女性グループによる少額貯金融資活動
〜 エンダ・グラフの支援によるセネガルの例 〜

楠田一千代 (アフリカ日本協議会会員、SODECC会員)


1997年12月から98年1月にかけて、アフリカ日本協議会とセネガルに本部を置く国際NGO、エンダ・グラフの行う共同調査のためにセネガルを訪問する機会を得た。この機会を利用して、エンダ・グラフが支援する現地の女性グループによる少額貯金融資活動について色々話を聞き、実際の活動も訪問することができたので、ここで紹介しよう。

活動の始まり‐女性たち自身のイニシアティブから

pamphlet
GECの活動を紹介するパンフレット。GECグランヨッフは、エンダ・グラフ事務所の一角を借りて営業している。
エンダ・グラフの支援する少額貯金融資活動は、ダカールの下町、グランヨッフ(Grand-Yoff)で始まった。グランヨッフでさまざまな経済活動を営む女性たちが、自分たちのそれまでを振り返り、話し合いを重ねて、一般銀行で貯金できずに融資も受けられない、外部支援組織に依存している、地元での貯蓄と収入が少ない、家庭での出費が多い、高利貸しに依存せざるを得ない、の5点が自分たちの経済活動を阻害しているとの結論に至った。そして、これらの問題に対処するための手段として貯金融資用金庫の創設を思い立ったのである。金庫設立のために、グランヨッフで活動していた13の女性グループが集まって、貯金融資グループ(GEC:Groupement d'駱argne et de cr馘itを作り、まず、日々の売上等からお金を出し合って、半年で約100万セーファーフラン(CFA:当時の換算で、約50万円)を集めた。ここでGECはエンダ・グラフに資金補助を依頼する。エンダ・グラフは約300万CFAの資金を貸し、1987年、最初の少額貯金融資金庫が発足したのである。

この最初のGECは大成功し、翌年には2つ目のGECが作られることになった。57人の女性たちが集めた資金に加え、GECグランヨッフとエンダ・グラフが資金を貸し、合計約174万CFAで活動が開始された。これまでのGECの活動成果は、顕著で、1996年の段階でダカール近郊には12の独立GECが存在し、会員総数は2万人に達している。総額9億7000万CFA(約2億円)ものお金が、小売り業、野菜栽培、養鶏、民芸品製作、穀物加工や果物加工など種々の小規模事業に融資された。融資の返済期間は6〜12ヶ月、年利は10%であり、これまでの返済率は100%となっている。融資を受ける条件は、別のところから融資を受けていない、融資希望額の25%の貯金がある、GECの会員である、出資金6000CFA(約1500円)と年会費1500CFAを納めている、の4点である。GECは、会員の意見を聞きながら、住宅・土地購入用の貯蓄活動や、イスラム教徒が多いセネガルの社会を反映して、メッカ巡礼用の積み立てサービスも行うようになってきている。

より利用者の近くへ、要望に応えて ‐ピキンのギッシェ

ダカール郊外、ピキン市での活動を直接見ることができた。ピキンには6つの市場があるが、そのすべてに、合計7ヶ所の貯金融資窓口(ギッシェ:guichet)がある。ギッシェは、活動をサービス利用者により近づけ、また、GECへの参加会費も持ち合わせない非常に貧しい女性たちにもチャンスが与えられるように、と始められた。ここでは、25〜50CFAでも貯金できる。ピキンでの活動は1996年、一つのギッシェから始まった。 現在、ピキンと隣町に合計9ヶ所のギッシェがあるが、午後2時すぎ窓口業務を終えた担当者たち(全員女性)が集まったお金を持って、毎日ピキン総合金庫に収めにやってくる。この総合金庫の出納責任者、ウレイ=ディウップさんが、ピキン最初の窓口を担当したその人である。彼女は、グランヨッフのGECで45日間の実地訓練を受けたあと(これはすべての担当者に必須)、ザンク市場のギッシェで活動を開始した。彼女は、窓口業務の傍ら、他の市場の責任者たちと協議し、市場委員会で推薦された女性に実地訓練を施し、わずか半年の間に、ピキンと隣町のすべての市場(8ヶ所)に窓口を開設したのである。貯金残高も合計3500万CFAになっていた。そして、エンダ・グラフの支援のもと、ピキン総合金庫建設の運びとなった。利用会員総数は1997年末で約2千名となっている。

通帳。ギッシェで一冊400CFAで購入できる。窓口に預けっぱなしの人もいれば、自分で管理している人もいる。各ギッシェがピキン総合金庫から購入している。
通帳
1996年の統計では、ダカールとその近郊にある26のギッシェで、9千人の女性が会員となり、毎月1200〜1500万CFAが集金されている。一方、毎日の収入が少なく食料が買えない、忙しくて買い物をする暇がなく、家族の食事の準備がおろそかになる、という利用者の相談に応えて、コメ・ミレットなどの穀物や砂糖などの基本的食料の共同購入や、つけによる販売サービス(月末払い)も行われ、多くの人が利用している。

借金取りたてとクリスマスパーティーとGECの本当に意味するもの

ひと月に2回、ギッシェ担当者たちと各市場の運営委員会メンバーが集まりミーティングが持たれる。議題は、借金の取りたて、つまり、返済の遅れている人をどうするか、である。ピキンGECのアプローチは、まず、自宅に出向き会って話す。もう一度会う。それでもだめなら警官と一緒に訪問する、である。自宅訪問はグループで行い、その時メンバーに年長者を必ず入れるようにする。こうすると話し合いもスムーズに行くのだ。

会合
返済の遅れている人をどうするか、を話し合う定期会合の様子。
私が居合わせたクリスマス前の会合では、借金取りたてのほかに、もう一つ大切な議題が取り上げられた。子どもたちのクリスマスパーティーについて、である。寄付金の集め方、役割ごとのチーム分けなどが話し合われた。借金取りたてグループは、同時にお母さんたちの集まりでもあり、GECの活動現場がそのまま、自分たちのコミュニティーをよくするための意見交換や活動の場ともなっているのである。 エンダ・グラフ活動報告書、"Ancrages des Recherches Populaires"(住民による探求の足跡(仮訳):1996年)にこの活動の根底にある理論が記述されている。「足元の資金動員、つまり、住民たちが持っている資金を、彼ら、彼女ら自身の生活空間内で循環するようにすればいい」のである。この単純明快な理論を実践したGECという女性たちの経済活動支援は、その先に、自分たちの手による生活の改善、都市では希薄になりがちなコミュニティー内の相互扶助という行為の再構築を行うための梃子(てこ)として働いているのである。