OCCI 様 (5/88) <稲刈り>
セミの声も、すっかり秋の虫の音に替わり、忙しく動き回っていたコンバインも、いつのまにか姿を消した。ひと足遅れて「小さな田んぼ」にも収穫の時がやってきた。
ほんの4ヶ月前、お手伝いのつもりで始めた「小さな田んぼ」。
「全てをおまかせ」と言われても、一度でもやった事のある人間、一度でも見た事のある人間、もしくはそういう環境の中で育った人間なら「全て」の意味が何を指すか分かるだろうが、毎日8時間作業して「全て」なのか?休日に2〜3時間やれば「全て」できるものなのか?
「機械が入らないから全て手作業」と聞いた時、正直言って「だまされた!」と思った。
「何でこんな事を・・・」とブツブツ言いながら、鍬1本で耕し、何日もかけて田んぼを均しながら苗を植え、途中で水は止められ、浮き草と藻でどんどん汚くなり、抜いても抜いても草が生えてきて・・・
でも悲惨な事ばかりでもなかった。ここには自然がいっぱいあった。
コガネムシ、コガネグモ、テントウムシ(なんとなく縁起の良さそうな名前)。
タニシは田主? イナゴは稲子? 蛙は畦にいる虫?(そんなわけない)ミミズにトンボにセミも鳴いてた。(ちなみに、セミは背中の方に目がついているから「背見」だそうだ。 へぇへぇへぇ・・・「20へぇ」位はとれるかな? 「背美」の説もあるが、これはカワセミやセミクジラの方が・・・)
野鳥の声もたくさん聞こえた。農薬を使っていたら、こんなに虫たちが生活できただろうか?
トンボやクモが稲の葉をムシャムシャかじるのだろうか?カエルが稲穂をバリバリ食べるのだろうか?
と、思い起こしながら今、この景色を見るとまさに「絶景」だ。一面、黄金(こがね)色に色づき、垂れ下がった稲穂たち。「たわわに」と言う形容詞はこの為にあるのでは?
「稔るほど、頭を垂れる・・・」と言うが、自分の重さで土下座までしてくれそうだ。
(お礼を言っているのか、今までやってきたいたずらを詫びているのか。)
今までの苦労が報われた。
苦労? って何をしただろう? 何もしていない。
苗を植えて、草を取っただけ。農薬も撒かなければ、肥料もやらなかった。
もちろん合鴨も放してないし、1匹1匹イナゴを捕まえたわけでもない。
以前、「お米が出きるまでには88も手間がかかる」って書いた。(1/88参照)
「1/88から書き初めて、2/88、3、4・・・88/88まで書いたら、今の仕事辞めて米作りに専念します」などと川島さんに冗談を言っていたが、5/88で稲刈りまで来てしまった。
この後、「乾燥」「脱穀」「籾摺り」「精米」まで書いたとしても、9/88で白米になってしまう。
(「米研ぎ」「炊飯」まで入れても11/88)
いかに手を抜いていたか。「苗さえ植えれば、米は出来る」を実際に試した「無謀なる挑戦」だったのか?
それとも、こっそり川島さんが残りの行程をやっていてくれたのか?
確かに、田植えの時には、もう苗が準備されてた。本来なら「種蒔き」から始めるのだろう。
何はともあれ、お米は出来た。
一粒でも出来れば、大喜びでその一粒を良く味わって食べただろうが、これだけあれば、ドンブリに山盛りにして食べられる。
スズメにもご馳走してあげよう。おなかいっぱい食べて行って良いからね。もう、よその田んぼにはお米無いからね。
君たちがいくら食べても、米泥棒のようにゴッソリ持って行きはしないだろうから。
(もっとも、追い払おうにも「私に良く似たカカシ」をずっと立てておくわけにも行かない)
農協の人が田んぼを見に来た。「収量調査をしている」との事だった。
「ここは、無防除ですか?」
「はい。農薬も、肥料も全然使ってません。」
「肥料使わないでも、こんなに出来るんですね。この辺は土地が良いから。どのくらい収穫できるんですか?」
と聞かれても・・・ こっちが知りたい。
「まぁ、自分の家で食べて、知り合いに配れば無くなっちゃうんじゃないですかね?」と適当に答えておいた。
「そうですか。」
と、納得して帰っていったが、何人家族で、何日食べられるのか?何ヶ月食べられるのか?何年か?
何人知り合いがいて、どのくらいづつ配るのか?
一瞬の思いつきにしては、良い答えだったかもしれない。
で、本当はどれくらいとれるのだろう?
だいたい、何株くらい植えたのだろう? 一株づつ数えるのは不可能に近い(植え方もいいかげんなので)
田んぼの広さが10m×30mとして、全体の約4分の1を30cm間隔で、4分の3を15cm間隔で植えたとして、(3/88参照)約5200株(かなり、いいかげん)
1株で茶碗1杯くらいって聞いたから、2杯で1合として、2600合=260升(1升ビン260本)=26斗(灯油を入れるポリタンク26本)=2.6石(加賀百万石はかなりすごい)
本当にそんなに取れるのだろうか?
「9月25日から30日くらいには、稲刈りできそうですけど、どんな刈り方します?」
「どんなって言われても、稲刈りなんてやったこと無いしぃ・・・ コンバイン入れないから、鎌ですよねぇ?」
「隣の畑、もう何も植わってないから、木を何本か切って通れるようにすれば入れますよ。 普通のやり方だと、コンバインで刈って、すぐに脱穀して、乾燥機に入れて乾燥させ、籾摺り機で籾殻を取って玄米にします。 でも、乾燥機に入れるには、かなりの量がないとだめで、だいたい1反(300坪)刈ったくらいは最低でも無いと。 他の米と混ぜたらもったいないしね。
乾燥機を使わないと、天気の良い日に脱穀した籾を、外で広げて天日干しにします。この方法だと広い場所が必要だし、出したりしまったりが結構大変です。
他のやり方だと、昔からの方法で、鎌で刈って、「はせ掛」と言って(おだ掛、あぜ掛とも言う)刈った稲を束ねて、柵に掛けて20日間くらい乾燥させます。これは雨が降っても大丈夫ですから。乾燥したら脱穀して、籾摺り。 脱穀機はうちには無いので、コンバインの脱穀の機能だけ使いましょう。 ここにズラっと稲を干したら、インパクト強いよね。
この他にも良い方法が無いか考えてみます。OCCIさんも探してみてください。」
ん〜〜〜っ・・・。 そうだ!古民具村に行ってみよう。
「古民具村」とは、東金と成東の境くらいの国道沿いにあって、昔の生活雑貨などを展示、販売しているお店だ。以前、訪れた時に足踏み式の脱穀機や古い農機具が置いてあった。何か手がかりがあるのでは?
残念ながら何も思い浮かばなかった。
インターネットで「稲刈り」と、検索してみた。
出た、出た! これでもかと言うほどヒットした。
中でも多かったのは、小学校や幼稚園の稲刈り体験。
鎌で稲刈りを体験して、コンバインで脱穀。大体はここでおしまい。(後は農家の方が籾を持ち帰って機械乾燥するのだろう。)
「自然農法」に取り組んでいるホームページがあった。ここは役に立ちそうだ。
稲の刈り方、刈った稲の束ね方、はせ掛けにする柵の作り方、束ねた稲の掛け方などが詳しく書いてある。
よし!これを参考にしよう。
稲刈り予定!
| 9月25日(木) |
準備 はせ掛けにする柵を作る。 余裕があったら少し刈り取る。 |
| 9月28日(日) |
メインの稲刈り 手伝いに来る人はここで来てもらう。 |
| 9月29日(月) |
残りの稲刈り 28日に残った分を刈り取る。 |
| 10月1日(水) |
予備日 |
9月25日
田んぼの奥の方の藪から竹を切り出して、はせ掛けにする柵を作る。
と言っても、どのくらいの高さで、長さはどれくらい必要だろう?
自然農法のホームページには「地面からの湿気の影響を受けないように、稲の先から20〜30cm空くようにする。」
としか書いていない。 稲の高さは私の腰くらいだが、穂が垂れ下がっているのを伸ばして、20〜30cm空けると私の肩か背丈くらいは必要だろうか?
柱にする竹の長さは? 田んぼに突き刺す分、上の方を組ませる分、そして斜めに立てるから、2mくらいは必要だろうか?
上に乗せて柵にする竿の長さはどれくらい必要だろう?
刈った稲はどのくらいの量になるのか? 藪に生えている竹の長さはどのくらいなのか?
竹は何本切り出せば良いのだろう? 分からない事だらけだ。
朝から小雨が降ったりやんだりのはっきりしない天気だ。
午後から家にあるノコギリとナタ、荷造り用のビニールひもを持って出かける。
「どんな感じで刈った稲を干します? 竿を2段3段と縦に高くしていって干す所もあるし、地方によっては竹をまっすぐに1本突き立てて傘を広げるようにして重ねていく所もあります。 普通は柵を作って引っ掛ければ良いだけですけど。」
「縦に高くしていくと、上の方に干すの大変ですよね。ハシゴ掛けないと。傘を広げるようにするのは難しそうだし。普通の方法でやります。
柵の高さは、かなり高くしないと下に着いちゃいますよね?一応、柱の長さは2mで、竿の両端は3本の柱で支えて、間に2本の柱を何ヶ所か立てようと思ってるんですけど。柵の長さは何mくらい必要ですか?」
「私も子供の頃に見たことがあるだけで、やった事は無いから・・・。 あんまり難しく考えないで。ただ、刈った稲が干せれば良いだけですから。 長さは長い分には問題無いし、短かったら足せば良い事だし。曲がっていても、高さがバラバラでも大丈夫ですから。」
「そうですね。とりあえずやってみます。 柵を作る所は先に刈っておいた方が良いですよね?」
「植わってない所に柱を立てて、後で刈れば良いです。 太い竹は刺さりにくいから、先の方を少し斜めに切っておくと刺さりやすくなります。」
「なるほど。」 「じゃ、頑張ってください。」
難しく考えないでって言っても・・・ あそこに生えている竹は何mくらいで、柱何本取れるんだろう?
ま、良っか。 とりあえず切って来てみよう。
まっすぐで、かなり長くて、丈夫そうな竹があった。 これは、上に乗せる竿にしよう。
竹は中が空っぽだからノコギリで簡単に切れる。 が、ここの藪は竹薮ではないので、他の木も生えている。木の枝を避けるように竹が生えているので、切った竹を引っ張り出すのが大変だ。
力まかせに引っ張って、竹をしならせて、やっとの思いで田んぼまで引っ張り出した。
田んぼの幅より少し長いから、10mちょっとかな?
ナタで枝を落として、あまり細い方は使えないから切り落とす。 10mの竹竿が1本完成!
10mだと、柱は5本作れる? でもこんなに長くて立派な竹ばかりでは無いから、1本の竹から柱3〜4本位かな?
両端の柱は、太い丈夫な所を3本づつ使って、真ん中に中間の太さの所を2本、その間に細い所2本づつ2ヶ所で支えよう。
柵の長さはとりあえず20mもあれば大丈夫かな? 上に乗せる竿をもう1本と、柱は全部で21本。
1本の竹で3〜4本2mの柱を作るから、あと、7〜8本の竹を切り出さないと。 たいへんだぁ〜!
次の竹を切り出す。枝を落として、2mの長さに切り、先を尖らせて、柱4本完成。
また、藪に入って行って竹を切る。枝を落として・・・。
あまり、奥の方の竹を切ると引っ張り出すのが大変なので、なるべく手近な所のを切るが、何本も切るうちに藪の奥のほうに入って行かなくては竹がなくなってくる。
まるで、木こりか竹取の翁だな。 田んぼの奥の方が日陰になっていて、苗を植えなかった所がちょうど良い作業場になった。
よし、竿2本と柱が21本できた。後は柱を組むだけだぞ。
竿を2本運んで柵を作る位置を決める。10mの竹を稲を踏まないように担いで持っていく。
次に柱。太い柱を3本づつ両端に立てる。 太い柱は、先を尖らせてあってもなかなか刺さらない。ナタの背を使って叩き込んでみるが、竹がボサボサになるだけで刺さらない。
とにかく、柱を組んでみよう。3本の竹を三脚のように開いて立て、ビニール紐で縛る。
田んぼに刺さっていなくても、これだけでも結構しっかりしている。
反対側の3本の柱も立て、竿を掛けて見る。
なるほど。こんな感じで柵ができるのか。しかし、まだ両端の柱だけでは竿がしなってしまい、安定しない。
ちょうど、竿の高さは私の肩くらいになるので、竿を肩に担いでしなりを戻し、間の柱を立てていく。
間の柱は、2本づつ3ヶ所。全部立てると、かなりしっかりした。
私がぶら下がっても大丈夫なくらいしっかりできた。もっとも、私の体重の何倍もの物を掛けるのだから、ぶら下がって壊れるようでは使い物にならない。
もう1本の竿も同じように、柱を組んで・・・
約20mのはせ掛け用の柵、完成!(疲れたぁ〜)
ここで流しそうめんやったら、おいしいだろうな?
今日は刈り取りはしないで、ここまでにしておこう。
あとは日曜日を待つだけ。 助っ人紹介!
- 「デブ・サップ」こと、マサアキ君とお母さん。
この2人は以前から「お手伝いしますよ」と言ってくれていた。
素性は秘密にしておきましょう。
ただ、お母さんは農家出身なので、稲刈りはやった事があるそうだ。
少しは期待できるかな??
- 島倉(仮名)さん
言わずと知れた、お隣さん。
いちども会ったことも無いのに、なぜか知り合いのような・・・。
Kさんは都合がつかず来られないそうです。(残念。)
人間の「思い込み」とは恐ろしい物ですね。
「島倉」の後には「千代子」って、自然に出てきません?
このホームページ見ている人の中にも、島倉(仮名)さんがスッゴイおばさんだと思っている人いるでしょ?
「そんな事、思ってるのはオマエだけだ!」って? 失礼しました。m(_^.
.^_)m ぺこ
- これぞ助っ人!
当日、飛び入り参加で、すごい「助っ人」が!!
それが誰であるかは、まだここでは明かせません。 お楽しみに。
9月28日 小さな田んぼの小さなオフ会
小学校の時、運動会の開会式で校長先生が毎年必ず言う言葉があった。
「皆さんの普段の行ないがよろしいから、今日は朝から良いお天気で・・・」
予定の日が雨で順延になった時でも、必ずこの言葉で始まった。
「普段の行ない」で、天気が左右できるのであれば、こんな良い事はないが・・・
しかし今日は、よほど皆さんの行ないがよろしかったらしく、朝から絶好の稲刈り日和だ。
残念な事は、今日は我が家の方の自治会の清掃の日でもあった。
1時間くらいやって、こっそり抜け出せば良いや、と思っていたが、我が家の隣の公園が集合場所になっているので、こっそり抜け出したつもりが、「OCCIさん、もう終わり?」
「ちょっと用事があるんで・・・」 ばれてしまった!
マサアキ君とお母さんは、「10時30分に大網着の外房線で来る」と言う事だったので、島倉(仮名)さんも同じ電車で来てもらう事にしていた。
始まるのがお昼近くになってしまうので、川島さん宅でお昼をいただいてから始める予定だ。
しかし、マサアキ君は待ちきれないらしく、1時間も早い電車で来ると連絡が入った。
だったら最初からそう言えばもっと早くから始められたのに。迎えに行くんだって、二度手間になってしまう。プンプン!
マサアキ君とお母さんには、我が家で休んでてもらって、島倉(仮名)さんを迎えに行く。
「目印に頭にタオルを巻いて、手に稲穂を持ってます。」とメールしておいた。
普通なら、とても変なおじさんに見えるだろうが、このへんではそれほど目立つ格好でもない。最初、鎌を持っていようと思ったが、駅前で鎌はまずいかなと、稲穂に替えたのだが、鎌の方が目立って良かったかも?(もっとも、我が家の周りには狩猟区域もあるので、銃猟が解禁になる時期には、鉄砲を担いで道を歩いている人もよく見かける。日曜日の朝などは、銃声で目が覚めるくらいだ。)
そろそろ約束の時間だ。 下り電車が駅に着き、次々と乗客が改札を出て来る。
どんな人だろう? あの人かな? こっちに向かって手を振っているけど・・・ 後ろで待ってた人だった。
ここは、ド田舎だから駅に着いても交通の便が悪く、車で迎えに来ている人が多い。
皆、迎えの人が見つかると、にこやかに手を振って改札を出てくる。
どの人だろう?周りの迎えの人もだいぶ減ってきたけど・・・ え!あの人?!
わっ!若い。(千代子さんとは大違い) 我が家には残念ながら子供はいないが、「私の娘」と言っても不思議じゃないくらいだ。
(「それは言い過ぎでしょう」と思われる方もいるかもしれませんが、事実、私の知り合いには、同じ年で孫のいる人もいます。)
「遠い所を、わざわざこんな田舎の方まで来てもらって、ありがとうございます。」
よーし!これで今日のメンバーは全員揃った。
成東へ向けて出発! 川島さん宅では、お昼を用意して待っていてくれた。
デブサップことマサアキ君は、大飯喰らいなので、オムスビ多めにお願いしておいた。
島倉(仮名)さんもお弁当を作ってきてくれた。
こんなにいっぱい食べきれるだろうか? 「いただきまーす!」
「おいしー!!」 ここの家のオムスビやお料理は本当においしい。
もちろん、奥さんの腕が良いのだろうけど、それだけではないのかも。
「お料理は、その食材が採れた所の水で作るのが、いちばんおいしい」って聞いた事がある。
お百姓さんて、絶対にグルメだと思う。本当においしいものを良く知っている。
形や大きさが整っていたり、色艶がきれいだったりする物よりも、見た目は悪くても本当においしい物を。
どの野菜をどういう風に調理すれば、いちばんおいしいか。
「これはまだ若いから、この料理に。」「これは出来すぎたから、これに。」
などと、自分で育てて作物の性格まで理解しているのかも。
それに、太陽の味付けもある。 よく晴れた日に、洗濯物や布団を干すと、いい匂いがする。
あれと同じように、たっぷり日の光を浴びた作物は「太陽の味付け」があるのでは?
でも、洗濯物や布団のいい匂いは、いつの間にか消えてしまう。
作物も、出荷してお店に並ぶまでには、太陽の味付けは無くなってしまうのだろう。
「おいしかったー。ごちそうさま。」って、まだだいぶ残ってるぞ!?
マサアキ君、今日はずいぶん小食だったようで。私がその分がんばって食べたけど、これ以上食べたら動けなくなってしまう。
ゴメンナサイ! 島倉(仮名)さんのお弁当には全く触れていなかった。
島倉(仮名)さんの方も、すっごくおいしかったですよ! (←取って付けたように・・・プンプン! :島倉(仮名)さん心の声でした)
さぁ!稲刈りガンバルぞー! オーっ!! 「4人だから、2人が刈って、1人が束ねる。もう1人がそれを運んで柵に掛けていく。
私が刈りますから、お母さんと島倉(仮名)さんが、刈るのと束ねるのを交代でやって下さい。マサアキ君は運んで柵に掛けて。
私は明日も仕事休みだから、今日中に終わらせようなんて思わないで、のんびり楽しみながらやりましょう。
テーブルといす(ビーチパラソルも)出しておくから、疲れる前に、適当な時に休みながらやりましょう。
くれぐれも、けがをしないように気をつけて作業してください。鎌、良く切れるから。」
私は、始める前に借りてきた木槌で、柵の柱をもう少ししっかり打ち込む。
わぁ! もう2人でどんどん刈ってる。 えーっ! 『OCCI』の部分は、最後まで残しておいて川島さんに刈ってもらおうと思ってたのにぃ。
『O』がもう刈られてるぅ! だれだー?!(って、前もって言っておかなかった方が悪いのか。)
ま、良っか。どこも同じだから。 一歩遅れて私も刈り始める。 ザクッ! ザクッ! ザクッ!
刈った稲は普通はワラで束ねるが、ビニールひもの方が縛りやすいので、40〜50pに切ったものを使う。
束ねた稲を柵に掛けるのは、マサアキ君の仕事だ。
大きな身体をユサユサ揺らしながら、稲の束を抱えて運び、掛けていく。
私もかなり大柄な方(デブとも言う)だが、マサアキ君と並ぶと普通に見える。(身長は180p以上、体重は100sを軽く越している。まさに「デブサップ」)
結構、稲刈りって楽しいもんだ。特に、みんなでワイワイ騒ぎながらやってるからかもしれないけど。
もし一人でやってたら、「コンバインでやれば、あっと言う間に終るだろうに」と、またブツブツ言いながらやってただろう。
天気も良いし、暑すぎず、寒くも無く。ここの田んぼは周りより一段低いから、風の通りが悪いが、それでも頭を上げると、心地よい風が顔に当たる。かなり風が強いのだろうか?
おっと! ビーチパラソルが飛ばされそうだ。たたんで来よう。ちょうど、木の陰で日陰になってるから必要ないだろう。(で、ついでにひと休み。)
だいぶ、調子に乗ってきた頃、川島さんの車が来た。川島さんの他にもう一人・・・
・・・お百姓さんだ! サンバイザーにエプロン、腕カバーをしてゴム手袋に長靴。
田んぼや畑でよく見かけるお百姓さんスタイルの・・・川島さんの奥さん。
「2〜3時間なら手伝えるみたいだから。私は帰りますけど。」と川島さん。
「鎌で稲刈りなんて久しぶりだからねぇ。日当、高いよ。」
「一応、『無報酬で』と、お願いしてあるんで。」
「うん。書いてあった。」川島さん。 と、言っている間に、鎌を手に取り早速田んぼへ。
全員、唖然。 「すごい!速い!!」 ものすごい速さで刈り取っていく。
我々の刈り方は、稲をつかんでザクッと切り、稲を置き、またつかんで刈って・・・と繰り返すが、いつ稲をつかんで、いつ刈った稲を置いているのか?ザッザッザッザッ・・・っと、リズミカルに刈る音が絶え間なく聞こえる。
鎌の刃全体を使って引き切るのではなく、鎌の先端だけで軽く叩き切っているようだ。
刈った稲がどんどん田んぼに並べられていく。
1人で刈って、3人が束ね、1人が掛ける。
束ねた稲が山積みになってくると、2人で束ねて、2人で掛ける。
私も、真似をして刈ってみるが、全然スピードが違う。
やっぱ、プロだね。でも、もしかして、川島さんはこれほど出来なかったりして?
合鴨米作る前はトマトを作ってたって言うから、こういう事は奥さんの方が上手(うわて)だったりして?
だから、帰っちゃったんだ。きっと。(バレたか・・・:川島さん心の声でした)

この田んぼに、こんなに沢山の人が入ったの初めてじゃないかな?
きっと、田んぼも喜んでいるだろうな? 今までは、一人でブツブツ言いながらやってたのに、最後にみんなでワイワイ楽しそうにやって・・・
今日のこの日を、どれだけ楽しみにしていた事か。
全くの素人が、初めて田んぼをやって、はたしてどこまで出来るものか?どこで挫折するのか?田んぼはどこまで耐えてくれるのか?
各地から「不作」と報道されるたびに、「これよりは、ましかな?」と、ニュースを見ていた。
「ビギナーズ・ラック」専門家にはそんな言葉は無くて、全て理由が有っての結果なのだろうが、私のような素人には、やはり、「運が良かった」としか思えない。
私の好きな言葉に「最初は誰でも初めてなんだ。」と言う言葉がある。別に有名な人が言った言葉でもなく、私が勝手に作った言葉だが。
「そんな事、やった事無いから私には出来ません。」とか「私よりずっと上手な人がいます。」と言うより「やってみたいです。」「やらせて下さい。」と言う気持ちが大切だと思う。
どんなに立派な政治家だって、初めて当選した時がある。
どんなに腕の良い外科医でも、初めて人間を切った時がある。
難しい問題を解く数学者も、最初は1+1から始めた。
何ヶ国語も話せる通訳も、最初はABCから始めた。
「初めて」何かをやらなければ、次には進めない。
最初から何でも出来る人なんていない。 なんだか、説教じみちゃいましたね。(やっぱ、田んぼは不思議な所だ)
稲はどんどん刈られていく。 まだ水も入れていなかった頃の、田んぼの地面が現れ、その面積がどんどん広がっていく。
今日まで、ずっと楽しみにしていた稲刈り。黄金色に実った稲を刈っていくのを、何度想像しただろう。
あれほど、楽しみにしていたのに・・・ 何か違う。
ここは、唯一私の癒しの場だった。 緑があり、水があり、鳥の声が聞こえ、虫たちがいた。
一つ一つ植えた苗が、来るたび毎に成長して、形を変えていった。
はだしで泥の中を歩き回り、短パンとTシャツから出た素肌で自然を感じ取り。
いやな事があった時も、ここに来ている時は忘れられた。
痛みさえも、忘れられた。 でも、もう終わりなんだ。
もうここへは来なくて良いんだ。 なぁーんて、感傷に浸っているうちにも、どんどん刈り取られ、刈った稲が田んぼに並べられ、束ねた稲が山積みになっていく。
「もう干す所なくなっちゃうよ。」 「本当だ、ちょっと竹切ってきて、すぐに柵作るから。」
藪の中に入って行き、竹を切って来る。 あまり長くなくて良いな。今日の分だけ間に合うくらいで。
どうせ、明日また作らなければ足りないだろうから。
柵作りは、もう手馴れたもんだ。 5mくらいのしっかりした竹があったので、これを竿にする。あと、柱の分を2〜3本。
柱を作っていると、川島さん再び登場。 そうか、奥さんに手伝ってもらえる時間も、ずいぶん過ぎていた。
「ずいぶん進みましたね。もう、あと4分の1くらいかな?」
「奥さんのおかげです。4人だけだったら、この半分も終らなかったんじゃないかな?」
「鎌2本持ってやれば、もっと速かったんじゃない?」
「そうかもね」と、奥さん。 「ハハハハハ!」全員。
「面白い話や、貴重な話も聞けて、楽しく出来ました。ありがとうございました。」
「お昼の残り持ってきたから、一休みして。」
「はーい。私は柵作っちゃうから、休んでて。ちょうど干すところも無くなっちゃったから。」
急いで柵を作る。 「あれぇ?もう、オムスビ無いの?」
「マサアキが全部食べちゃったよ。」と、お母さん。
やっぱり、大飯喰らいだ。
「今日はもう遅いから、刈ってある分だけ干して、終わりにしましょう。奥さん、本当にありがとうございました。助かりました。」
川島さんと奥さんが帰っていった。 「あと少し、頑張りましょう!」
継ぎ足した柵に、次々と掛けられていく。これでも足りないかな?
それよりも、ビニールひもが足りない? どうしよう。
束ねてない稲はあと少しだけなんだけど、このまま置いておいたら湿っちゃうだろうし。
家に帰れば、まだひもは有るんだけど。家まで取りに帰ったら、遅くなっちゃうし。
安売りの時に、3玉まとめて買っておいたのだが、家では古新聞を束ねるくらいにしか使わないから、1玉使い切るのに何年もかかる。それを、今日一日で1玉500m使い切ってしまった。
そうだ、ビニールひもなら川島さんの家にもあるだろう。借りて来よう。あと少しだけだから。
急いで借りに行く。 「終ったー! お疲れ様でした。あとは明日やれば終るだろうから。助かりました。ありがとう。」
川島さん宅に戻ると、奥さんがサツマイモを蒸かしてくれていた。
「帰りにでも、食べながら帰って。」 今日は、奥さんがいちばん働いてくれたのに。こんなところまで気を使っていただいて。
川島さんはすごい人だと思っていたが、奥さんはもっとすごい人だった。
ア! ゴメンナサイ。 もちろん、島倉(仮名)さんも、マサアキ君も、お母さんも良くやってくれました。
ありがとう、みんな。 (←またまた、取って付けたように。:3人の心の声でした。)
9月29日
昨日のにぎやかだった田んぼから、また今日は1人に逆戻り。
でも、昨日でほとんど刈っているから、今日1日がんばれば1人でも終わるだろう。
昨日継ぎ足した柵も、もうほとんど一杯になっていた。
今日も柵作りから始めないと。 10mくらいの竹を継ぎ足す。手馴れたもんだ。
全長約35m。とうとう、田んぼの長辺の端から端までの長ーい柵になってしまった。
刈るぞー! 奥さんのまねをして刈ってみる。 ザッ ザッ ザッ
やはり奥さんのように速く刈れない。 鎌も切れなくなってるんだな。鎌は3本あるから、いちばん良く切れるのを使おう。
今までやってきた作業は、田植えにしても、草取りにしても、単純作業だった。
田植えは苗を植えるだけ。草取りは草を抜くだけ。それぞれ、大変なのは大変だったが。
稲刈りは、刈る、束ねる、干すの3つの行程をやらなくてはならない。
なれた人は、腰に藁をぶら下げて、刈りながらどんどん束ねていくのだろうが、私には無理だ。
刈るだけ刈って、ある程度刈ったら束ねて、束ね終わったら運んで干す。
人手があれば同時に進んでいる行程も、1人では束ねる時には鎌を置かなくてはならない。
5人でやれば、1時間で終わる事が、1人でやると5時間かかる。
お手伝いしてもらえる事のありがたさが、身にしみて分かった。
でも、あと少しで終わるから。あと少し。あと少し。 なかなか「少し」が無くならない。
こんな時期なのに、まだツクツクボウシが鳴いている。これも、夏の異常気象の影響なのだろうか?
ツクツクボウシの声が「OCCI、OCCI」と応援してくれているようにも聞こえる。
あと少し。 だめだ! もうだいぶ日が傾いてきた。
あと、2〜3回往復すれば、刈り終わるだろうけど、1往復でもしたら干し終わるころには真っ暗になってしまう。
明日は当直だから、明後日の明けでやろう。
10月1日
こんなに広かったんだ。 「小さな田んぼ」が「大きな空き地」に変わり、その片隅にまだ刈り取っていない稲が植わっている。
これだけ刈ったら、本当に終わりなんだな。
そうそう。このへんに植えた時の事、良く覚えてる。
この田んぼは、正確な長方形ではなく、ひし形のようにちょっと曲がっている。(角が直角ではない)
長い方の畦に直角に植えると、短い方の畦に対して平行でなくなる。
短い方の畦に平行に植えるには、定規にする竹の棒を(長い畦に対して)斜めに置かなくてはならない。
どっちを基準に植えるべきか? なんて、どうでも良いような事を悩みながら植えていた所だ。
あの時は、線香花火みたいなのを指先でつまんで植えていたのに、ほんの4ヶ月でこんなに立派になって。
あと1往復すれば終わりだ。 このへんは、畦の草刈りをする時に、刈り払い機の刃で切っちゃうんじゃないかって気を付けながらやった所だ。
最後に、『OCCI』の『I』。 最後の1株。これで本当に最後だ。
ザクッ! 終ったー! 束ねて、掛けてみると、柵の長さもちょうど良かった。
35mの稲のカーテン。 線香花火だったのが、仕掛花火の滝のようだ。
まだ時間が早いので、いろんな角度から写真を撮ったり、触ってみたり、下をくぐってみたり、端から端まで歩ってみたり・・・。
あれ?なんの音だろう? 近くによると、かすかな音で「パチパチパチ」と聞こえる。
本当に小さな音なので、穂の方で音がしているのか、葉っぱの方なのか、茎からなのかも分からない。
おととい刈った方は、もう音はしていない。
すでに、もう乾燥していく音なのか? 逆さにつるしたから、穂先の方に水分が流れていく音なのか?
籾と籾がすれ合っている音なのか? 作業中には全く聞こえなかった。おとといも。その前も。
静かーにして、耳を近付けなければ聞こえない、かすかな音。
コンバインで刈っていたら、絶対に聞こえなかっただろう。
「良く出来ました」って、拍手してくれているのだろうか?
それとも、「オイシクタベテモラエルトイイネ」って、おコメ語でおしゃべりしているのかな?
6/88 乾燥、 7/88 脱穀 そして…
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