大阪を前夜出発した夜行バスは、福島県・郡山に定刻より30分以上早く着いた。
まだ、早朝だ。街は眠っている。駅前に吉野家を見つけたのでとりあえず朝定食をかき込む。こんなところまで来て吉野家か、とメランコリーな気分になる。雨まで降っていやがる。
平行きの列車まではまだ時間がある。とりあえず町中をうろつくが、こんな時間では何も見るべきものがない。うろついているうちに「郡山場外」を見つけた。早朝前売りでもやっていないかと思ったが、その気配もない。何もかもうまくいかない。
わざわざオールスター競輪を打ちに福島県まで来てしまったのだが、出だしからうまくいっていない。「博打energy」というか何というか、とにかく「やる気」というものが失せたまま平(当時)行きのローカル線に乗り込む。休日のはずなのに高校生がいっぱい乗っていて、途中で連中がドヤドヤと降りるまで30分以上座れない。やっぱりうまくいかない。
ずぶ濡れな気持ちのまま、平駅に着く。無料バスの乗り場が分からない。駅前の本屋で地図を見たら歩けない距離ではなさそうなので、雨の中歩いていく。タクシーを使う気分ではなかった。しかし、どういうわけか競輪場が近づいてくると気分が高揚してくる。電柱とかにも「歓迎・オールスター競輪」と書かれた小旗がくくりつけられている。
さすが、特別競輪だ。私のような重症の競輪病患者にとっては、鬱病を改善する効果まで持っているようだ。高揚しかけた気分で場内にはいる。
実は、東北の競輪場ということで、随分ひなびたところなのではという先入観を抱いていた。しかし、場内に一歩はいると、その先入観が誤っていたことに気づく。考えてみれば、特別を誘致できるぐらいなのだから設備はそれなりに整っているに決まっている。
おうおう、立派な特観席があるやないか。一般席も、結構見やすいぞ。ほう、食い物屋もそこそこ数が揃っている。そりゃ、川崎なんかからみたら随分落ちるが、関西平均レベルよりはだいぶ上やぞ。
と、驚きながら場内を一周する。客の入りも上々だ。「東北にこんなに人がいるなんて」と失礼な驚き方をしたが、考えてみれば上野を8時にでれば十分に1Rに間に合うという立地条件なのだ。そりゃ人も集まるわ。
さて、もう3年も前の話なので、実はあまり細かい印象がここの競輪場に関しては残っていない。でも、鮮明に覚えていることが二つある。
一つは、その日の雨が結局降り止まなかったこと。もう一つは、結局自分の心と経済状態もずぶぬれになりながら競輪場をあとにしたことである。
帰りは、特急と新幹線を乗り継いで帰った。空調完備の特急車内でも、心の湿度が快適な状態を取り戻すことはなかった。
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