BEIJING-ULANBAATAR 2005
レポート(ETAP−3(リタイヤ)〜ダランザドガド)


・8/10 ETAP−3

朝は目覚まし時計のアラーム音で目が覚めました。周りは、まだ真っ暗です。
メカの小川さんを起こしてバイクの様子を聞きます。
マップケースはボルトで留まっててバッチリ。 ヘッドライトはアイドリングなら点灯するがエンジン回転数を上げると球切れ するんだそうです。応急処置としてバッテリーから直接配線を引っ張ってライト が点灯するようにしてくれてました。でもそれだとバッテリーがあがるので、 暗くなったらライトを点灯させるように。と注意をしてくれました。それよか、 ライトが消えていたらレギュレーション上、スタートさせてくれないので、 スモールだけは点灯するようにしてくれていました。スタートの時、山田さんも 渋々承諾してくれました。温情処置です。その時に水分3L持ってるかの確認も。 命に関わる部分なので、こちらは手抜きしてくれません。
ボクの前日順位は31番目でした。スタート順はクラス毎に上位から出すようです。 山田さんの「Go」の合図をしてくれても、この日のスタートもやっぱりゆっくりです。 人が居なくなった辺りから全開デスケド。コマをいくつかめくり、全開で気持ちよく 走ります。両手でハンドルを握れるので本当に全開です。110km/h前後で 走行中、前走者をロックオン!!抜きに掛かろうとした6.3kmポイントで 突然エンジンストップ。

・エンジンストップ
キルスイッチでエンジンを切ったかのような止まり方でした。 WR250Fはヘッドライトを消して走行するとコンピュータがパンクするとの 話を聞いた事があるのでパンクか?と頭をよぎりました。ゴビハイウェイのど真ん 中で停車したのでバイクを道から外れた安全な場所へ押して行きます。その間にも、 沢山のエントラントが通り過ぎて行きます。みんなが気遣って止まらないように 両手を振って怪我では無い事を知らせます。みんなの走行写真を撮ったりもしてたん ですけどね。その中でも、昨日トラブルで遅れをとったガントルガ選手だけは桁違い のスピードで走り去って行きました。鬼神の追い上げ(キレてる走り)・・・かな? 参加者全員が通り過ぎ、静かになった所で自分の車両の復旧に取り掛かります。 燃料は正常に流れているか?問題なし。キックは降りるので焼き付きでもなさそう。 だけどセルが回らない。そこから連続キック・・・・。セルが潰れた時の為に日本 では極力セルを使わずキックで掛けてコツを掴んでいたつもりなのだが、プラグに 火が入る気配が無い。原因は別の所にあるんじゃないか?とカウルを外していると、 町の方からロシア製バイク(2stビッグシングル)に乗ったモンゴル人がやってきました。 最初は1人乗りに見えていたのが、近づいてきて横から見ると4人乗りでした。夫婦と男の子が2人。 バイクの側まで来ると3m位離れた場所で座り込んでボクの作業をじーっと眺めてます。 じーっと見つめられると非常に照れます。言葉が通じないので黙々と作業をしますが エンジンは復活しません。そのうち本部ヘリがこちらへ飛んできました。 両手を広げた状態で腕を静止した状態だと「無事だから降下しなくて良い」との 合図なので、その通り合図を出します。ちなみに腕を上下に振ると緊急事態の合図 なのでヘリは降りてくるそうです。合図を出していたらヘリはあっちの方向へ 飛んで行ったかと思うと引き返してきてホバリングしはじめました。「おやっ」って 思い合図を出し間違えたのかと思いつつデジカメでヘリを撮影すると、ヘリの中から もこちらを撮影してます。カメラマンの治部さんでした。カメラの奥に見える顔は いつも以上に笑っているように見えました。「いい絵が撮れた」時の顔です。その 笑顔を残しつつヘリは飛び去っていきました。そして砂漠のど真ん中には静寂と モンゴル人家族とボクだけが残ります。

・リタイヤ

それから小1時間経った頃、M1(ビッグホーン、メディカル)とZ1(ビッグホーン、 カミオンバレイ.Z3(カマズ、カミオンバレイ)G3(通称ロシアンデリカ)が やってきました。テルさんとムッホが車から出てきてくれて「諦めるのは早い」等々 励まされたのですが、それまでに 最善の策は尽くしたつもりだったのでリタイヤ届けに必要事項を記入しテルさんに 手渡しました。この時点でリタイヤ決定です。そうこうしてるとG3のモンゴル人 スタッフが「自分の車は調子が悪いからこのままウランバートルに帰っても良いか」 と、テルさんに聞いていました。テルさんは「ウランバートルに帰ってもいいから、 このバイク(ボクのWR)を積んで帰ってくれないか」運転手はok。そしたらモン ゴル人スタッフ数人でバイクを持ち上げ車の中に入れようとしたら、バイクの背が 高すぎて入らない。そこで、Fタイヤを外して車の中に押し込んだんですけど150kg 以上ありそうなバイクを数人のモンゴル人スタッフが担いで車の中へ押し込む姿は ボク的には「ありえんの〜」です。怪力の持ち主達です。 積み込みが終わったらボクはテルさんが運転するZ1の後部座席へ乗り込みます。 車が走り出すと妙にハイな気分でした。悲しいとか悔しいとかのマイナスな気分は 微塵にも無かったのが今でも不思議です。後部座席で揺られてると足下にコーラが 沢山置いてあり、テルさんに「飲んでもいいですか?」と聞くと「いいよ」と 快諾してくれたので1本だけ頂きました。実はボク、コーラが苦手だったんですね。 SSERのOVに「カミオンバレイに乗ったらコーラが飲める」と書いていたので 興味半分で飲んだだけなんですけど、絶望的に生温い。でも何故かおいしかったんですね。 オンコースを走っていると、テルさんの衛星携帯に「マシントラブルで1台止まって いるから拾って」と連絡が入ってきました。そこへ行くとKTMが止まっていました。 #8河田さんです。リタイヤ原因はドレンが落ちてオイルが無くなり焼き付いたそうです。 途中、通りかかった車からオイルを分けてもらったけど、やはり息尽きたと言ってました。 #8河田さんのバイクはZ3トラックへ積み込みます。このカマズ、荷台の高さが 1.5m位あるんですね。当然ラダーなんてありません。ヒモを前輪に縛ってバイクを 縦にして引き上げ、あとは後輪を持ち上げて乗せるだけです。モンゴル人スタッフは みんな怪力なのでしょうか?動画で残しておきたいくらい凄い光景でした。 積み込みが終わったら、河田さんはボクの隣に座りました。ボクは左後部座席で河田 さんは右後部座席です。2人でリタイヤ原因等を話ながら走っていると「#32馬場 選手のバイクがオンコース上に置いてあるが人が居ない」との前方を走るM1から 無線連絡が入りました。馬場ちんはヘリに載せられたらしいので、バイクだけを Z3トラックへ積み込みます。KTMやWRなら持ち上げて積み込むのも理解出来る? けど、BMW−GSは重いから無理だろうと思いきや、同じ要領でZ3トラックへ 積み込んでしまいました。とっても怪力な持ち主達&心強いスタッフ達です。 その後もカミオンバレイは走り続け、ボクらは後部座席でうたた寝をしたり、窓の外に 見えるラクダや現地の珍しい動物達を見ながら有り余る時間を楽しんでいました。 夕方も近くなってCP1に到着です。このCPはオフィシャルの近森さんが担当でした。 この時、近森さんが貸与されているGPSのアンテナが壊れていたらしく「GPSのアンテナが 壊れちょってよぉ正確なCPの位置が解らんきぃ貸してくれんろか?」と土佐弁で打診されました。 これ以降GPSを持っていても使わないだろうと思い貸しました。そして、この時、 初めて本部隊と合流出来ないことを告げられました。小川さんや竹田さんに会ってリタイヤ原因を 話したり荷物を持ち出すことが出来ない事を知りました。無理なモノは無理なので、あきらめ て夕食を頂くために近くの村まで移動(数km)します。村に到着する頃は、だいぶん 暗くなっていました。ココでテルさんとはお別れです。カミオンバレイ隊は先を急いで トラブルで止まっているだろうエントラントを追いかけて行きました。

・珍道中

村に着いたら通訳のガンちゃんを紹介されました。若い頃の朝青龍をヤンキーにしたような 顔立ち(ごめんねガンちゃん)です。この時はちょっと怖かった。挨拶もそこそこにココで 腹ごしらえです。頂いた夕食はボーズでした。グーをした位の大きさのボーズを「ほれ食え、 もっと食え」と言わんばかりに出してくれますが、そんなに食べれるモンじゃありません。 がんばって3個食べた んですけど、それ以上はムリです。モンゴル人達はパクパクと食べていました。怪力の源は この辺にあるんでしょうか?日もどっぷりと暮れても村には明かりが灯りません。電柱は あっても停電してるようです。村の灯りといえばボク達日本人が持っていたライトだけでした。 この村で次の町(ダランザドガド)までの足を探すコトになります。バイク2台とボク達 2人を乗せて20万ツグルグだと元締めらしき人が言ってきました。「それは高い」と ガンちゃんが価格交渉をしてくれて最終的に15万ツグルグ(約1万5千円)まで値切って くれました。ありがとうガンちゃん!次の町まで連れて行ってくれるトラックにバイクを 乗せるのも、やっぱりバイクを立てた状態から押し上げてました。この方法がモンゴル ではスタンダードなやり方なのでしょうか?夜の11時頃、さて出発!といった時に 運転手のおっちゃんがおもむろにトラックから降りてボンネットの前方で全身を使って 何かを回しています。なんと手動でエンジンを掛けていました。今の日本ではあり得ない 光景にびっくり。無事?エンジンが掛かり走り出して数百m、突然ライトが消え真っ暗 闇に。「おーモンゴル人はライトを消しても走れるんかぁ」と感心してると (ウソ・びっくりした)何事もなかったかのようにバッテリーを取りに村へ歩いて戻って ました。バッテリーを入れ替え、配線をバチバチいわせながら修理し、再度走りだします。 この時ボクは「土地の人間だし(自分の庭みたいな場所)夜でも星を頼りに隣町まで 走れるんだろう」と勝手に考えていました。実際、近森さん達もこのトラックの後ろをついて 来てたので。ボクらは大船に乗ったつもりで助手席で寝ていました。すると朝の4時頃、 いきなり停止して運転手がガンちゃんに「道に迷った。今、自分が何処にいるか判らない」と 言い始めました。昨夜の安心感は見事に打ち砕かれ途方と絶望感に包まれヒザから砕け落ち そうな気持ちになってしまいました。すると近森さんが「藤井君よぉGPSの使い方覚えてる?」 と聞いてきたので「全然okですよ」と回答。ボクはこの半年間、車にGPSを付けて 練習(迷った時の対処法まで)していたので、ポイントの打ち方やGPS走行のセット 方法も問題なく出来ます。近森さんとダランザドガドの大まかな北緯東経を地図から導き出して ポイントを打ち込んでGPS走行用にセットアップしました。セットアップしたGPSは 近森さんが持ち、近森さんが乗った車を先頭にしてダランザドガドまで向かいます。直線距離で 約260kmでした。今度こそ大船に乗ったつもりで助手席で寝ていたら、朝の8時半頃、 またもやトラックが止まったので目を覚ますと、運転手が平然と「ノーベンゼン(ガソリン 無くなった)」と言いました。近森さん達は?ってジェスチャーで聞いてみると「後ろにいるよ」 ってジェスチャーで返すのでトラックを降りてみると、誰も居ない・・・・この時の風が 吹き抜ける音が無性に寂しかったです(今でも耳に残ってる)そして途方に暮れながら、 車が通りかかるのを待つしかないのかなぁ。とボーッと待ってると河田さんが「バイクの ガソリンを入れたら?」との提案。このトラックはガソリン車だったんだ。と、KTMと BMWのタンクからガソリンを抜き取りトラックへ注ぎ込む為におっちゃんへガソリンを渡すと、 おっちゃんはくわえ煙草。え゛っっっって、それだけはやめてくれぇ〜〜〜。っと煙草を 消させて給油。引火したらどうすんねんっ!合計30Lほど入れたらバイクのタンクは空に なりました。おっちゃんにジェスチャーでダランザドガドまでの距離を聞くと地面に 「70km」と書いてましたがイマイチ信用できません。つーか、この時点ではまったく 信用してません。なのでトラックが動く前に距離計を読んで到着した時の差を読む事にしました。 65km走ったところで、なんと町が見えてきました。ダランザドガドです。おっちゃんは周りの 風景で自分の場所が判るみたいです。町の入口のスタンドまで1km程度の場所で、またもやガス欠。 このトラックの燃費は2L/kmって事になりますね。燃費わるっ。何十年も乗っていたら、 その程度の燃費になるんでしょうか。ワイパーのゴムが無くなっていてワイパーを動かしても ガラスの表面をなぞるだけだったし。大切に乗っている証拠でしょう。

出発〜ETAP−2   ダランザドガド→ウランバートル