最近ではグランプリが一年のメインになってしまったような感もあるが、元々競輪界最大のイベントといえば「日本選手権競輪」つまりダービーである。
3月下旬という多くの人がクソ忙しい時期に開催されるにもかかわらず多くの観客を集めるこの大会、開催場も比較的大都市圏の近くに限られている。
そんなビッグイベントを去年(平成8年)開催したのが、ここ、千葉競輪場である。当時私はご多分に漏れず年度末の忙しさのまっただ中にあったが、どうにか時間を工面して日帰りながら現地参戦した。これが、ダービーの本場への初参戦だった。
格式高い「ダービー」を目の前でみられるという期待は大きかったが、一方である種の不安があった。この千葉競輪場についてあまり良い噂を耳にすることができなかったからである。
前年の秋、立川で初めて車番連勝車券が導入されて以来、競輪界は車番ブームのまっただ中にあった。さらに、この4月以降の特別・準特別の開催は全て車番が導入されていることが条件となっていた。
でも、千葉は枠番のみであった。この開催、電投や一部の場外では車番を発売するにも関わらず、本場では枠番のみ。なんとも異様な姿であった。私など、どうしても本場で車番を打ちたいがために、それまで大嫌いであった携帯電話を申し込んだぐらいである(この、「本場から電投」作戦は、当日までに携帯電話が自宅に届かなかったこと、また、電投口座への入金が間に合わなかったという二つの理由のために悲しくも頓挫したのであるが)。
特別を開催するのに、客のニーズに応え切れていない、もしかして、単に売り上げの多さに胡座をかいた競輪場なのではないだろうかという疑念が頭をよぎった。
もう一つの気が乗らない理由として、「大した食い物がないらしい」というものがあった。
人それぞれ意見があるだろうが、私にとっては競輪場の食べ物の食べ比べというのは旅打ちの楽しみのうちの大きな部分を占めている。それが、千葉に関しては「焼きハム」が名物だという。なんや、焼きハムって。かの「けいりんマガジン」に載ったイラストを見ると、本当に串に刺したハムを焼いただけのようだ。こんなものが名物なぐらいだから、あとは大したことがないんだろうなぁ。
とまあ、ぶつぶつ言いながらも現地に到着。さすがに場内の客席は首都圏の競輪場として恥ずかしくない設備を備えている。一般席にもモニターが多数ある等、色々と観戦しやすい工夫がなされていた。
それでも、客が入っていない。こんなに盛り上がっていない特別は初めてだ。
あとで聞いたところによると、千葉本場よりも車番を売っていた立川場外のほうが入場者数が多かったということである。道理で、すいているはずだ。
さて、レースは進む。500バンクだから、筋違いを車券作戦の中心に据えて勝負するが、なかなか当たらない。枠で買っているのだから少しは的中率も上昇しそうなのに、全然当たらない。
考えてみれば、つい半年前まではどこに行っても枠でしか打てなかったのだが、その頃だって特に当たっていたわけじゃないもんなぁ。代用なんて一日に一度あるかどうかといったところだし。
というわけで、結局一度も払い戻しに並ばないまま一日が終わる。
口の回りにこびりついていた焼きハムのケチャップの味だけが思い出として残った。
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