鏡  の  告  白

 


 ぶ厚いビロードの覆いを持ち上げ、女王が質問する。
     「鏡よ、鏡。
         世界で一番美しい女性は誰?」
     「もちろん、貴方です、女王様」
 いつもの問に、いつもの答。
 しかし、今朝の女王は、いささか不機嫌。
 目立ち始めた白髪をティアラ(髪かざり)で隠し、言い返す。
     「本当のことをおっしゃい。
           さもないと、叩きこわすよ」
     「ですが女王様、私の知るかぎり、あなた様より美しい
      女性は、この世におりません」
     「その言葉に嘘いつわりはないのだね?」
     「一片のいつわりもございません、女王様」
 やっとのことで納得した女王が鏡に再び覆いを垂らして立ち去
 ると、鏡の精は深い溜息を洩らした。
     「........なにしろ、私めは、この世に誕生してこのかた、
      女王様以外の女性をただの一人も見せていただい
      たことがないのですもの、比較しようにも...........。
      とにかく”白雪姫”とかいうたぐい稀な美しい少女が
      いるという噂は聞いたことがあるけど..........」


浅草橋JOKE研究所
原辛わら江選