花組控櫓興行 泉鏡花の草迷宮(観劇日)93年7月6日・10日マチネ・ソワレ 「花組控櫓興行」とは、普段とはちょっと趣の違う、実験的色彩を持った公演を、花組芝居の本公演とは別に演じていこうとするものだそうで、今回はその第1回公演。 という意図がどこまで観客に伝わったかはわからないが、正直言って初日に見たときは客席はとまどっているようだった。実際、初日に見たときは私も終盤の加納さんが出てくるあたりまではうまく話についていけなかったのだ。(それでも、幕が閉まり、柝の音と同時に明かりがついたときには、長い夢からはっとさめた瞬間のようで、不思議な気分を味わえたのだが) さて、何日かあけてもう二度たて続けてみたときにはだいぶ印象が変わっていた。蚊帳がつられた舞台からにぶい銀色の襖がすかし見える。開幕前から聞こえる潮騒の音になんとなく懐かしさを感じていると、赤い着物に口紅を赤く塗ったあやしげなお婆さん(八代)が出て来て語り始める。そこからの不思議な妖怪譚。スイカや手鞠、月など丸いものをモチーフにしたイメージのつながりがおもしろく、頭の中で話がごちゃごちゃにほつれて絡み合っているけれど、そのわからなさがかえって妖怪譚にふさわしく感じるような、味わいのある舞台だった。 大井靖彦さんが、前回の少年役とはうって変わって子泣きじじい(?)のような風貌のおじいさんを演じて、予想外の渋さ。桂憲一さんは狂言回し的なお坊さん役で、観客を不思議世界への橋渡しをしてくれるような演技。加納幸和さんの妖怪の美女(?)の役に、母性を感じた。北沢洋さんの青年が化粧の地色がピンクっぽくて厚化粧ふうに見えてしまうのが気になったのと、母が歌った手鞠歌を探し求める青年という役には、もうちょっと繊細な雰囲気がほしいと思った。 (当時FSTAGEに、まねきねこさんによる「手鞠歌の続きを探す青年の、子供の記憶と母親への憧憬が、眼目と思います。台詞回しと、妖怪奇談に目が行く演出のため、持ち味が希薄になったようで、残念でした」というREVIEWがアップされたため、それに対して私がつけたコメントです) 私には「青年が母の面影を求めて手鞠歌を探す」のが眼目の話とは思われなかったので…。寺山さんの映画は見てないんですけど(青年と母のモチーフだけ借りて、原作から大分離れた映画になっていると聞きました)原作を読むと、手鞠歌のくだりも妖怪の話も「草迷宮」という迷宮世界に分け入っていくための並列的な一つの部分であるような気がします。その雰囲気は十分伝えた舞台だったと私は思います。 (93.7 FSTAGE) 今改めてビデオを見返すと、北沢さん痩せてる…(^^;。決して「繊細な雰囲気」がないってわけでないのです。当時の私は「いろは四谷怪談」の宅悦みたいな系統の役をやっている北沢さんの方が好きだったみたいですね。 (97.2) BMGビクターより1993年12月ビデオ発売。 「ビデオSHOW劇場」シリーズの第一弾として発売されましたが、このシリーズすぐ終わってしまいましたね(^^;)。 タイニィアリスでの公演の中継ではなく、公演終了後にスタジオに同じセットを組んで撮影したものだそうです(内容・演出はほぼ舞台と同じ)。 |