―入門がかなうと今度は見習いという立場になりますね。菊之丞さんはどれくらいの期間でしたか?

 私はひと月半でしたね。
これは人それぞれで、他の師匠は1年とか2年とか見習いさせる方もいます。

―圓菊師匠はあんまり見習い期間を長くお取りにならないんですか。

 早くに寄席に出してやって、寄席の仕事を覚えたほうがいいとか、あと、やっぱり寄席で働いていると仲間がいるから辛いこととか忘れちゃうじゃないですか。だから早く寄席に出してやろうというのが、うちの師匠の方針なんです。
師匠によっては、例えばこんな着物の畳み方では足手まといになるから寄席に出せませんとか、太鼓が叩けないからまだ出しませんとかね。

―着物の畳み方、太鼓の叩き方は見習い期間に習得するのですか?

 そうです。見習いの期間に師匠のおうちで習って、ある程度叩けるように、ある程度畳めるようにします。楽屋に入って即戦力になるようにってことです。

―どなたに教わるんですか?

 たいがい、自分より一つ上の兄弟子さんに習いますね。お弟子がいなければ師匠が直に教えたり、一門の中の若手のところへ、「じゃ、習って来い」って場合もありますし。
うちは前座が途切れないでずーっと代々いましたから、直の上の兄さんに習いました。

―1カ月半くらいでそれをクリアされたんですね。

 まぁまぁまぁ・・・そうですね。早めに畳めるようになって、太鼓もすっと覚えちゃったんで。
でもすごかったですよ。「着物畳んで。1分で畳んで」って兄弟子がストップウォッチで計ってんですよ。着物の畳み方も古今亭、柳家、橘家と種類があるんですよ。

―太鼓は何パターンくらい覚えるんですか?

 落語家の数だけ出囃子がありますから。
それプラス、色物さんのBGM代わりに弾きますから。例えば紙切りで『藤娘』って題をもらうと、お師匠さんが『藤娘』を弾くわけですよ。そうするとそれに合わせて叩かなきゃいけない。

―三味線だけはお師匠さんがいらして、鳴り物は前座さんがなさるんですね。

 ええ。

―見習いさんの時は寄席には全く行かないんですか?

 師匠のカバン持って行くってことはありますけど、実際、その中で働くってことはないです。
師匠の高座の間は舞台の袖で見てて、降りて来たらすぐ着物畳んで、またカバン持って次へ。

―見習いさんは通いが多くなったと聞きますが、今でも師匠のおうちの仕事をするんですか?

 ええ。やってますね。見習いの期間は寄席のことよりも、師匠のおうちのことを覚えることがまず先なんですよ。師匠んちの一日の動きですよね。朝行って、ちょっとお話して、それからまず洗濯機回して、洗濯機回ってる間に味噌汁の出汁を取って、前の晩の洗い物をして、掃除できるところは掃除しちゃって、なんてやってるうちに洗濯機が止まった。よし。じゃ、干そう。出汁が取れた。今日はかぼちゃだから早くから煮ておかないと火が通らない、とかね。

−全部おひとりで?

 私の時は前座4人いましたので、4人で。師匠のとこのごはんは簡単でお魚焼けばいいんで。何か作ったりとかはしない。

―師匠と一緒にいただくんですか?

 みんなで食べます。うちの師匠の方針で、自分が前座の頃には同じものを食べられなかった。残り物ばっかしだった。だから俺が師匠になった時はみんなで同じものを食べようというのがあったらしいです。

−師匠のおうちのお手伝いは前座さんもなさるんですか?

 ええ。前座の期間はずーっと行ってるわけなんです。ですから師匠のうちの掃除を済ませて、寄席へ行く。