(6/88) <乾燥>
約20日間、柵に吊るしたまま乾燥させる。(この間は、特にやる事は無い)
「あとの作業は、コンバインで脱穀して、籾摺り機で籾殻を取り除けば、玄米になります。
これからは、機械を扱う作業なので、私がやるのを手伝ってもらうようになります。
どんな味のお米になるんだろうね?」 「きっと、おいしいですよ。」
うん。絶対おいしいに決まっている。 無農薬で、化学肥料も使っていない。ここまでは、おいしい合鴨米と同じだ。
それにプラスして、天日干し。(合鴨米は機械乾燥)
合鴨米よりもおいしいのでは? マイナスなのは、合鴨のフン(肥料)だ。やはり肥料が無いのは、発育や味に影響するのだろうか?
プラスが大きいか、マイナスが大きいか? ライバルは、「合鴨米」! (ド素人が、大きく出たものだ。)
(7/88) <脱穀>
「脱穀は、10月21日の午後からやりましょう。半日あれば、脱穀と籾摺り出来ますから。」と、メールが届いた。
21日は当直明けだが、本当に半日で終わるのだろうか?
あれだけの稲を、移動するだけでも大変だと思う。
機械を使えば、そんなに間単に籾摺りまで終わってしまうものなのだろうか?
当日。 「私はコンバインでゆっくり行きますから、先に着いたら、稲を隣の畑のほうへ移動しておいて下さい。」
稲をこっちまで運んできて、ここで脱穀するのかとも思ったが、やはり、タイヤの付いている方を動かした方が理に叶っている。
両腕で思いっきり抱えて運べば、いちどでかなり大量に運べる。
よし。川島さんが来るまでに全部移動しちゃおう。
半分くらい移動したところで、畑の奥の方からコンバインに乗って川島さん到着。(ここの畑って、どこから回って来るんだろう?)
2人でやって、あっという間に移動終了。 一通り、説明と注意事項を聞き、脱穀開始。
次から次へと、コンバインに稲を投げ入れるが、それでも機械が空回りしている時があるほど余裕だ。コンバインにしてみれば、こんなくらいは朝飯前なのだろう。(コンバインは朝飯食べないが。)
始めてから1時間もしないで、全部、脱穀してしまった。
さすが、最新の機械はちがう。 でも、以前にインターネットで「稲刈り」を検索した時に、おばあちゃんが昔の稲刈りを話したのを、載せているホームページがあった。
「今では、コンバインで稲刈りから脱穀まで同時にやってしまう。便利になったが、コンバインの中を見る機会があって、のぞいて見たが、中では昔ながらのドラム式の脱穀機が回っていた。」と、書いていた。
コンバインには、エアコンやラジオが付いていて、ステレオやテレビまで付けている人もいるって聞いた事があるが、肝心なところは昔からの技術が使われているんだ。
大きなビニールシートを広げて、コンバインの中にため込まれた籾を吹き出す。まるで、ゾウが鼻から水を吹き出しているようだ。(大きさも同じくらい?)
ザーッ! エッ? たったこれだけ? ビニールシートの真ん中に、ちょこっと小さな山が出来ただけ。
コンバインのエンジンは、もう止まってしまった。
「これだけですか。」 「これでも、袋に詰めれば結構ありますよ。」
箕を使って、米袋に詰める。この袋は玄米が30kg入るそうだ。
けっこう、簡単に1袋がいっぱいになってしまった。
1粒残らず袋に詰めたら、5袋弱になった。150kg弱?
「本当だ。袋に入れて積み上げると、ずいぶん獲れたって実感しますね。」
「でも、これから籾摺りをして、籾殻を取り除くと、米の種類にもよるけど、玄米は3分の2くらいになります。」
3分の2だと、100kg超えないかな? 「この後、うちの作業場で籾摺り機にかけますから、運んでおいて下さい。私はコンバインで、のんびり行きますから。」
肩に担ぐと、ずっしりと重い。初めて感じた収穫の重さだ。
35mのはせ掛けは、見事だったが、長さでは重さは分からない。
両腕で思いっきり抱えて運んでも、所詮、枯れ草の先端についた種。そんなに重い物でもなかった。
しかし、こうして担ぐと、はっきりと重さを感じる。しかも、これが5袋もある。
今までも何度か「やってて良かった」と、感じた時があった。
穂が出た時、花が咲いた時、一面黄金色に色づいた田んぼを眺めた時・・・。
でも、今がいちばん「やってて良かった」と、ずっしりと体で感じ取れる。

(8/88) <籾摺り>
ここの作業場は、開いている時に何度か覗き見した事はあったが、中に入るのは初めてだ。
いろいろな機械が置いてあって、工場と言った感じだ。
これが、乾燥機か。こんなに大きいんだから、1つに何十トンも入るんだろうな?
このホースから乾燥した籾が出てきて、こっちのホースを通って、向こう側の機械に入れるのか。
工場なら、ベルトコンベアーに乗せて流れ作業だが、ここは、ホースの中をお米が移動して、次の工程に移るのか。
かってに、工場見学をしていると、川島さんが帰ってきた。
「この箱に籾を入れてください。ホースを通って、籾摺り機に入ります。籾が少なくなってきたら、ほうきとちり取りでホースの方に籾を集めてください。ホースの中でスクリューのような物が高速で回転して、籾を送っていきます。手を近付けると危険ですから、必ずほうきとちり取りを使って下さい。
籾摺りが終ると、玄米が右側の方に出てきて、米袋に入ります。1.8mm以下の米は、くず米なので、選別して左側の袋に出てきます。」
へぇ。全部で何粒あるか分からないけれど、一粒一粒計測して、くず米をはじき出すんだ。ゴッツイ機械だけど、すごい精密機械なんだ。実は、全部で何粒あるかも数えていたりして?(必要ないか)
米1升で46000粒あるって、何かで聞いた事がある。浅草、浅草寺の縁日(朝顔市だったかな?ほうずき市だったかな?)で、四万六千日と言って、この日にお参りすると、46000日お参りした事になるそうだ。米1升と人の一生をひっかけてあるそうだ。
また話がずれてしまった。 箱の中にザーっと籾を入れて、籾摺り機のスイッチが入る。
すごい勢いで、籾が吸い込まれていく。 全部、左から出て来るんじゃないかな?
もみの入っている袋は、どんどん無くなって行き、玄米の入る袋にどんどんたまって行く。
この作業も、あっという間に終わってしまった。
結果発表! 結局、取れた玄米の総重量は、約95kg。
米袋、3袋とちょっと。幸い、左側に出る「くず米」は、ほとんど無かった。(良かった)
「あれ?黒米が混じっちゃたね。この前に、この機械で黒米の籾摺りをしたから、まだ機械の中に少し残ってたんだ。
黒いから、すごく目立つね。これ、精米したらもっと目立つと思いますよ。」
「でも、悪い物が入っている訳じゃないし、黒米の方がOCCI米より貴重だから。良いんじゃないですか?」
「お米の検査って、検査用の皿があって、そこに、無作為にお米を並べてみて、その中に少しでもくず米や、ほかの物が混じっていると、お米のランクが下がって、全てのお米の価格が下げられちゃうんです。これだけ入っていると、確実に下のランクになってしまいます。」
「別に、売る訳じゃないし、プレゼントするのもホームページを見てくれた人だから、黒米の事も知ってるから、送る時に『黒米が混じってます』って書けば、かえって得した気分になるんじゃないですか?」
「お客様に送る分だけでも、取り除きますよ。」
これだけの中から、1粒1粒、拾い出すのはかなり大変だと思うけど。プロとしてのプライドが許さないのだろう。どうぞご自由に。
ホームページを見て、申し込んでくれた方へのプレゼント用として、1袋(30kg)を置いて行き、あとの65kgは私が貰って帰る事にした。
(9/88) <精米、試食>
早速、近所のコイン精米所(田舎の方では、こういう無人の精米所のプレハブ小屋があちこちにあります。)に持って行き、奮発して「上白米」のボタンを押す。(とは言っても、「5分」でも、「7分」でも、「白米」でも、同じ10kg100円なのだが)
搗き上がった真っ白なお米が、「サーッ」と、音を立てて落ちてくる。
あれ? 黒米が消えた。手に取って見ても真っ白いお米以外は何も無い。
もしかして、精米所の裏の方で、誰かがお米をすり替えているのだろうか?(そんな事はしないだろう)
前に精米に来た人が、途中で100円玉が無くなって、お米はそのままで家に取りに帰ったのだろうか?
やがて、精米が終わる。どうやら前の人が置いていったお米ではなかったようだ。
良ーく目を凝らしてみると、ポツンと黒く残った所のある粒がある。
そうか。黒米も、黒いのは周りの糠の部分だけで、中のお米は白いんだ。
普通に見ただけでは絶対に見つからない。お米を検査する人だって、気付かないだろう。
家に持ち帰り、炊いてみる。 どんな味がするんだろう?
絶対、おいしいに決まってる。 つい、さっきまで田んぼにぶら下がっていたんだから。まだ「太陽の味付け」も残っているだろう。
炊飯器からの炊き上がる匂いも、ぜんぜん違う。「ご飯が炊けるよー!」って言う良い匂いを家中にばら撒いているようだ。
炊き上がった。 どれどれ、モグモグ。 おいしぃー!!
「これぞ、お米!」そんな味だ。生まれてから今までに食べた中で、一番おいしい。(今までに食べたお米の味を全て覚えている訳ではないが)
もしかして、合鴨米よりおいしいかも?(これを「手前味噌」と言う。)
鴨のフンに、太陽の味付けが勝った。(手前どもの味噌が一番おいしゅうございます。)
2合炊いたが、何もおかず無しで家内と2人でペロッと食べてしまった。
作った本人よりも、公平な舌で判断してもらおう。川島さんにメールを送る。
「早速、精米して食べてみました。精米すると、黒米は全然わかりません。とてもおいしかったです。
おいしいお米を食べ続けてきた専門家(川島さん)に、味見してもらって、感想を聞きたいです。」
数日後、返事が届いた。 「子供の頃毎日食べていた、かまどで炊いたご飯の懐かしい香りと味に似ています。」
さすが、お米のソムリエ(?)。すばらしい表現だ。
「太陽の味」なんて言われても「どんな味なんだ?」だろうが、「かまどで炊いたご飯」を食べた事が無くても、なんとなく味が分かる。
でも、おいしいとも、まずいとも書いてなかった。
まあ、おいしい、まずいは人の好みにもよるだろうから・・・。
「今のお米は、品種も改良されたし、流通も良くなって、日本中どこでもおいしいお米が食べられるようになった。昔の米はまずかったよ。」と言うお年よりもいるだろうし、
「今は、炊飯器でおいしく炊けるようになったけど、かまどで炊いていたころは、炊きむらが出来て、下の方は焦げるし、上の方は芯が残るし。」と言う人もいるだろう。
ベートーベンの曲を絶賛する人もいれば、「クラシックなんて、どこが良いの?」と言う人もいるだろう。
ピカソの絵を見て「すばらしい。」と言う人もいれば、「何が書いてあるんだ?」と言う人もいるだろう。
「これは、絶対オススメ。すごくおいしいよ。」と、一方的に勧める料理人よりも、食べた後に「お口に合いましたでしょうか?」と、聞いてくるシェフの方が、私は好きだ。
OCCI米を食べていただいた方「お口に合いましたでしょうか?」
で、お米の行方は? 知り合いの家に送ったり、ご近所にお裾分けしたり、だいぶ早いがお歳暮代わり(毎年合鴨米を送っている)に送ったり・・・。
結局、家に残ったのは、25kg。 あー、もったいない事をした。でも、少しでも沢山の人に味わってもらいたかったから・・・。
お送りした方々、ちゃんと全部食べてくださいよ。
1粒でも残したら、私がバチをあてます。
番外編 (89/88) <感謝!>
こんな素人に良いようにかき回されて、それでも立派に稲を育ててくれた「田んぼ」に感謝!
田んぼの土の中を動き回って、良い土にしてくれた「ミミズたち」に感謝!
素人にもおいしい米が作れる『新潟コシヒカリ』の種籾を分けて下さった「農家の方」に感謝!
川島さんに田んぼを貸してくださった「田んぼの持ち主の方」に感謝!
わざわざ、利根川の方から水路を通って、ここまで来てくれた「水」に感謝!
稲を干す柵になってくれた「竹」に感謝!
いつも田んぼに来て、居眠りしながらも見張っていてくれた「ブー似の猫」に感謝!
肥料になってくれた「雑草」に感謝! 巣を張って、悪い虫たちを食べてくれた「クモ」に感謝!
鍬や鎌を発明してくれた「大昔のお百姓さん」に感謝!
時々、田んぼの近くを通った時に、適切(適当?)なアドバイスをいただいた「近所のおじいちゃん(川島さんの奥さんのお父様との説もある)」に感謝!
ずいぶん涼しくなったのに、頑張って泣いて応援してくれた「ツクツクボウシ」に感謝!
出たり隠れたり、ずいぶんヒヤヒヤさせられたけど「太陽」に感謝!
稲刈りを手伝ってくれた「みんな」に感謝!
そして誰よりも「川島さんご夫妻」に感謝!!
(思いついたまま書いたので、順不同で失礼しました。)
全ての皆様、こんな「ド素人」に自然の恵みを与えて下さって、本当にありがとうございました。
そして、毎回、面白くも無い、長ったらしい文章を読んで下さった「あなた」、ご苦労様でした。
もう少しで終わります。
番外編 U (90/88) <その後>
職場の同僚や知り合いから「来年もまたやるんでしょ?」と聞かれ、島倉(仮名)さんにも「竹の柵、丈夫に出来てるから来年も使えますね。」と言われた。
私の答は 「冗談じゃない!もう二度とこんな事やるもんか! 来年は、トラクターに乗せてもらって、田植え機に乗せてもらって、合鴨を放すのを手伝って、コンバインにだって乗せてもらうんだ。」
脱穀が終わって、もう数ヶ月がたつが、あの後、いちども田んぼに行っていない。
「忙しくて行っている時間が無い」なんて、言い訳に過ぎない。 時間なんて無限にある。
行ったところで、もう稲は無いし、草を取る必要も無い。
虫たちもいないだろうし、蛙はもう冬眠しているだろう。
行っても無駄。行く必要も無い。田んぼはもう私を必要としていない。行って何をする?
・・・行けない。 行くのが怖い?・・・ まるで登校拒否の小学生のようだ。
田んぼ依存症の後遺症だろうか? 「ペットロス症」とは聞いた事があるが「田んぼロス」とは聞いた事が無い。
でも、あのままにしておいて良いのだろうか?後片付けもしていない。竹の柵も、あのままで良いのだろうか?
やるだけやって、後は知らんぷり。 荒らし放題、荒らして何の手入れもしていない。
自分はやらないにしても、来年誰かがやるとしたら、もう準備を始めなくてはいけないのでは?
もしかしたら、私が行っていないうちに、川島さんがきれいにしてくれていたら・・・。
そんな事させては申し訳ない。 先日、フラッと(ウソです。意を決して)行ってみた。
田んぼまでの道のりが長い。 こんなに遠かったっけ? もう何年も来ていないような気がする。
荒れ放題に荒れて、もう田んぼとしては使えない状態にでもなっていたらどうしよう?
それよりも、きれいに片付けて、来年への準備もしていたら、もっとどうしよう?
川島さんが、鍬1本で耕しているのにバッタリ出くわしたら? 気まずい。 雨の日に来れば良かった。
でも、雨の中ずぶ濡れになって耕しているのに出くわしたら? もっと気まずい。
やっぱり来ない方が良かったかな? なんて考えているうちに、田んぼに着いた。
あの時のままだ。全然変わっていない。苦労して作った竹の柵もあのままだ。
まるで、そこに昨日まで稲がぶら下っていたかのように。
数日前まで、黄金色の稲穂が風に揺らいでいたかのように。
ただ一つ、変わっていたのは、切り株から新たに青々とした葉が伸びている事だ。
こんなに寒くて、水も無いのに、すごい生命力だな。でも、もう実る事は無いだろう。
私は何をすれば良いのだろう? 来年のために何をしなくてはいけないのだろう?
レンゲの種は、いつ頃まくのだろう? 来年の田植えのために・・・・・
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