『ブルキナ・ファソ、肉さかなグルメ日記』 |
| 楠田一千代 | (アフリカ日本協議会会員、SODECC会員) |
ブルキナファソは、1984年4月までオートボルタと呼ばれていた。83年の革命で政権を握ることになったトーマス=サンカラ中尉は、「彼こそは、...... 暗殺されるまでの4年間、多くのアフリカ諸国にあって、わかってはいても、あえて実行しようとしなかったことを、正面から民衆とともに挑戦しようとしたアフリカ人リーダー」で、「クーデターで世直しを約束をして登場する軍事政権が、やがては倒した政権と同じ権力の濫用に陥り、次の世直しクーデターを生むという、第三世界でよく見出される政変サイクルに出てくるリーダーとは異なる」(現代アフリカ入門pp.212-213、勝俣誠、岩波新書)とも評される人物であった。
さて、私の友人(サワドゴ氏)というのは、長くブルキナファソのNGOに関係していたモシ人で、昨年末にブルンジ難民キャンプ(旧ザイール国内)での国連ボランティア契約を終えて帰国したばかりであった。私は彼の就職活動の合間にお邪魔して、ワガドゥグ(首都)をいろいろ案内してもらった。今回は、セネガルのダカール市から入国したのだが、気候が非常に違うのにまず驚いた。暑さや湿度の低さは、海に面したダカールとは比べ物にならない。夜、普通に寝ていては喉が渇き、非常に寝苦しい。毛布代わりのシーツを頭からかぶってやっと寝られるという感じだった。また、肌も非常に乾燥しやすく、クリームかオイルを塗らなければ、足のうらなどどんどんひび割れを起こしてしまう。まさしく膚を持ってブルキナの気候の厳しさを知った。
それでは本題に入ろう。今回は主にワガドゥグの食事情について紹介したい。強く印象に残っていることだからだ。ブルキナ人も非常に自慢する。私は以前セネガルに住んでいたことがあり、セネガルの食事は種類が豊富で、他のアフリカ諸国の料理よりも美味いと思っていた。しかし、ブルキナでグルメな一週間を過ごしてから、少し考えが変わった。なぜなら、肉料理に関して言えば、焼くか、ソースに入れて煮るだけのセネガル料理に対して、ブルキナでは非常にいろいろな方法で肉が料理される。紙に包んで遠火で蒸し焼きにしたり(左写真)、また、オーブンでじっくりと調理すると、肉汁がしみ出てきて、肉も柔らかくしあがる。これを適当に何片か選び(羊肉ひと塊500セーファーフラン=約110円)、午前中から開いている隣接した酒場でビール(代表的ビール、ソベブラ大瓶一本300セーファー)を飲んで待っていると、一口サイズに切った肉を皿に盛って運んできてくれる。皿の端にはピーマン(西アフリカの唐辛子)の粉が盛ってある。店の人が持ってきてくれたミニバケツの水で手を洗い、これを手づかみで食べる。美味い!柔らかくて、香辛料の効き具合もちょうど良い。肉汁をベースにしたソースをたっぷりと付けて、フランスパンと一緒に食べる。どんどん食べてしまう。うまい。しかし、この青空飲み屋、非常に女の人が多い。「なんでだ?」と友人に聞くと、「彼女たちはここで働いているのさ。」と教えてくれた。ほとんどが隣のトーゴ共和国から来てる女性らしい。この西アフリカの小地域でも、出稼ぎ労働は重要な現金収入源となっているようだ。
次に魚料理を紹介しよう。ブルキナは内陸の国で、本来魚はそれほど捕っていなかったし、食べるとしても干したか薫製したものが一般的であった。しかし、ワガドゥグにダムが造られ(3ヶ所)、貯水池ができたのでそこで養殖が始められ、新鮮な魚が毎日食べられるようになったとのことである。ちなみにその貯水池も、昨年の雨季に雨が非常に少なかったため3つとも水位が非常に下がっており、今年の2〜3月には給水制限が出されるだろうと友人は予測していた。さて、このダム貯水池で捕れる魚は淡水魚だが、炭焼きにしてもソースに入れて煮ても、臭みがなく、その白い身はとてもほくほくして美味い。テーブルの上に大きさ別に山積みにされている生魚を選んで、その場で料理をしてもらう。料理された魚を肉同様ピーマンの粉をつけて食べる。もちろんソベブラを飲みながら。サワドゴ氏はキリスト教徒だが、よく飲みよく食べる。「飲み会」が大好きな私にとってはもってこいの友人である。
もう一度、肉の話に戻ろう。羊肉も美味かったがもう二つうなるほど美味い料理があった。牛タンとヤギのレバーである。特にレバーは午前11時前でなければ売り切れてしまうほどの人気である。新鮮なせいだろうか、レバー特有の臭みもなく、脂も少ないのでどんどん食べられる。ビールのあてには最高である。しかし、これに輪をかけて美味かったのが、牛タン。こいつはワガドゥグに行ったら是非食べていただきたい。店では、「牛タン一本半!」のように頼むらしい。一本半あれば普通4人前ぐらいはある。どう料理するのかは知らないが、注文してしばらく(ソベブラ一本は飲めるくらいの時間)すると、たっぷりのソースに浸かったタンのぶつ切りがでてくる。やはり皿の端にはピーマンの粉が盛ってあるが、タンの場合には洋がらし(マスタード)を忘れず頼むこと。タンの歯ざわり、歯ごたえと、少々甘めのソース。洋がらしが実によく合う。
一ヶ月もいたら5kgは太ったであろう、グルメ滞在であった。他にも、直火でなく遠火でじんわりと焼き、ピーナッツソースをつけて食べる串焼き(牛、鶏)や有名なホロホロ鳥の丸焼きも結構イケル。今回は食べられなかったが、ブタのオーブン焼きは、サワドゴ氏の自宅周りには何軒もあった。そして、必ずそのすぐ横には、白ソルガムでつくる現地ビール(モレ語でドロ)を飲ませてくれる「キャバレ」と呼ばれる簡易小屋の酒屋があった。女性たちの大きな収入源になっているとのことだ。
こうして食を通してワガドゥグに住む人々の生活を見てみると、非常に豊かな感じがした。切り野菜のサラダ(ドレッシング付き)や朝食用のミル粥(モレ語でベレ)などは、できあいの形で売られており、早朝や仕事帰りに買いにくる女性も多いようである。そうそう、ワガドゥグでは働く女性が目につく。朝夕のラッシュ時、昼休み前後には多くの女性がオートバイや自転車で街を行き交う。他のアフリカの都市では見たことのない風景だった。また、アフリカの新しい一面を見せてもらった。
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ブルキナファソ(Burkina Faso:ディオラ語とモレ語の組み合わせで「潔白で尊厳ある人々の国」の意): 人口約1,062万人(1996年7月CIA推計)、表面積約27万4000平方km。ガーナの北に位置し、近年干ばつ、砂漠化の影響により環境劣化が顕著な内陸国である。大統領と首相がおり、今年大統領選が予定されている。主要なエスニック・グループは、プル、ディオラ、モシなどである。宗教は、原始宗教が最も多く、次いでイスラム教、キリスト教、その他となっている。 |
(会報 SODECC 第4号・1998年3月 発行より:但し一部改変)