和宮様御留(相当内容に触れてますので、これから観劇される方はその旨ご了承の上、お読み下さい)(観劇日)2004年10月17日(シアターアプル) 有吉佐和子さん(没後20年だそう)の人気小説の舞台化。「国」というものを掲げて身勝手な男たちによる大義名分・政治に振り回される女たち……なんていう浅い予想見解を吹き飛ばしてくれるような骨太な人間ドラマが展開されている。 フキ(植本潤)は大きな動きの中で翻弄され和宮様の替え玉にされ、やがては気が狂う。けれど、他の女たちはやはり運命に翻弄されているように見える宇多江(大井靖彦)も愛のために自分の役目を果たそうとする力強さがあるし、宮中の女性たちの諍いも、そのしたたかさ、内に持つ強さ、そして愚かささえもが人間としてとても魅力的に映る。 単に「かわいそうなフキの物語」とせず、その時代に生きる人々の内面のドラマを重層的に描いてみせたところが作・演出の加納さんの面目躍如たるところだろう。 ある意味、話の仕掛けが最後に至って全てほどけていくという点ではサスペンスでもあって、2時間半があっという間に感じられた。 華麗な衣装も素晴らしいが、特に舞台装置が印象的。障子を模した形でそれを場によって複雑に移動させることによって、迷宮のような宮中を連想させていた。(動かしている皆さんは大変そうですが) 様々な人間模様の中でも、やはり観行院の加納さんの大きさは圧倒的。そして乳人藤役の山下さんがリアル雛人形のような美しさ(^^)で、和宮に一途に慈しみ仕える様を丁寧に演じて(古い表現ですが)「いい仕事してますね」という感じだった。偽和宮に使える少進役の北沢さんも、珍しい役どころだけれど、その控え目な優しさ(最後は優しくないか…)がたおやかで印象的。 「和宮様御留」といえば宮中の物語→女たちの話、と思いがちだし、実際女性の登場人物が多い. でも、その中で前半の観行院兄の橋本実麗(桂憲一)と、後半の土井重五郎(橘義)の二人の男性がきっちり際立っていて、この作品のドラマにより厚みを加えている。 実麗の桂さんは、劇中若狭守(水下きよし)が言うところの「何百年も前の先祖と同じような顔をして、宮中で先祖と同じ場所に座っている」ような人物で、その優柔不断な板ばさみキャラがなんとなく微笑ましい。この実麗の存在があるから、逆に女性たちの世界がくっきりと見えてくるのだと思う。 一方、土井重五郎の橘さんは、大義のために自分の最愛の女性・宇多江を犠牲にしなければならない人。よーく台詞を聞くとひどい男(笑)なのだけれど、でもそれが「こういう時代だから仕方ないよね、可哀想…」と思わせられるのは、その前に重五郎の愛情の深さがきちんと表現できているからで、本当に「お涼しい」男性でした。 まさに花組でなければできない芝居です。 そして、本当に花組にぴったりなこの題材を取り上げようと思われたのも「将、良く己を知る」というものなのだな、と改めて感心しました。 今回書き切れないくらいの人間ドラマが展開されているのだけれど、それはまた次回。 「加納幸和さんに聞く『和宮様御留』」をご覧になりたい方はこちらへ 『和宮様御留』稽古場レポートをご覧になりたい方はこちらへ |