも巨大な石を切り出せるほど石層の安定した石切場がいつもそばにあるわけではない)、牛馬にひかせなければとても運べない。また、建物に設置する際にも、大がかりなクレーンがなければ持上げることもできない。しかし、これに対してアーチの迫石は一つ一つが小さいので、切り出しは容易であるし、運搬も手押し車で運んだり、小舟に積みこむこともできる。現場では滑車とロープがあれば設置場所に引き上げることができる。
ヴォールト(vault)


石またはレンガで築いたアーチ形の石造天井。「アーチ形の」と断るのは、平らな板石を梁の間に架けるエジプト建築で一般的な石造天井と区別するためである。
アーチは奥行きがあるとはいっても、三次元的に空間を被うものではない。ヴォールトは二次元的な石造アーチを三次元的に発展させたもので、基本的なヴォールトとしてのドームはアーチを回転させたもの、トンネルヴォールトは、アーチを重ねて奥行きを増やしたものと考えられる。
中世建築のヴォールトは、ドームとトンネルヴォールトの2種類のヴォールトを基本として作られている。

バシリカ式教会堂

初期キリスト教時代に、集中式教会堂とバシリカ式教会堂という、
二つの教会堂の形式が生まれた。そのうち、集中式は主として東方で発展し、バシリカ式は西方で発展した。
集中式教会堂が、円形、多角形、十字形などを基本とする平面をもつのに対し、バシリカ式は東西に長い平面をもつ。一般に西側に入口をもち、東側に聖職者が礼拝を行う内陣がある。
バシリカ式の特徴は、外陣の空間構成にある。すなわち、身廊という中央空間の両側に側廊という副次的空間を配し、それぞれの間はアーケードで区切られる。身廊は側廊より高い空間で、最上部に窓が開く。
身廊壁面を構成する要素は4つである。すなわち、下から、大アーケード、トリビューン、トリフォリウム、クリアストーリーである。このうち、トリビューンとトリフォリウムは、西方のバシリカ式教会堂では、中世になって普及した。大アーケードとクリアストーリーはバシリカ式教会堂になくてはならない要素である。すなわち、大アーケードの存在は、その背後に側廊があることを意味し、クリアストーリーの存在は、身廊が側廊よりも高い空間であることを意味するからである。
したがって、中世のバシリカ式教会堂の身廊壁面は、大アーケードとクリアストーリーの2層になるか、これにトリビューンかトリフォリウムを加えて3層、あるいは、トリビューンとトリフォリウムの両方を加えて4層のいずれかになる。
シュパイヤー大聖堂、マリア・ラーハ、ウ゛ェズレー、
トゥルニュ、ニヴェル、ポンティニー
カンのラ・トリニテ、モン・サン・ミシェル、パレ・ル・モニアル、ル・マン大聖堂
カンのサンテチェンヌ、ヌヴェールのサンテチェンヌ、ダーラム大聖堂、イーリ大聖堂、ソワニー トゥルネー大聖堂、リンブルク・アン・デア・ラーン
アーチ
ヴォールト
バシリカ式教会堂
広間式教会堂
ペンデンティヴ