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東京公演と大阪公演の間の貴重なお休みの日に加納さんに花組芝居15周年記念公演『南北オペラ』についてのお話をお聞きしました。加納さんの寛大なご配慮により、その模様をアップさせて頂きます。
今回も大変貴重なお話をお聞かせ下さり掲載を許して頂きました加納さんに心からお礼を申し上げます。いつもありがとうございます!
なお、以下の文章の文責はすべて大原にあります。
また、もしよろしかったらお読みになった感想をお書き頂けるとたいへん嬉しく思います。
ご記帳所が設けてありますので、感想などを一言書き残していって下さいませ。よろしくお願いいたします。
『南北オペラ』……花組芝居創立15周年記念公演に相応しい、スゴイ作品になってしまいましたね。
(笑)すごくなるだろうとは思ってたんですけど、予想以上のことになってしまって。スタッフワークは超ハードワークでした。
では、まず題材となった『金幣猿嶋郡』のことからお聞きします。『金幣〜』を取り上げようと思ったのは何故でしょうか?
21世紀には鶴屋南北の作品を一つちゃんと取り上げようと元々思っていたんです。最初に『南北オペラ』という題名が先に決まって、それから題材をどうしようかなと考えたんですね。前世紀に『いろは四谷怪談』をやっていて、あれはいわゆる等身大の人間同士の話で「天下をどうこうしよう」という話ではなかったので、違う系統のものがいいなと思いました。加納幸和事務所の一番最初の作品で『敷布を捲って虹色世界』で『金幣〜』を取り上げていて、南北の両極端の部分である顔見世狂言というのがちょうどいいんじゃないかなと思ったんです。以前取り上げたときはエノケンの浅草オペレッタみたいな形にしたんですが、今回はもう一歩踏み込んで60年代ポップス風に似せたオリジナル曲のミュージカルにしようと思ったんですね。
チラシから音楽や衣装、装置も1960年代ふうで統一されていますが、60年代にしようと思ったのは?
60年代というのは安保闘争や反体制で国家に対して戦ってましたが、最近はNGOが主張をして、世界会議の決定事項に影響を及ぼすことになってきて、(60年代から)40年たって国というより世界に対して民衆の団体がそういう動きをしているっていうのは面白いなと思ったということ。そして、60年代のファッションをアレンジしたものがここ数年はやってますし、音楽も最近は60年代の曲をカバーして若い人がどんどん歌ってるのがまた面白いなと思いまして、「それでじゃあ60年代にしちゃおう」と。
『金幣〜』が顔見世狂言の習いでもって初演以来再演をされずに埋もれていたのを昭和39年に取り上げられました。それは、『金幣〜』でクーデターに失敗した人達が現れてきてもう1回クーデターを起こそうとしている話がちょうど安保闘争で反体制の人々がクーデターを起こそうとしている世の中の動きと呼応しているということで武智鉄二さんが復活させたんです。今は特に反体制だといってゲバ棒を持って大騒ぎするということはないんですけれども、紳士的に振舞いながら体制に対して主張したり圧力を掛けてるという状況を見たりすると「現代は60年代にはちょっと構造上類似してるな」と思って、「全部60年代に持っていこう」ということになったんです。
『オペラ』というタイトル通り音楽の多い作品でしたが、今回の作曲・音楽はを星出尚志さんでしたね。
世代がちょうど同じだということと、ミュージカルにしようと思ったのでそれに慣れてらっしゃる方がいいかなと。心地良いミュージカル作品にしたかったんですよ。80年代以降はリズムの時代になってますが、60年代は基本的にメロディの時代で、本当にきれいなメロディをたくさんの方が書いてらっしゃるんです。それでずっと劇団岸野組で座付きで作曲をやってらっしゃってミュージカルに慣れてらっしゃる星出さんにお願いしました。星出さんがクラシック畑出身なものですから、題にある「オペラ」を視野に入れて作曲してもらえるかなとも思いましたね。でも、大変でしたね(笑)。25、6曲あって曲目数が岸野組さんでやってらっしゃるときの倍以上あったとっていいますから。
衣装も一点一点がインパクトのある衣装でしたね。
60年代のヒッピーやフラワーチルドレンのサイケな感じのファッションにプラスして、今年の秋冬用のオートクチュールのパリコレクションが60年代をベースにしてそれをもう一つ飛び跳ねてるものが多かったのに刺激されてああいう衣装になったんです。
あれだけのお衣装だと、作ってる方は大変だなと思いました(笑)。
(笑)そうですね。今回は60年代のものをもう1つアレンジしたものだったんで、衣装も小道具も借り物じゃすまなかったんですよ。それが大変でした。何から何まで作らなきゃならない。鬘も全部新しいデザインでやってもらったので、何枚もゼロから作りました。いつもお願いしている太陽かつらさんで作っていただいたんですが、鬘というのは本来は崩して結い直してまた別のものに使うという前提で作られているものですからね。今回のは他には転用できない鬘なので、無理を言って作ってもらいました。
贅沢なことですよね。装置も大変面白かったですね。
サイケデリックというのはデザインが花開いた時期でもあったのでそれを舞台でも使いたいなと思って、装置はとにかく絵画的な装置にしようということにしたんです。丸や曲線を使ったデザインで、装飾的な字を書くというのが当時流行ったものだから、装置にも名前や字を入れてしまいました。
びっくり箱のような装置でしたものね。
僕が考えていたのは絵画的な平面構造のものしか思いつかなかったんですけど、(美術の)川口夏江さんが「斜めにして立体でポンポン出したらどうですか」といわれて、「それでいきましょう」と一発で決まりました。どこにでも好きなところに穴をあけてポスターを出したり人間が引っ込んだりできるんです。構造は単純なんですが、木製だと強度が足りないので鉄骨でできているから、その点でも値が上がってしまいました(笑)。
そうして出来上がった舞台ですが、長年花組芝居を観ている者としては、(旗揚げ公演である)『ザ・隅田川』のときに受けた印象もを思い出して非常に懐かしいような感じを受けました。花組芝居らしい芝居だったなと思います。
劇団の最初のころは戯曲から飛び出していこうという作り方をしてましたけれども、最近は泉鏡花物のようにテキストを大事にしてあくまでも戯曲の中へ入っていこうとしているものが多かったんです。その点で言えば、初期の頃のように「戯曲はたんなる踏み台でしかなくて、そこからどんどん膨らましていこう」という作り方を徹頭徹尾やったのは久しぶりかもしれないですね。
『金幣〜』も顔見世狂言だったのですが、『南北オペラ』も顔見世的な作りの舞台だったように思います。
そうですね。さすがに顔見世狂言というのはうまく書いてあると思います。「顔見世」、つまり、顔を見せるようになってるんですね。
劇団創立のころからいらっしゃる方たちとその後に入った方たち、そしてもっと新しい方たちとそれぞれに見せ場があって、非常に役者が立ってる舞台だと感じました。
戯曲から離れて膨らまそうというと、演出の知恵とかアイディアというのも必要なんですが、要は役者の肉体ですからね。役者の発想や個々の身体をはっきり見せるということに比重が置かれますね。
旗揚げのころからいらっしゃった水下さんや原川さん、溝口さん、2作目からいらっしゃる山下さんは、役者を見せるということの面白さを存分に出していましたよね。こういうのは他の芝居では見られないと思うんです。
そうですね、「キャラクターに頼って」というのは(笑)。
やはり中でも見事と思わされたのは加納さんの滝夜叉姫で、特に二幕目で滝夜叉が出てきたところで急に舞台に光りが当たったような感じがしたんですが。
(笑)どうでしょうね、おじさんたちが出てきますからね(笑)。『金幣〜』初演のときも瀬川菊之丞という真女形に将門を兼ねさせて、立ち役の動きや台詞を言うというのが趣向だったみたいですね。昭和51年5月歌舞伎座で(中村)歌右衛門がやったときにも「真女形の歌右衛門が将門を兼ねてやる」というのが面白かったみたいです。
加納さんが滝夜叉姫を演じる上で歌右衛門さんを意識なさったりすることはありましたか?
演技的には全然意識してませんけれども、「歌右衛門がやったんなら僕もやってもいいかな」という感じではありましたね。(中村)雀右衛門さんが(市川)猿之助さんのところで2回やってらっしゃるので、(この役を演じた)回数としては雀右衛門さんのほうが多いのですけれどもね。でも元来この作品の上演回数というのは初演と、武智さんが歌舞伎でやった2回と、武智さんがアンダーグラウンドの現場でやった1回、猿之助さんが2回、安珍のところだけを猿之助さんが取り上げたものとで、合計しても7回か8回しかないんですよね。
それだけ上演が難しい作品だったんでしょうか?
やっかいな本ですしね。顔見世狂言としては形式や構成がお決まりの約束事をやってないんです。顔見世狂言というのは世話場が入らないといけないんだけど、世話場がなくてすぐ大切りの所作事に飛んじゃってますので、顔見世狂言の典型から考えると学術的な点でもちょっと異例づくしの演目ではあるんですよ。だから国立劇場で顔見世狂言を何本か復活上演していますが、その中には入らなかったということなんでしょうね。
特異なところがなかなか取り上げにくかったと?
そうですね。
加納さんの滝夜叉が「おのれ秀郷」の歌の中で一瞬にして滝夜叉と将門になるところに驚かされたんですが。
どうでしょうね。あれくらいのことは、男と女が一緒になってない一つの女の役の中でもしょっちゅうやってますからねぇ(笑)。あれよりは、歌が連続するのが大変で、久しぶりに息が上がりました。歌は呼吸を頑張ってやらないと無理なもので、それに台詞が入って歌が入ってというんで、出番は少ないんですけどいつもよりたくさん汗をかいておりました。でも歌を歌うということは全身運動で、非常に身体を使ってるんですね。声を出しながら動くというのは案外大変なもので、ミュージカルをやってらっしゃる方ってすごいなあと思いました(笑)。
この滝夜叉姫は加納さんしかできない役ではないかと思いますね。そして、一幕には桂さん、植本さん、八代さん、大井さん、北沢さんで場面を作ってらっしゃいましたね。
配役は少し悩んだんですけど、落ち着くべきところに落ち着いたのかなという感じはありますね。一番新しい座員の松原、秋葉、各務のそれぞれのキャラクターがきっちり明確になってきましたので、ちょうどいい形なんではないかなと思いますね。
秋葉さんも非常にいいキャラクターですね。「場面が変わるわよ〜」と出てくるところでも、一瞬で明確にインパクトを与えていましたし。
うちの芝居でもそうなんですけどMANDALA(『弾丸列車』)という場所で彼自身いろんなことに挑戦する機会を与えてもらったのでそれで面白くなったんじゃないでしょうかね。最初は彼も新劇の養成所を卒業してうちにに来ましたものですから、どういう方向に持っていこうかというのが分からなかったんです。でも、次第にMANDALAで女の子をやったり変なお医者さんの役をやったり、帝国劇場で森光子さんのミュージカルに出させて頂いて(『ビギン・ザ・ビギン』)踊れない中で必死にやってるのを振り付け師に誉められたりして、彼自身も居所がはっきりしてきたんだと思いますね。彼はここ2年くらいで化けた感じですね。
松原さんも着実に「松原さんらしさ」というものを身に付けてらっしゃる感じがします。
相変わらずへたくそですけれども。自分が持っている、他の人が真似ができない「らしさ」を早めに出すほうが勝ちだと思ってるものですから、松原が劇団の中で「こういうキャラクターである」とか「こういうポジショニングである」ということをうまく舞台にも演技として出るようになってきたようですね。
話は変わりますが、松原さんの人三化七郎がカマキリの格好をしているのは何故ですか?
単純に、手下7人にそれぞれ武器を持たせようというのでいろいろ持たせたんですけど、だんだんネタがなくなっちゃって、「昆虫みたいな顔してるし体が細いからカマキリね」となっただけなんですよ。
深い理由はなかったんですね(笑)。各務さんの田原藤太秀郷は初日には正直言って、ああいうふうにキャラクターを押し出すものには慣れてないかなという気がしたんですが、日を追うごとにその面白さが出るようになってきた気がします。
そうですね。元来ああいう変なヤツなんですけど、あんまり舞台ではやる機会がなかったみたいなんで。俳優っていうのは舞台でぶっちゃけないと面白くない。まあ年がら年中ぶっちゃけてても飽きちゃうんですけど、いわば切羽詰る状態、ニッチもサッチもいかなくなって「てやんでぇ、ばかやろう」と自分に対して思い切ってしまうところが俳優にはどうしても必要なんですね。ああいう状況を作れたというのが機会としてはよかったですね。
『南北オペラ』は作品的なイメージとしては「レボリューションを起こしますよ」というところで終っていますが、これは花組芝居の行く末と掛けていたりするんですか?
どうでしょうねぇ。何もレボリューションということではないんですけど、「安定しないよ」というのはちょっと言いたかったことではありますね。ある方向に固まって一つに収束されていこうとするのはいやなんで、「これだけはじけるよ」「これだけ遊んじゃうよ」というのは見せたかったです。
初日に木原実さんにちょっとお会いしたときに「こんな芝居は他では見られない、どこのにも似ていない」とおっしゃってましたが。
(笑)そうですね。15周年でこんな芝居作るのもね(笑)。
お客様の反応はいかがでしたか?
大方はいいですね。でも、「いいかげんにしろ」みたいな極端な意見があったのは久しぶりでした(笑)。それだけ強烈だったんでしょうね(笑)。劇団最初のほうはそういう「大否定」みたいなのがあったんですけどね。
確かに旗揚げのころは、「こんな舞台見たことない」って人ばかりだったんですものね。さて、この後の花組芝居の公演は来年の一月に今市子さんのマンガを原作とした『百鬼夜行抄』。わかぎえふさんが脚本を担当なさるそうですね。面白い企画ですね。
ひょんなことからこういう企画になったんですけれども、僕らがここのところやっているいろんな種類の演目をいくつかコラージュして組み立てられて面白いんじゃないかな、と思います。僕のイメージでは『百鬼夜行抄』ってサザエさん(笑)。
サザエさん!?(笑)
サザエさんのお話なんだけどお化けが出てくるという(笑)。非常に個性的なキャラクターの家族の話でお化けが見える連中が多いものだから、お化けがゲストみたいに出てくるんですよね。なんだかね、「お化けが出て来るサザエさん」みたいなイメージなんです(笑)。
(笑)それは面白そうですねぇ。脚本をわかぎゑふさんに起用したのは?
わかぎさんは実は漫画家になろうとしてアシスタントをしてらした時期もあるそうです。それに歌舞伎が大好きで僕なんかよりも数多く見てるかもしれないという方で、うちの芝居もご覧になっている。この企画にはぴったりな方だったんですよね。『かぶき座の怪人』のときは福島(三郎)さんが歌舞伎のことは分からないので僕と共同脚本ということにしましたが、今回は歌舞伎を知ってらっしゃる方なので、わかぎさんに脚本はおまかせしようと思ってます。
ちょっと気が早いですが、来年が楽しみです! 花組芝居のレボリューションをこれからも期待しています。どうもありがとうございました。
長いインタビューを最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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