甲子園競輪場


 神戸に来てもう6年以上になる。その間、何度となくこの競輪場に脚を運び、そして、俯きながらとぼとぼと甲子園球場の脇のオケラ街道を歩いたことだろうか。

 元・鳴尾競輪場。そう、戦後唯一の死者を出した騒擾事件『鳴尾騒擾』の舞台がここである。
 手元に詳しい資料がないが、確か、暴徒に向かって警官隊が発砲し、それによって死者が出たはずだ。うーむ、客も警官も荒っぽいのぉ。

 そのイメージを変えようとしたのかどうか知らないが、その後現在の『甲子園』に名前を変えて今に至っている。

 名前の通り、高校野球、そして阪神タイガースのメッカである甲子園球場のすぐそばにある。デーゲームがある日などは、応援団のラッパの音が風に乗って聞こえてくるぐらいだ。

 さて、甲子園競輪場といえば西のメッカと思われがちであろう。99年にはオールスターを開催したぐらいだし。

 でも、その内実は寒いものである。
 大体、十数年ぐらい前は記念競輪を開催できなかった。地元住民との調整がうまくいっていなかったのである。ケイリングランプリの誘致に一度は成功しながら結局開催を断念したこともあるという。
 そして、この夏、とんでもないニュースが飛び込んできた。
 甲子園・西宮両競輪場の主催者である「兵庫県市町競輪事務組合」は、この両競輪場での競輪事業の廃止を検討しているというのである。
 確かに最近、客の入りは目に見えて悪くなっていた。岸和田などの近隣競輪場と同時開催にでもなったら、日曜でも1億5千万円ぐらいしか売れなくなってきている。しかもこの両競輪場は民間施設の借り上げだから、余計に経費がかかるわけである。既に施行者側としてはいかにうまく撤退できるかばかりを考えているようで、去年の甲子園オールスターのあとは施設改善などが全くストップしている。

 なんとも悲しい話である。
 でも、自業自得かなぁ、と思っている。

 今さら、中央競馬との関係を持ちだしても仕方ない。これは既に10年近く前に決着がついてしまった問題だ。でもそれ以上に最近露骨に客が流出しているのが、競艇である。

 阪神の甲子園駅から普通電車に乗ると5分ほどで「尼崎センタープール前」という駅に着く。ここが尼崎競艇の最寄り駅。電車が駅に着く直前に競艇場全景が見渡せるが、これがまた立派な施設。特観は広々としているし、一般席だって冷暖房完備。いざ駅を降りて競艇場まで歩いていこうとすると、雨風の影響を全く受けない立派な通路が駅から直接つながっている。一旦中に入ったらどこに行くにも雨に濡れないし、でっかいオーロラビジョンは常に分かりやすく情報を提供しているし、食い物は安いし…。
 これでは、競輪に特別な情熱を抱いていない限り、尼崎に客が流れるのは当然だよぉ。

 甲子園だって、決して何もしてこなかったわけではない。
 オールスターを誘致するために、立派な選手宿舎と管理棟ができた。また、地元FM局とタイアップして新規客の獲得に努めてきた。
 でもさあ、なんかピントが外れているんだよ。
 ここ数年してきたことといえば、職員や選手側の設備の改善ばかり。客側の設備の改善といえば、ホーム側の旧特観が無料になったぐらいかなぁ。あれだって、テーブルすらないような特観に今まで千円取っていたというひどいものだったからなぁ。
 結局、バックの新特観以外は何年も手を付けられていないまま。これでは、せっかくFM局とのタイアップで招待されてきた初心者も「こんな汚いところ二度と来るか」って思ってしまうよ。

 4年前に書いた初稿では、私は以下のように書いていた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 場内は北特観席がまともな設備で、後はダメ。まあ1角のスタンドが工事中なので、これが完成すれば少しはまともになるか。そういえば車番発売を実施する際、場内テレビや確定板を一台も増設せず、ヤケに安上がりにシステムを変更させた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 その後場内の状況はほとんど変わらず。しかも工事中であった1角スタンドは上側四分の一が管理部屋になってしまっただけで客への恩恵は全くなし。ひどいものだ。
 競輪の魅力に触れる、以前のところで客を逃している。そしてそれが、こんな悲しい現実を招いてしまったと思うんよ。

 今現在、色んな情報が乱れ飛んでいる。「実は去年できたばかりの西宮新特観はこんな事態になってもサテライトとしてやっていけるようになっている」。あるいは「バンクの組み立てに経費がかかる西宮での開催は取りやめて全て甲子園での開催に集約する」。どれも裏がとれていない情報ばかり。問題が表面化してから在阪スポーツ紙の中には特集連載を持ったところもあるが、これも観測記事ばかり。実際、まだ色々と調整することが多すぎてはっきりとしたところは誰にも分からないのではないだろうか。

 我々客としては静かに推移を見守るしかない。どうにか最悪の結果だけは避けてもらいたいものだが…

 これから来られる方のために場内案内を少々。

 バンクは400バンク。数年前に改修工事を行い、カントが少々きつくなり、捲りが効くようになった。しかし妙に直線でまぎれることが多くなったような気がする。なんか、スジでは全然決まらない。おかげで9月現在甲子園では48レース続けてはずしている。
 スタンドは、バック特観が1500円。記念競輪以外では先着100名の女性は無料サービス。また特観内ではジュース飲み放題。
 特観以外のスタンドは、ホームスタンドが割と見やすい。ただし出走台周辺はは客層がかなり悪く、野次が日本一汚い。というか、野次を飛ばすために来ている客が集まっている。あと、二角、三角、四角スタンドには数少ないモニターがある。三角スタンド上にある小さな食堂は、元女子選手が経営しているらしい。
 食い物は、全般的に大したことがない。三角裏に最近できたたこ焼き屋は割と良いかな。あと、全ての売店で酒類が入手可能。ビールは普通の売店で買うと450円だが、バック特観下とホームスタンド二階にいるおばちゃんから買うと400円になる。
 7R以降に競輪場に行くと、新聞売りのおばちゃん達が中古の新聞を売っていることがある。これは通常価格410円のところが250円。元の持ち主が書き込んだ買い目を眺めて、なぜ元の持ち主は最終レースを待たずに帰る羽目に陥ったのか想像するのも一興。
 新聞は、近畿はどこでもそうなのだが「競輪研究」と「競輪ダービー」が覇権を争っている。7:3で研究が優勢かな。でもダービーは縦書きなので関東から来られた方には良いかも。ちなみに儂は研究派。

 まあ、廃止云々とは別にして、一度足を運ばれることをお勧めする。良くも悪くも、近畿を代表する競輪場なのだから。


アクセス

阪神電車甲子園駅西口から南へ向かって徒歩10分。西口バスターミナルから送迎バスもある。本数多し。 1レースでオケラになっても、ちゃんと駅までバスで送ってくれる。



960923.初稿 000917改稿


競輪場一覧へ
ホームへ