玉野競輪場


 日曜の朝。

 早起きしなくていい、休みの日。窓から入ってくる柔らかな光の中で、ついついいつまでもまどろんでいたくなる。
 でも、そんな幸せはいつまでも続かない。
 『ぶ〜ん』と、遠くから軽飛行機の音が近づいてくる。そして、その飛行機はこう言って私を平穏なベッドから引きずり出すのだ。

 「本日、玉野競輪は好評開催中」、と。

 私は、ここで競輪を覚えた。既に近畿に来て打っている期間の方が長いが、未だに自分にとっての心のホームバンクはこの玉野だと思う。記録を見たら、去年一年で打った回数は30分で行ける甲子園よりも3時間かかる玉野の方が多かったりするし。

 いい競輪場です。
 目の前は、瀬戸内の多島美。振り返れば、山。場内にはちょっとした散策コースがあって、藤棚で涼むも良し、春には桜が満開だし。競輪場をでたらすぐに海浜公園があるし。ええ、観光気分で来るには結構お勧めですよ。目の前にリゾートホテルがあるし。

 場内も、良くできている。巧妙に屋根が配置され、一度場内に入ってしまえばどこへ行くにも雨に濡れることはない。特観席も建築時期は古いけど、最近内装がきれいになった。席料200円(!)ということを考えたら最高である。モニターの数も多く、場外の時は中継用とオッズ用と分けてくれている(場外で勝利者インタビューを見られるのは、私の知る限りではここだけである)。
 一般席もいいよ。
 一角にある屋内一般席は、甲子園の千円旧特観よりもよっぽど設備がいい。モニターの数も、甲子園より多いほど。ホーム一般席も程良い高さ配置されていて、競走状況がよく分かる。それに空いているせいもあって、発走直前に行っても、自分が最も見やすい席に座ることができるのも良い(施行者としては、よくないんだろうな)。このホームスタンド、屋根がないのが惜しい。

 そんな感じのいい競輪場だから、今でもついつい行ってしまう。
 ホームバンクなのだから、当然連対の仕方なども熟知していて、次から次へと当たり車券をゲットしなければならないのだが………

 何だか、悪い思い出の方が多い。
 そりゃ、何回も行っているんだから、いい思い出がないわけじゃない。でも、それ以上に悪い思い出がたくさんあるのだ。

 三宅  伸(岡山64)−小川  巧(岡山57)に多分人生最初で最後の千枚一点勝負して(儂の生活水準からすると、これは大変なことなんよ)一着三着になって膝から崩れ落ちたり、バイトで稼いだ金が一日にしてたんなる「無価証券」に変じてしまい、その後一月、一把100円のそうめんでしのいだり……
 しかも、去年の秋に車番が導入されたのだが、その後7回行っているにも関わらず一度も勝てていない。よく考えてみれば相性最悪の競輪場なのかもしれない。

 でも、また懲りずに行ってしまうんだろうな。ここには競輪打ちに行っているのじゃなく、街で疲れた心のヒーリングに行っているのかもしれない。


アクセス


 宇野線宇野駅から無料バスで5分。徒歩でも15分ほど。高松競輪非開催日には、宇高国道フェリーの乗り場からもバスが出ている。開催日の朝には岡山駅前両備バスターミナルからもバスが出ているが、こちらは有料。
 駐車場は十分に確保されているので、車で行くのが無難かと思われる。とにかく、JRで行ったら、岡山から1時間以上かかってしまうのです。

96.9.15.初稿 98.4.27 改稿

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