加納幸和さんに聞く『花組をどり』

「花組をどり97」博品館公演中の5月23日、突発的にですが加納幸和さんにお話を伺うことができました。加納さんのご好意により話の内容をこのホームページの方に掲載してもよい、とおっしゃっていただきました。どうもありがとうございます>加納さん。

テープを回したわけでなく私の記憶に頼って書いていますので、ニュアンスの相違等あるかもしれませんが、そのあたりはお含みの上お読み下さい。
(文中「 」でくくった太字の部分は、加納さんがおっしゃった内容の大意、( )でくくったグレーの字の部分は、私=大原の書いている部分です)

それではどうぞ。



★「花組をどり97」のきっかけ

「一番初めのきっかけは、利賀フェスティバルで公演するようになったことですね。今年で利賀フェスに出るのは3年目なんですが、利賀では大がかりな装置も組めないということで考えて、1年目は『ひばり』と美空ひばりの人生を重ね合わせた『聖ひばり御殿』を紋付き袴姿で上演しました。
(東京では、普通に衣装・メイクをつけての公演でした) これが結構面白かったんで、2年目にやはり紋付き袴の『素』で演じる『素ネオかぶき』という『ザ・隅田川 再演ニ非ズ』を上演したんです。」

「利賀フェスでモダンダンスの公演を見てそれがすごく良くって『こういうのがやってみたいな〜』と思ったのと、『ホントに面白いのは役者の肉体そのものじゃないか』という思いが強くなって、今回の『花組をどり』を作りました」


★衣装とメイク


「初めは他の衣装も考えたんですが、袖があったりすると踊るときに動きに制約が出るので、『袖もなくて動きやすい』『黒くてシンプル』ということで黒衣の衣装にしました。あの衣装でいると、面布

(顔の前を覆う布、黒衣として舞台に出てるときはその布で顔を覆う)をつけると黒衣の役割もできますから、出演者が出番が終わると突然黒衣になったり…ということもできて便利でした(笑)。前2回はそれでも多少はメイクしてたんですが、今回は全くの素顔で出てます」


★振り付けは?


「振り付けは僕と誓と山下が。棒を持った立ち回りのところは山下です。僕が振り付けすると、他の役者は抵抗なく踊れるのに、誓とか山下は『何だか踊りにくい〜』ってなることもあるみたいですよ、玄人舞踊の基礎が入ってるから逆に『そういう身体の動きは普通しない』というようになってしまうらしいです」


★全体の構成


「場面毎にそれぞれ作っていったんで、後で『これどうやって並べよう〜』と思ったんですけど(笑)。通してやってみて、それで『これはやっぱりこれの後』というふうに構成を考えていって、また通して…ということで、今の形になるまでに3度くらい構成し直しました。その過程で、音楽も出来て振りも殆ど出来てた場面がどうしても構成の中に入らなくなって、やらなくなったものも一つありました。

実際稽古していく段階で、初めは自分も踊ってたんですが、そうすると踊りが踊れると『ああ、踊れた』と思って安堵してしまって、全体を見る目がなくなってしまいそうになっちゃったんで、それで極力自分は出ないような構成にしました。だから、皆が出る場面の間で僕しか出る人がいないとか、元々は『のぞきからくり』で二人で歌うことが決まりになってる『八百屋お七』の歌の場面とかに出てます」


★冒頭の白い布は?


「白い布が役者を囲んでる…っていう図は、日本のお祭りでご神体を移動するときに神官が白い布でご神体を隠して運ぶ、というのがイメージにあります
(一種「神下ろし」みたいになっているのでしょうか?)ここの振りは民謡ですね」


★お面をつけた加納さんの踊り


「あれは三番叟ですね。手に鈴を持ってるんですが、日本舞踊だと手首を回しながら鈴を振るんです。でも神社に伝わる踊りや狂言を見ると、鈴を素直にまっすぐ振り下ろしてる。そういう素直な振り方の方がいいなと思って、僕はまっすぐ鈴を振ってます」


★佐藤誓さんのソロのダンス


「今回は(佐藤)誓と桂(憲一)と水下(きよし)が稽古途中まで外部出演してたんで、彼らが出る場面は後回しにして作っていってたんですが、この場面は全部誓が作りました。頭にライトをつけるっていうのも誓のアイディアです。こういう発想は僕にはないですね」


★新舞踊


「この次の踊りは新舞踊からなんですよ(笑)。前テレビで一度だけ見たことがあるんですが、NHKの教育テレビで演歌に合わせて振り付けして踊ってる。こういうのをNHKで毎週やってることがすごいなって(笑)。『くるっと回って…バスケット!』みたいな振りで。」

(あ〜、思い出してみるとバスケットのシュートみたいなポーズの振りがありましたねえ)


★蛇の目傘を持って、加納さんが「女」で踊る…


「これは地唄舞の武原はんの『雪』を解体して振り付けたんですが、実は、最初は僕抜きで、回りで踊ってる踊りだけだったんです。でもなんだかしっくり来なかったんで、解体した踊りを更にまた地唄舞に解体し直して僕が真ん中で踊ることにしました。僕は(曲と関係なく)自分のリズムで踊ってるから、日によって曲と踊ってるタイミングが違うんですね。回りの人の踊りは僕と同じ振りを曲のテンポに合わせて踊ってて、それもグループ毎に少しずつ時間差になるように踊ってる。で、家に帰ってからビデオを見ると『今日はこのグループの人と振りが合ってるぞ』と思って『面白いなー』って」


(「素」のままで女で踊る…という、今回の公演でも非常にインパクトの強いシーンでしたが、一番初めは加納さんが出てなかったとは、びっくりしました。余談ですが、加納さんは毎公演をビデオに撮って貰っていて、公演後、毎日家で見てらっしゃるそうです。役者であり演出家であるが故のご苦労なんでしょうか。でもさすがだな…と思いますね。)


★琉球処分の場面とアナウンス


「利賀のときには琉球処分についてのアナウンスを入れてなくて、横浜から入れました。『中途半端』というご意見も戴いたんですが、あれはあれでいいんです(笑)、中途半端でいい。あれがテーマじゃありませんから。踊りに没頭してるお客様にふっと頭を切り替えさせて、また、頭を切り替えて踊りに没頭して貰う…、そういう『異化効果』を狙っていれたものなんです。水下が引っ張ってるのは利賀では山だったんですが、東京では武器がいいね…ということで考えた結果、小さい手榴弾が大きくなっていたら面白いかも、ということで、手榴弾を引っ張っています。」


(ここ以外にも沖縄民謡っぽい曲がいくつかありましたが)

「特に指定はしなかったんですが、坂本さんが作って来てくれた中にあったんです。曲を貰って場面を作り始めて、調べていくうちに沖縄にこういう歴史があったことを知りました。だから意識はしてなかったんだけど、タイミング的には(沖縄問題と)合ってしまいましたね」


★太鼓の場面


「これは壬生地方に実際伝わってる田植えの踊りから取りました」


★打倒!近代演劇


「今は『打倒・近代演劇』という思いがかなり強くあるんです。芝居で一番面白いのは物語の内容とかじゃなくて、役者の肉体そのものだと思いますね。役者の身体の動きを重視しなくなったのは近代演劇の弊害じゃないでしょうか。

うちの役者に対してもよく、『気持ちはそうなってるのかもしれないけど、そうは見えないよ』という言い方をすることがある。例えば『はあ〜』とため息をつくことで哀愁が表現できることもあるし、そのため息をつくためには深く息を吸わないといけない。そういう身体の動きが大事なんですよ」


★次回公演「悪女クレオパトラ」のお話も少し……


「座内で『クレオパトラ』やってみたいねって話が出ていろいろ調べてみてたんですが、クレオパトラっていうのは本当は国を滅ぼした『悪女』なんですよね。これは近代演劇の良くないところなんですけど、北条政子にしても本当は悪女だったのに、今芝居にかかると『哀しい女』というふうに扱われてしまう。だから、今回は『悪女』としてのクレオパトラをきっちり描きたいですね。

アートディレクターに今回迎えた辻村ジュサブローさんは、脚本のかなり早い段階から、いろいろご意見を頂戴しようと思ってます。

辻村ジュサブローさんがお作りになった『烈女伝』というシリーズの人形の中に北条政子があるんです。それは今は個人所有になってて見られないものなんですが、手に静御前の胎児の血だらけの死体を持ってにったりしてる…っていうすごいものなんですよ。それが、イメージ的にはクレオパトラ像に結びつきますね」


「花組をどり97」へ
ホームページへ