加納幸和さんに聞く『ゴクネコ』&『ハイライフ』


『ゴクネコ』が終り、ハナオフ『ハイライフ』の稽古が始まる前に、加納さんにお話を伺いました。客演を迎え新たな取り組みが多く見られた『ゴクネコ』を振り返り、『ハイライフ』について、更にはこれからの花組芝居についていろいろお話いただきました。
加納さん、及び花組芝居さんのご厚意により、インタビューを掲載させていただきます。

なお、以下の文章の文責はすべて大原にあります。


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●『ゴクネコ』とても楽しくエンターテイメント性の高い作品でしたね。今までの花組芝居にはないテイストの作品になったと思うのですが?

それは大きくは小池(竹見)さんが脚本を書いたからでしょうね。

●今回は和物ミュージカルということで、意識していたことはどんなことですか?

今回は和物ミュージカルということでその点を考えて、ミュージカル的な歌曲の入れ方とは違う形にしたいなと思ったんです。歌舞伎とミュージカルの大きい違いというのは、まず歌という点では、歌舞伎は演者がソングを担当しないということがあります。台詞と踊り、動作などの演技はやりますけどソングに関しては専門の方が舞台で歌うという形を取っている。ミュージカルは、オペラから派生しているからか演者が歌うんですよね。

たとえば「クロの子別れ」のクドキみたいなところは台本上の書き方は浄瑠璃ふうに、台詞と台詞の間に詞章が入っているような形にしました。ここは村治(崇光)さんと竜(小太郎)君とどっちに歌ってもらおうかなと思って最終的には竜君にしました。

それと、歌舞伎では場面の状況描写を登場人物が出てくる前に歌ったり語ったりする「置唄」というのがあるんですが、それを2曲入れました。作曲という点では西洋の感覚で作ってもらったんですけど、置唄をはめこんだことは歌舞伎的な、日本の古来の音楽劇の感覚のものなんですね。

●拝見していて思ったのは、伝統的なものをベースにしつつ、そこから新しいものを誕生させているなと。21世紀に作るべき新しいミュージカルになっていたように思います。

常にそういうことを考えてるんですよね。今回は竜君が大衆演劇の人なのでお客さんとのコミュニケートの仕方がとてもわかりやすいというか平易な感じなんですよね。小池君は等身大の本をいつも書いてる人なので、文章も平易で親しみやすい感覚が全編にあるんです。そんな親しみやすい雰囲気の中でも、ちょっと新しい、ある種前衛的な今までにないことをやってみようというのは、意図してやっていたつもりです。

●今回は、普段は歌舞伎舞台を作っている金井大道具が大道具製作を担当されてましたね?

今回は時代物だし和物ミュージカルという感じをうまく出すためには古来の歌舞伎の書割が必要だなと思ったんです。書割の技術というのは歌舞伎舞台を作っている会社じゃないとできないんですよ。技術者がいないということなんですよね。
以前『奥女中たち』を上演したときの壁面の絵は、初演のときは絵師を呼んで描いてもらったんですよ、それで別料金になっちゃった(笑)。再演のときは舞台美術プランナーの川口夏江さん自身が全部描いたんです。

今回は、本来歌舞伎の舞台を作ってらっしゃる金井大道具さんにいろいろ相談して、実現したんです。この舞台の美術プランは「書割・命」ですからね(笑)。

●今回は竜小太郎さんという客演を迎えたことが大きなポイントだったと思いますが。

客演は)女性ですと以前は幸和希さんに出ていただいたんですけど、男性ですと僕らは魑魅魍魎ですから(笑)その中に入っていただくとなると相当何か個性なり技術なりというものがないと埋もれちゃうんですね。だから同じ現代演劇の中ではなかなかこの人という人はいなかったんです。

でも竜さんはジャンルが違いますし、歌えるし踊れるし女形もおやりになる。だったら僕らの中で一緒に動いてもらっても絶対彼だけはゲストに見えるはずだ、ゲストの役割を果たせる人だと思ったんです。今回は竜君が持ってるものに大分頼った作り方にしましたけどね。

●それは具体的には?

ここのシーンはもう竜君にまかせておけば大丈夫だとか(笑)。

●(笑)竜さんはやっぱりとても力がある方なんですけど、花組の方も見せ場が多かったですよね。

そうですね、そこは上手く書いてくれたなと思います。

●それぞれの方が特徴がある出方をされてましたしね。今回の公演で今後の花組の布陣が見えるかなという気がしましたが、加納さんとしては?

それは意識しましたし、そういう形になっていたからよかったんだろうと思いますね。小池君自身も『和宮様御留』で演出補で参加してもらってるので、「この役者はこんなもの持ってる」というのが分かって書いてくれてますから。最終的には配役は最初小池君が考えていたプランとは変えちゃいましたけど、ある程度はまってる感じで配役されてましたね。

●私が一番印象に残ってるのはラスト近くのチャンバラのシーンで、加納さんの演出力の素晴らしさに圧倒されました。

昔見た時代劇映画の、「壮大なセットの中で何百人という出演者が右や左に動いて、カット割がある中に、三人娘とかが全盛のころはそこに歌や踊りがあって……」というような感じが舞台で出せないかなというのはありましたね。「芝居小屋のお客さんがたくさんいるところで大立ち回りが始まっていろんな人が右へ左へ動いて」とか。それで(あの場面を作るときは)チャンバラの中に「じゃあここは皆後ろで踊っちゃえ」とかやってたんです(笑)。この場面が出来たのも、今までやってきたことの積み重ねなんでしょうね。

花組芝居OFFシアター『ハイライフ』について

8月のハナオフ『ハイライフ』では加納さんが演出されますが、どういう舞台になりそうでしょうか?

これは翻訳劇なんですが、僕は役者の演技だけを演出したいと思ってるんです。初めは水下(きよし)が見つけてきた脚本で、水下自身がこういうふうに演出しようかなというのも考えてたみたいです。
でも、「ディックの役は絶対水やん(水下)だよ」という話になって、「じゃあ僕が演出するけれども、水やんがやりたかった装置や空間は僕がそのまま使いたい」ということにしたんです。

だから外枠は人のもので、中身だけ、役者の演技だけを僕が見るということにしました。それは僕が一度やってみたかったことなんですね。

僕の演出ってどうしても外枠から作るところがあるんです。僕もそうしたくなるというのもあるし、お客さんもそれを期待するだろうということもあって、たとえば「幕が開いたらお客さんがびっくりするように」とか劇空間の外枠作りが先行していってしまう。外枠を作るのに精一杯になってしまうこともままあるので、『ハイライフ』では役者の演技だけに集中して演出することにトライしてみることにしました。

今回は僕が思っているリアリズム、歌舞伎の芸談などから見聞きしたものも大分入ってると思いますが、お客さんに見せるためのリアリズムというのを、役者の演技というだけに焦点を絞ってやってみたいと思います。

●加納さんが演出してる中では、珍しい題材ですよね?

ええ。まず荒唐無稽なことをする必要がないんです。今まで舞台上も人数もシンプルなものをやったことはありますけど、たいがいそれはお化けが出てきたりとか(笑)、何か荒唐無稽だったんですよ。今回みたいに「ドラッグにはまっちゃってる4人組」なんていう題材は初めてです。今の日本にこういう人たちがいるかどうか分かりませんけれど、リアルですよね。考えてみると花組は男だけの集団だったと(笑)。今まではあまり表に出なかった男たちというのが見せられればよいかなと思ってます。

●このあとは鏡花まつりもあり、加納さんは来年も大きな企画が目白押しのようですね。

それに再来年は劇団20周年なので、来年終りの頃は20周年のための準備を始めないといけない。

●20周年ですか!

20年ですね。なんかねえ、あっという間のような気もするし、いろんなことがあったことは確かですけど。……なんだか、まだ自分自身不安ですね、20年たったらもっと立派な感じになってるのかと思ったんですけど。花組芝居にもまだ不安だなと、もっともっとやるべきことがあるんじゃないかなという印象はありますね。

●それは、これだけ成果を出されているからそう思われるんじゃないですかね?

そうかなー…?

●加納さんとしてはこの2年は本当にお忙しいですね。

そうですね。幸いいろんなことができるというのはありますね。

●ますます楽しみにしております。ありがとうございました。



花組芝居20周年に向けて既に走り出していらっしゃる加納さん。客席側の私たちも遅れを取らずについていきたいものですね。
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