賢い塾の選び方
3.塾の中身の見抜き方
塾選びの原則は、「外見よりも中身」。ビルの立派さや教室の内装の豪華さよりも、そこで教えている講師の指導力や面倒見の良さが重要である。儲け主義ではなく貢献主義で経営されている塾は、たとえ教室が粗末であっても、優秀な講師が集まっていることが多い。生徒の学力を向上させることに生き甲斐を感じている、そんな熱意が煮えたぎっているような講師は、貢献主義の塾でこそ、その指導手腕をのびのびと発揮できるからだ。
その1−−−チラシを分析する
チラシの豪華さ
チラシの豪華さは、塾の中身とは無関係。チェーン塾の場合は、本部でまとめてチラシを印刷するので、豪華な割に単価が安くなり、そのため生徒数が少ない教室であっても豪華なカラーチラシを配布できる(校名と地図の部分は追加印刷する)。
チラシ折込の頻度
何度も繰り返しチラシをまいているのは、たくさんチラシをまかないと生徒が集まらない塾。塾が広告宣伝費をかけすぎると、その分人件費を減らす(講師の質を落とす)か、授業料を値上げすることになる。中身のいい塾は、口コミで生徒が集まってくるので、チラシの回数は少ないのが普通。
指導方法の表現
長い間実績を積み上げてきた塾は、指導方法を確立している。指導方法に自信があると、チラシには控えめにしか書かない傾向がある。その反対に、「なんとかシステム」と銘打って、大々的に指導方法をアピールしている塾は、良く読むとどの塾でもやっていることを図で示しただけ、ということが多い。まったく指導方法を書いていないチラシは、とても自信があるので書くまでもない塾か、まったく自信がないのでとても書けないか、そのどちらかである。
授業料表示の有無
授業料を表示していない塾は、表示しない理由がある。サービスが同程度で授業料が高い塾(要するにコストパフォーマンスが悪い塾)は、授業料を明示すると反応が悪いので、チラシには授業料を掲載できない。「電話ではなく、直接お話をしないと、授業料は教えられない」などと言われたら、キャッチセールスもどきの塾。セールスのうまい説明員が待ちかまえていて高額のコースにしつこく勧誘されるので、絶対に行かないこと。
授業料の比較
分当たり単価で比較する。同じような授業システムならば、だいたい同じ水準のはず。1クラスの生徒数が多ければ多いほど、授業料は安くなる。質の高い講師を揃えている塾は人件費が高くなるので、授業料は相場よりやや高いことが多い(それでも生徒は集まる)。その逆は真ならずで、相場より授業料が高い塾=講師の質が高い、ではないので要注意。反対に、同じような授業システムで相場よりも授業料が安い塾は、人件費が低い=講師の質が高くない、ということが多い。また、授業料は安いが、諸経費が高い塾もある。そのため、候補となる塾をいくつか選んだら、授業料に諸経費を合算して、1年間でいくらになるかを比較するといい。
合格実績
合格実績は、過大評価してはいけない。大手の進学塾やチェーン塾の合格実績は、その人数の多さに驚かされるが、生徒が多ければ合格者が多くて当たり前。ひどい場合には提携している他の塾と合算して合格実績をアピールしていることもあるので要注意。ひとつの教室あたりでどのくらい合格しているのかは、なかなか分からない。そもそも、合格者数よりも合格率が問題なのだが、これは普通はチラシには書いてない。そのため、授業のレベルが合っているかどうかを知るために、通おうとしている教室から志望校と同レベルの学校への合格者が出ているかどうかを見る程度にとどめておいた方がいい。
合格者氏名/合格体験記
合格者数だけでは信憑性がいまいちなので、合格者の氏名や合格体験記をチラシに載せている塾が多い。しかし、大学合格者や高校合格者の名前や出身校がイニシャルや仮名では、まったく信用できないまた、教室数の多い大手塾・チェーン塾などの場合は、教室によって中身が全然違うことがあるので、出身校が書いていないとどこの教室からの合格なのか分からないので、参考にならない。
ただし小学合格者の場合は、名前や出身校がイニシャルや仮名でも仕方がない。以前から、小学受験の合格者の実名や出身校、写真などをチラシに掲載している塾はほとんどなかった。これは、犯罪者が学校帰りの子供を待ち伏せして名前を呼んで安心させて誘拐するといった事件が起きる可能性があるためだ。
中学合格者の場合も、名前や出身校や写真を公表しない塾が増えている。これは、昨今の個人プライバシーの保護の考え方が、塾業界にも少しずつ広がってきているためだ。中学生は小学生ほど誘拐はされにくいが、しかし写真と名前が公表されていると、ストーカーに狙われる可能性がゼロではない。また、「その塾に小学生が通っている」ということが分かること自体、普段は夜は出歩かない小学生が1人でいる場所を犯罪者に教えているようなものだ。セキュリティに気を配っている塾では、中学部合格者の名前や出身校や写真以前に、そもそも中学部合格者がいるかどうか、さらにはその塾に小学生が通っているかどうかも対外秘としているくらいだ。
その2−−−求人広告を調べる
求人広告の頻度
求人広告が多い塾は、講師の定着率が悪い。逆に、まったく求人広告を出していない塾の場合は、法人名で求人広告している塾もあるので要注意。見かけない名前の会社が頻繁に塾講師を募集していたら、応募者を装って電話で塾名を聞き出すといい。
求人広告の職種
教室長など重要な職務を求人している塾は、そのような重要な人材でさえ求人広告するほど不足しているということ。塾名でこのような求人広告を出すような間抜けな塾はない。必ず法人名になっている。頻繁ならば、塾名を聞き出しておいた方がいい。
その3−−−生徒に聞く
通っている生徒に聞く
その塾に通っている生徒がいるならば、どのような塾なのか聞くことができるので助かる。しかし、小学生や中学生に主観的なこと(楽しいか、講師は優秀か、授業は難しいか、など)を聞いても、回答者により大きく異なるので、あまり参考にならない。客観的なこと(チラシに書いてあることは本当か、どの学校の子が通っているか、1クラスは何人ぐらいか、兄弟で通っている子は何人ぐらいいるか、講師は遅刻しないか、など)ならば、ある程度参考になる。なお、一人だけでは偏った情報になる可能性があるので、なるべく複数の生徒から聞き出した方がいい。同じ学年で、同じ程度の学力の生徒が見つかればベスト。情報の精度が高い。
通っていない生徒に聞く
その塾に通っていない生徒からでも、ある程度は聞くことができる。参考になりそうなのは、クラスメイトでその塾に通っている子は何人くらいか、通っている子はどのように言っているか、など。
その4−−−下見する
塾までの距離
中身に大した差がないのなら、近くの塾の方がいい。家に近ければ、学校から一度家に帰って、最低限の荷物だけで塾に行ける。家でちゃんとした食事を取ってから塾に行くこともできる。塾通いのため、夕食をコンビニで済ませている子供たちを見ると、心が痛む。また、近くの塾なら評判が良く分かるので、塾選びに失敗しにくい。あまり良心的でないと思われる塾に、わざわざ電車に乗って通っている生徒たちを見ると、気の毒に思う。
教室の周辺環境
落ち着いて勉強に打ち込める環境であることが望ましい。駅前がいいとは限らない。にぎやか過ぎる繁華街の真ん中にある塾では、「帰りに道に寄り道するな」と言ってもあまり効果がない。近くにゲームセンターがあったりすると、かなり困る。父母には「塾に行って来る」と言いながら、塾をさぼってゲームセンターで遊んで、時間通りにまた家に帰る、という芸当は、やろうと思えば誰でもできる。良心的な塾ならば、無断欠席すると即刻父母に電話を入れるのでこの作戦はすぐにバレるが、そうでない塾だと、なかなかバレないかもしれない。
教室の建物
塾で自社ビルを持っているところは、ほとんどない。大半は家賃を払って借りている。その家賃は、駅に近いほど、設備(エレベーターなど)が充実しているほど、そして新しいほど高い。駅前の大型エレベーター付の真新しいビルに入っている塾は、他の塾よりも高い家賃を払っているので、授業料を高めにするか、人件費を削るか、どこかで家賃が高い分を捻出しなければならない。また、「信頼感を与えるために、1階に銀行が入っているビルにしか教室を開設しない」という塾もある。羊頭狗肉の典型だが、こんなことであっさりと塾を信用してしまう父母も、少なからずいるらしい。
生徒の登下校の様子
楽しそうか、マナーはきちんとしているか、早めに来ているか(行きたくなる塾なら生徒はあまり遅刻しない)などがチェックポイント。ただし、普段のマナーを教えるのは家庭の役目。塾に躾まで期待されては困る。
終業後の教室の様子
授業終了後すぐに無人となる塾は、生徒にとって居心地があまり良くないか、講師がサラリーマンしている塾。しばらく(場合によっては深夜まで)生徒や講師が居残る塾は、生徒にとって居心地が良いか、講師が教育に対して熱意を持っている塾。生徒の相談に答えたり、次の日の授業の準備をしたり、授業終了後も講師の仕事は山ほどある。
その5−−−説明を聞きに行く
受付票への書類の記入について
説明を聞く段階では、こちらの本名や連絡先は明かさない方がいい。「氏名や電話番号を書いてくれ、書いてくれないと手続き上、説明できない」と言う塾は、その後何度も勧誘の電話がかかってきて、とても煩わしい思いをする。そのような塾は、中身で勝負ではなく勧誘力で勝負の塾なので、説明を聞いても時間の無駄。さっさと帰った方がいい。
教育理念について
一生懸命教えてくれる良心的な塾ならば、必ずしっかりした教育理念を持っていて、講師全員にそれが徹底されている。その反面、金儲けのために経営されている塾の場合、教育理念をすらすら答えられないことが多い。チェーン塾の中には、本部が定めた教育理念をそのまま言うだけの塾があるが、その場合は、「この地域の特性はどのように考慮されているのでしょうか」と聞くといい。日頃からまじめに考えていないと、このような質問には、しどろもどろになる。
塾の特長について
自塾の良いところを説明してもらい、冷静に聞いていると、セールス力で生徒を集めている塾なのか、自然と生徒が集まってくる塾なのかが分かる。塾の中身に自信があればあるほど、塾の責任者は、飾る言葉は少なく、しかし分かりやすく簡潔に、相談といった雰囲気で丁寧に説明してくれる。その反対に、自分の塾がいかに優れているかを、時間の許す限り一方的に力説する塾もある。
塾の生徒について
どの学校のどの程度の学力の子が通っているか、は必須の質問項目だが、さらに一歩踏み込んで、長く通っている生徒や兄弟で通っている生徒はどのくらいいるかを聞くといい。良心的な塾はたいてい生徒の通塾歴が長く、また兄弟通塾が多い。
家庭との連絡体制について
塾には通っているけれど、どのようにやっているのか全然分からない、という塾もまれにある。通塾した場合、父母にはどのようなお知らせが来るのかを確認しておきたい。普通は、月に1回くらいはお知らせが郵送され、年に数回は父母面談または三者面談が行われるはず。また、生徒が無断欠席した場合にはどういう対応をするのかも、聞いておきたいポイント。面倒見のいい塾なら、その日のうちに必ず家庭に電話をする。
塾の歴史について
3年や5年はノウハウを蓄積しないと、その地域の特性を充分には把握できず、的確な進路指導ができない。また、あまり良心的でない塾は、短いと3年、長くても5年か7年で、姿を消していく。そのため、開業/開設して間もない塾は、よほど評判がいい塾を除いて、避けた方が無難。10年以上続いている塾なら、地域に根ざして良心的にやっている塾であると判断できる。歴史の長い塾は、すでに何人もの卒業生を出しており、実績を積み重ねてきているため、急に生徒が減少して塾を閉鎖、という事態には陥りにくい。
振替授業の条件について
振替授業は、講師の人件費や教室のやりくりなどの面で、塾の負担が小さくない。そのため、やむを得ない場合を除いて、振替授業はしたくないのが塾の本音。チラシや入校案内には「授業を休んだ場合は、無料で振替授業を行います」と書いてありながら、その条件がとても厳しかったり(1か月前に欠席を連絡した場合に限る、など)、できる日がかなり制限されていたり(毎月の第5週に限る、など)で、実質的に振替授業はほとんど受けられない、という塾もある。振替授業を受けるための条件は、必ず聞いておきたい。良心的な塾は、この条件が緩い(そのため良心的な塾はあまり儲からない、とも言える)。
授業料の納入回数について
半期全納や一年全納など、授業料をまとめて数ヶ月分を納入する方式の塾は、その大半が儲け主義の塾。気が変わって途中で退塾しても返金されない(まれに月割りで返金してくれる塾もある)し、万一その塾が経営不振で塾が倒産したら、ほとんど返ってこない(英会話スクールの倒産と同じようなことになる)。
授業料以外の諸費用について
塾に通うには、授業料のほかに、入校金や教材費、テスト費、設備費などが必要。これらの諸費用は、良心的な塾では、比較的シンプルになっている。あれやこれやといろいろな諸費用を設定している塾は、その大半が儲け主義の塾。授業料だけで比べれば一見高くないが、諸費用を合計すると他の塾と同じかそれ以上になる、という場合が多い。
講師について
入校した場合、どの先生が担当してくれるのか、またその先生はどのような身分(専任/準専任/学生バイト講師)なのかを聞くこと。さらに、指導経験の長さや、学歴、経歴、性格なども聞いておきたい。講師1人で担当できる生徒数には限りがあるため、名物講師は、進学塾ならエリートクラス専門、補習塾なら授業料の高い特別コース専門であることが多い。担当してくれないのなら、どんなに評判の良い名物講師がいても、何の役にも立たない。
その6−−−体験授業に参加する
体験授業の有無
授業の内容に自信があれば、無料体験授業を必ず行っているはず。やっていないならば、授業に自信がない塾か、徹底的に経費の削減に努めている儲け主義の塾。体験授業はあるが有料という塾は、たいてい儲け主義の塾。
体験授業の時期と講師
時期限定の体験授業は、看板講師による特別授業である可能性が高い。「定員に空きがあるクラスなら、いつでもOK」という塾は、どの授業を見られても大丈夫という自信がある。体験授業は、通塾することになったら実際に担当してくれる先生の授業を体験しないと、全然意味がない。
授業と講師の雰囲気
講師は一生懸命か、そして生徒は集中しているかを観察する。生徒と先生との相性の問題もある。いくら優秀な講師でも、「どうも好きになれない」と感じてしまうようだと、学習効果が上がりにくい。親しみを感じるか、好感を持てるかがポイント。
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