奥女中たち(1999年)



観劇日)99年6月24日…ザ・スズナリ I列から

初演のレビューにおおよその粗筋を入れてあるので、そちらもご参照下さい。また、結末にも触れてますので、ご注意下さい。

なんでこんなに切なくなるのだろう。こういうふうで胸が突かれる舞台とは思っていなかった……。

初演のときは、ちょうど写真集の取材でお稽古場にかなりお邪魔させて頂いて製作段階から見せて頂いていたせいで、個人的には思い入れも深い作品だったのだが、印象的には(初演のレビューにも書いたけれど)花組芝居の女方芸づくしというか、五周年記念作品らしい華やかさに気持ちが奪われていたところが大きかったらしい。
ラストシーンで岩藤の亡霊が再び出てきて、お辰と草履打ちの段の台詞を交わすところなど、この全ての物語を岩藤が動かしているような印象も受けていた。

今回は、同じラストシーン(かな、と思ったけれど、聞いたところではちょっと違っているみたい。ちなみに初演のときも公演前半と公演後半とはラストシーンが違ったのだが、今回は後半バージョンの方)のはずなのに、受ける印象が全然違う。

外枠には、「加賀見山再岩藤」の華やかな大奥(正確には「奥」というのだそう)の「物語」が描かれている。その華やかさに(客席も大受けだし(^^;ゞ)気持ちを奪われがちなのかもしれないが、実は「物語」の世界からはじき出された二人のお末(一番身分の低い召使い)姉妹がこの舞台の根幹にはあるのである。この対比が実に鮮やかだ。

お辰(水下きよし)とお勝(桂憲一)のお末の姉妹二人が、「尾上・お初ごっこ」を繰り返しながら、二代尾上(北沢洋)の身を羨み、あるいは憧れ、そして憎む前段から、はからずも尾上殺しに荷担することになり、それは結局は果たされずに終わる。お勝は尾上を殺すはずの毒で自害してしまうのだが、その姿に「ああ、自ら『物語』の世界に入っていってしまったんだ……」と思わされてしまう(決して生きたままでは「物語」の世界に入ることはできない)。

「一人にしないで……」と泣くお辰の言葉が胸に迫るが、多分、お辰はこの後も一人でずっと、物語を繰り返すこともできずにお末であり続けるんだろう。ラストに、岩藤の亡霊(加納幸和)がお勝を起こして連れていくが、そのさまはお勝は(岩藤と同様)「彼岸の人」(あの世の人)になってしまったんだな、と思わされ、さらに、先にあった「奥」の争いのとばっちり(?)で死んでしまった犬(秋葉陽司)の姿さえも「彼岸の犬」として登場することで、さらにお辰の悲しみは際だつ。

死ぬことでしか「物語」の世界に入れないお勝と、死ぬことすらできず「物語」の世界を眺めていくだけしかできなくなってしまったお辰。いわば、普通の人間の悲しさを明確に描き出し、切なさに胸が詰まる。

……一方、「物語」部分も爆笑の連続(^^;ゞのような鮮やかさだ。(こちらの楽しさを満喫している分、悲しさも際だってくるというか)「物語」編については、さらに次回の観劇のときのレビューに続く(……筈)。(99.6.26)



上の発言と重複する部分もありますが、某伝言板に書いた文章をそのまま引っ張ってきました。

自分としては7年前当時と感じ方が全然違ってるのに、とてもびっくりしてます。 今年の見え方は私のページのレビューに概ね書いたとおりですが、「奥」の部分 と辰勝の部分が両方きっちり際だっていてこその「奥女中たち」(ホントに「奥」・ 「女中たち」だ)なんだなぁ、と思います。

前回の後半のラストシーンでは岩藤の霊がすべてを動かしていたという話のように 見えたのね。当時は、やっぱり加納幸和率いる花組芝居、だったのかもしれない。 でも、今回は、岩藤がいて、奥の人たちがいて、お辰お勝がいる。それぞれが きっちり際だって、そしてそれが融合・一体化して一つの舞台になってる。 これが今の花組芝居なんだなぁ、と思うと、とても嬉しいし、加納さんが「この7年 はムダじゃなかった」と挨拶でおっしゃったというのもうなずけます。

なんだか幸せでした。(99.6.27)


(観劇日)6月29日・7月4日・6日・9日

なんと奥山役の山下禎啓さんが怪我のため降板…ということで、キャスト変更になってしまいました。今回初見の人と一緒に観る機会が2回あったのですが(ちなみに、お二人ともその道……どの道だ……のプロの方々)、二人ともが「奥山さん、上手いよね〜」と言っていまして、山下さんの女方としての確かな技術とその迫力あるたたずまいに感心していたのですよね。うーん、非常に残念。でも、ここは焦らずじっくり治してほしいと思います。お早い全快をお待ちしています。

ということで、現在は奥山=横道毅さん、(横道さんがやっていた)奥女中・豊後=「呼ばれて飛び出た」(舞台登場時の一言ヨリ)中脇樹人さんというキャストになっています。本来は『奥女中たち』に出演しなかったはずの中脇さんの、最初の出演回である9日を拝見していましたが、いくら7年前の初演に出ていたとはいえ、違う役でいきなりあそこまで演じられたのは大したものです。岩藤が皆の前に現れる場面で、各務さんと二人でぼーっと歩いてる感じが妙におかしかった(笑)。奥山の横道さんは、一緒に観た、また別の初見の友人曰く「一番女に見えたのが、奥山役の人。なんか、ああいう女の人っているよねーって感じ」と言っていました(結構意外な発言)。山下さんとは違ってアプローチで、奥山のしっかりした人柄をかちりと(横道さんて普段から、かっちりした芝居をする人という印象がある)見せています。山下さんがところどころで見せていた(手を広げるポーズとか)可愛らしさがあったら、もうちょっと役が膨らむのかしら、なんていうふうにも思いますが……。(99.7.11)

すみません、前回に書いた「物語」編の人たちについてまだ書いてませんが、それはまた次回更新分に続く……(と書きつつ続いていなくて申し訳ありません……)




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TV中継
1999年10月スカイ・パーフェクTV! Jドキュメント750チャンネルにて舞台中継。

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