怪奇誕身毒丸



日組バージョン


(観劇日) 1991年8月13日(日組)・16日(日組)

ううう、やっぱりこれはすごい。花組はこうでなくっちゃあ、と思わせる作品だ。

はじめはお葬式風景。シヴァ神の死によって次代の輪転聖王にカーリーの実子インドラが選ばれる。インドラの兄シッダルタは、人間の血を引く半神半人のため、輪転聖王にはなれないというのだ。しかし、インドラは病のため面相崩れ、実母カーリーに求婚されるという異常事態に、嫁ヤマと共に天上界を脱出する。二人を追うカーリー、そしてそれを追うシッダルタ。彼らはカーリーの両親、ブラフマー、サラバスティのうちで鉢合わせる・・・。

6月に新橋演舞場で上演された歌舞伎の「摂州合邦辻」の「合邦庵室の場」の展開にほとんど従って話は進むのだが、ところどころに回想シーンが入っているので歌舞伎よりはずっと話がつかみやすい。歌舞伎では玉手御前の最初の登場シーンにあたる、両親の家のところに下手から現れるカーリーは美しい。そこから先はまさに加納さんの独壇場というかんじで圧倒されてしまう。歌舞伎的な美しさと、花組のもっている毒とがうまくかみあっていて、これは花組の代表作の一つだろう。

加納さんと広田さん(ブラフマー)、木原さん(バケツ親父・竜王ナーガ)以外のキャストはトリプルになっていて、私がまず2回見たのは日組。(ということは、あと月組と星組の2回見るということなんだけどね。)中ではシッダルタの原川さんとヤマの植本さんがよい。原川さんは異常に迫力があるし、悪がかったところが似合う。ヤマとの密会のシーンの原川さんのギャグには受けまくってしまった。それとカーリーとの回想シーンで、「母さんはぼくの親じゃないから」「またそれを言う!」というところの最後の気迫が印象的だった。植本さんは久々に女形の大きい役だけれど、うまい。一番最後に本当に大きく見える。「夜叉が池」に引き続いて今回も小森谷さんがあまりいい役じゃなくてもったいないなあという気がする。

(91.8 FSTAGE)



月組バージョン

(観劇日)8月23日(月組)

怪誕身毒丸の大きなみどころの一つはトリプルキャストだ。義太夫という大きい枠をはめてあっても、役者によってこうも印象が変わるものかと、改めて驚かされる。まず、びっくりするのがサラバスティ(婆々)の溝口さんで、私が前回に見た中脇さんとは違って、義太夫と呼吸が合っている。ブラフマー(爺々)の広田さんともどもに導入部分から義太夫芝居に入らせてくれるのが、さすがと思った。

今回の月組でメインと私が予想していた、ヤマ(嫁女)の山下さんは期待どおり。私はこの人の女方が大好きなのだけれど、シッダルタとの密会の場面もいいし(しかし妙にすごいラブシーンだったので、思わず下を向いてしまった・・・)、カーリーの加納さんに対等に対抗できていて、大変盛り上がった。最後のところも山下さんのヤマなればこそ納得が行くという感じもあって、見事な出来だった。これを見ると、山下さんのカーリーで加納さんのヤマなんていうのも見てみたかった気がする。

桂さんのインドラ(実子)は今までの桂さんのやった役の中で一番よい出来だったのでは。オペラ座の怪人のギャグ(インドラが面相崩れを隠すために被っているお面がファントムの仮面に似ているところからきたギャグ)は非常に受けてしまった。水下さんのシッダルタ(継子)は、私の中で原川さんの印象があまりに強烈だったので、ちょっと物足りないように感じられた。だが、最後のカーリーが死ぬ直前のシーンはカーリーとシッダルタの思いが伝わってきて感動してしまったのだけれど。

もう一つ、佐藤誓さんの振り付けはとってもかっこいい! シッダルタが出てくるところの踊りとか見るたびにワクワクしてしまうもの。踊りの技術的には決してうまくはないんだけれど、うまく迫力で見せてくれているところがいい。

(91.8 FSTAGE)



星組バージョン


(観劇日)8月25日6時

いよいよ千秋楽である。シッダルタ(佐藤誓)、ヤマ(八代進一)、インドラ(大井靖彦)という3人の取り合わせだが、イメージ的にはシッダルタと誓さんは合っていると思ったのだが、実際に見ると大きいカーリー(加納幸和)とヤマに挟まれて、小さいのが気になってしまう。シッダルタとカーリーが恋愛感情をもっているように見えにくいことを考えて、誓さんはマザコン的な役作りにしたのだとは思うけれども。それに、ヤマも、シッダルタに恋している部分が見えなくて、ただ打算だけでついていっているように見える。大井さんは誓さんに「インドラは日にも月にもいるんだよ。」といびられて(?)いたのが、なんともおかしかった。
もちろんとても印象に残るところもあって、誓さんの半神半人の象徴である白い片手袋にすがってカーリーが死ぬところは、はっとさせられたのだった。

千秋楽ならではのギャグも飛び出して、竹本朝重先生と鶴澤津賀寿さんが上で笑いをこらえてるのが、おかしかった。

三組見て、一番バランスがよかったのは、シッダルタ=水下きよし、ヤマ=山下禎啓、インドラ=桂憲一の月組だったように思われる。でも、シッダルタ=原川浩明、ヤマ=植本潤のコンビも捨てがたいなあ。

(91.8 FSTAGE)



TOPICS
上記のとおり、日・月・星3組に分かれてのトリプルキャストの公演でした。


TV中継
1991年、WOWOWにて、福岡住吉神社能楽堂での公演を放送。(配役は日組変形バージョン)

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