要約は文に非ず


  中学三年生の時、娘が社会科の教科書を持って来て、ココゼンゼンワカンナイ、と言う。

 見ると議会の機能に関する章だ。一読すらすらと判る。どこもムツカシクない。どこがわからないの? ときくと、ゼーンブ、マルッキリ、という返事。

 仕方がないので行を追って話していった。院の構成、審議事項、総理大臣の選出…。

 「そんならよくわかる」と娘。と言ったって、書いてある通りにしゃべっただけだが…? 娘が去ってからもしばらく考えていた。

 突然気がついた。

 そうか! あれは要約なのだ。内容を既に知っている大人の知識を順序よく並べた整理ダンスだ。

 だが−−初めて文を読むとはなにか? 子どもが一つ一つのことばに出会ってゆくたびに、そこから新しい世界が立ち上がってくることではないか。

 教科書から要約を追放せよ。要約は文ではない。死んだものだ。

(竹内敏晴 春風倶楽部NO.7 2003 Spring, Summer(春風社)より)


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