遂にこの時が来た。色々とよぎる思いもあるだろう。でも、もうジタバタしたって始まらない。研ぎ澄ました推理をぶつけるのもいい。一年の思いの丈をぶつけるのもいい。

 決着の時は、もう、すぐそこだ。


KEIRINグランプリ '99
1999年12月30日 立川競輪場 電投番号28#
主催者発表のものとご照合を。
11R グランプリ 先固7周 2,825m 16:25
             前々回   前回 競走得点 先捲差ク
11児玉 広志(香川66) 広欠    平338 120.22 0471
22神山雄一郎(栃木61) 広458  平212 119.02 2761
33東出  剛(千葉54) 平451  岐315 121.36 00125
44小倉 竜二(徳島77) 知欠    平3落欠 120.04 0332
 5金古 将人(福島67) 佐2117 平111 122.26 22120
56山口 幸二(岐阜62) 平713  岐412 117.02 0064
 7吉岡 稔真(福岡65) 佐4521 広欠   119.67 41411
68小橋 正義(岡山59) 佐6341 岐欠   118.17 0035
 9太田 真一(埼玉75) 佐1314 平94失 120.36 9710
(コメントは競輪研究より)
11児玉 色々なことで試行錯誤したが、最高の自転車を見つけたので自信はある。
     太田4番手から展開次第で何でも

22神山 色々なことがあったが、グランドスラムも達成できたし良い年だった。
     太田一本。競りでも番手を死守。

33東出 1億を超えたし、自分では満足した年。金古を信頼して付いていく。
     手応えを感じている。

44小倉 ここ1ヵ月忙しくて全く練習できていない。位置は決めず単騎で前々勝負。
     ハコへ切り込みも。

 5金古 特別決勝でポカが多かったが通念で見ればまずまず。
     太田に逃げられては苦しいので早めの捲りか、鐘過ぎなら先行も。

56山口 太田三番手につけるが、小倉が神山に競る展開なら自分で何かする手も。
     11月に優勝して赤丸急上昇中(笑)

 7吉岡 怪我が多く波に乗れなかったが、何とかここに間に合った。
     中団に固執せず自分のレースで結果を出したい。

68小橋 少し体調を崩したが1週間乗り込んで仕上がりは悪くない。
     吉岡君に全て任せる。よほどのことがない限り切り替えはない。

 9太田 宮杯、世界遠征で優勝できたがもう一つ上積みが欲しい。
     僕は先行選手。気負わず、風を切って走りたい。

周回←4・53・78・9261 誘導:波潟 和男(東京57)
【一年で最も幸せなとき】

 11月末、競輪祭が終わりGPの出場メンバーが決定してからの一ヶ月が、競輪客にとって最も幸せな時間ではないだろうか。
 9人とも、一年間じっくり見てきた選手達だ。どんな走りをするのか、みんな分かっているつもり。いや、分かっているからかえって分からない。みんな、頭を悩ませる。でも、他人が悩んでいるのを聞くとなんだかおかしい。オケラバスの中も電車の中も飲み屋もみんなグランプリの話題。小倉はどうする、神山は駄目なのか、金古は本当に逃げないのか、小橋は差せるのか、みんなみんな悩んでいる。コメント聞くまで分からない。コメント聞いても分からない。昨日立てた予想も明日になったら違っている。そんな繰り返しで、ついにこの日を迎えたわけだ。

 まず、小倉を消す。確かに強い。度胸もある。しかし、この舞台は今までとは違う。今まで何人もの選手がこの舞台で小細工を弄して、そして落車している。児玉がよい例だ。そして、今年はそれが小倉になる。落車してなくても、「練習は全くできなかった」人間が勝てるほどグランプリは甘くない。残念ながら、今回は彼にとっては勉強だ。しかし、買い目からは消せるが、展開からは消せないのが怖いところだ。

 さて、誰もが太田が逃げると思っている。本人もそう思っている。で、太田は後ろを競らせてぎりぎりまで出渋る。そうなると神山がさっさと捲って出て行ってしまいそうだが、小倉、児玉、下手したら山口までもが太田の番手を狙いに来て大渋滞になっているので今回はそれはできなさそう。
 そして、その隙をついて誰かが逃げる。金古も吉岡も先行があり得るコメントを出している。どっちだ?

 金古が逃げる。この手の大一番では力を出し切れないこの男。しかし、今回は逃げる。いや、逃がされる
 大舞台の場数は、やはり吉岡が上手。どちらも番手に名伯楽が付いているが、番手の力量が同じなら、あとは馬の器量だ。レース下手の吉岡だが、金古よりは巧いはずだ。そして、金古が逃げて吉岡が三番手。神山はこの時点で勝負権がないはずだ。前回平の212も、番手戦を戦った結果ではない。ここは脚を使い果たしているはずだ。

最終バック予想
←537814962
 金東吉小児小太山神
 古出岡橋玉倉田口山
 さあ、吉岡が絶好の展開だ。しかし、出られるか?

 金古はもうヤケクソで逃げている。しかし、ここ最近先行で結果を出していないツケがここで回ってくる。あとは東出の動き一つだ。
 東出は渾身のブロックをするだろうか。いや、金古には散々世話になっている東出だが、ここは一世一代の大チャンス。かなり早めに踏み込むはずだ。そして、その後ろから吉岡が攻め込む。小橋はどうか?展開的には良さそうだが、近況がどうもいけない。競輪祭は事故点があったせいかと思っていたが、その後の佐世保が最悪だった。個人的には小橋に勝ってもらいたいが、ここは良くて二着止まり。
 かなり長めの立川の直線。ここまで考えても最後に誰かが突っ込んで来る可能性はある。しかし、今回は点数は増やさない。前で決まる。
 そして、児玉が来そうだ。すごく来そうだ。小橋が不調なだけに児玉が来そうだ。東出のブロックで吉岡が飛んだら、児玉が突っ込んで来る。インの開き方では頭も。この場合、東出との裏表になる。

 結論。
 以下の五点。

3−7,7−3,7−8,3−1,1−3

3−7,7−3,7−8,3−1,1−3
12/28、西宮にて購入


おまけ。一着三着


結果
 阿佐田杯は後閑が優勝。2年前のこの日、雨の中の悲劇を巻き起こした後閑だが、今年1月の社杯での落車が元で今年後半をほぼ棒に振った彼がついにここで脚光の舞台に返り咲いた。しかも、9番手捲りで敢闘賞のおまけ付き。個人的にはあまり好きな選手ではないが、とにかくまた、一人のトリックスターが帰ってきた。

 好天に恵まれ、客席は超満員。そして、阿佐田杯決勝を終えると客席は完全にヒートアップ。
 幸い儂はバック特観席に入れた。10R終了後の約1時間の発売時間中、周りは皆、最後の悪あがきをしている。雰囲気に呑まれ、「これ以上買わない」と決めていた儂も、ほんの少し買い足してしまう。

 さて、ついにその時が来た。場内にはたいまつが灯され、スモークの中を選手が入場してくる。そして、号砲。

 毎年激しい出渋りがみられるこのグランプリだが、今年はあっさりと吉岡がS。小橋も続く。
 隊列は一周で固まる。

周回
←7853426 吉小金東小神山 岡橋古出倉山口
 あとは淡々と周回をこなす。

 いよいよ赤板で動きが。
 太田が上昇開始、そして小倉が神山のインに。「アウト競りが得意」という小倉だが、果たしてこの選択は正解か?

赤板
    2
   46←7853
 吉岡は一旦下がり、打鍾を迎える。太田がゆっくりと踏み込みはじめる。やや早くはないかと思ったが。そして吉岡も後方から巻き返しに。
打鍾
  2  78
←4653
 太田は果敢に踏み込む。吉岡が外から早めの捲り。
 そして最終ホーム。直線で小倉が競り負けて落車。
最終ホーム
  78
←2653
 吉岡と神山の並走は最終二角まで続くが、神山の思いきったブロックで吉岡不発。神山はこの時既に失格を覚悟してあとはブロックに専念したのかもしれない。
 最終バックではさらに金古が襲いかかってくる。
最終バック
    7
  538
←26
 しかし金古も神山の好ブロックに阻まれ不発。そして舞台は最後の直線に。

 一周半にわたって懸命にもがき続けた太田がついに最後まで押し切って、見事初出場初栄冠を飾る。二着は写真判定になったが、猛然と中を割った児玉。三着入線神山は失格で、小橋が繰り上がり。

ゴール
         →
         |
                          8|
      6  2
     7   |
    5  3 |

一着 9太田 真一(埼玉75)逃11.8  枠 1−6 2,570円 14番人気
二着 1児玉 広志(香川66)1/4輪  車 9−1 6,780円 29番人気
三着 8小橋 正義(岡山59)3/4身
四着 3東出  剛(千葉54)
五着 6山口 幸二(岐阜62)
六着 7吉岡 稔真(福岡65)
七着 5金古 将人(福島67)
三失 2神山雄一郎(栃木61)
落棄 4小倉 竜二(徳島77)

 逃げた太田。強かった。文句つけようがない。打鍾先行なんて早すぎるのではないかと思ったが、堂々と押し切った。この大一番で自分のレースをして、そして結果を手にした。世界選との二足の草鞋をこなしながらここまでやれたのは素晴らしい。どっちつかずになってしまった十文字との差は今や決定的になったようだ。
 ただし、この勝利ももちろん太田一人の力で勝ち得たものではない。そう、神山が敵を三人も殺してくれたからだ。
 今回の神山、脚はかなり好調のようだった。当然番手捲りを打つのかと思っていたが、小倉落車で自分の勝利はないものと悟ったのかどうかは分からない。とにかく後は吉岡や金古をブロックすることに専念していた。これがなければ、展開は大いに違っていただろう。

 さて、敗者について。
 児玉は、一時の不調からは脱していたが、四番手という位置から行動を起こさなかったのが敗因。ゲリラ戦法の男がすんなり後方を追尾していたらなかなか勝てんわなぁ。
 小橋は、マーク屋の宿命と言うべき負け方。毎年吉岡と心中するのは嫌だろうなぁ。ラインを組めそうな四国勢は自在屋ばかりだし…。友定とか吉永が早く上がってきて欲しいと願っているに違いない。
 金古ラインは、神山に敗れたとしかいいようがない。脚勢自体はかなり良く、儂も一瞬夢を見たのだがそこまでだった。この二人、大舞台ではいつもこんな感じ。「星」を持っていないのか。
 山口は力負け。まあ、今年一年の様子を見たらこんなものだろう。来年は山田共々復調して欲しいものだが。
 吉岡は、普通の自力屋に成り下がってしまった。まだまだ老け込む年ではないと思うのだが、これまで背負ってきた看板があまりにも大きすぎたか。ここ何年か、常に「吉岡は本当に復調したのか」が輪界の大きなテーマの一つであったが、来年もそのテーマは続いていきそうだ。話題に上らないような選手にはなって欲しくない。
 小倉は、まだまだこれから。レース後の神山のコメントに「同じ相手に二度は負けない」というのがあったが、これで上位陣の実力を改めて思い知ったことだろう。これで懲りて萎縮するようなタマではないと思うが、とにかく来年は大きなものを持って行くつもりで戦って欲しい。
 神山は、なんというか、つくづくこの舞台に恵まれていない。番手捲りを打たなかったところに脚質変更の気配が見えてきたが、さてどうなるか。マーク屋としての神山は、まだまだ完成されていない。いろんな噂も聞こえてくるが、とにかく来年は試練の年になるだろう。

 さて、個人的総括。
 「GPは思い入れで買う」というスタイルを毎年続けてきたが、毎年あまりにもハズレ続けていいかげん嫌になってきた。そして今年はまっとうな予想(今となっては『珍説』にすぎないが)を展開し、それに従って買った結果がこのザマだ。
 なんか負けてもすっきりしないので、来年のGPは、思い入れのある選手と心中、というやり方に戻す。

 単なる一つのレースではなく、一年の総決算なのだから。

(99.12.27〜31)

一千年紀最後の二着三着

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