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<殿山焼の沿革>殿山焼の歴史はあまりにも古く、その詳細はいまだにつまびらかになっていません。ある研究者の論文によりますと、発祥の地は阪急夙川駅北西の我が家(西宮市殿山町)で、本格的に焼かれるようになった時期は、会社員の父が八重洲技研の電気窯をへそくりで購入した1998年4月ごろというのが通説だそうです。命名者は芦屋市在住の高名な好事家、福田亮氏です。殿山焼の特長は、赤土に青白い釉がほんのりと載り、えもいわれぬ風合いを醸し出している点です。いまや全国の陶器マニアの垂涎の的となっているといっても過言ではありません。(ほとんど過言であると言っても過言ではありません)
白マット釉を施した湯呑み。題は「白雪痛飲」
<土の選び方>土はおもに信楽の赤土2号を使っています。新柳北信や丸二陶料といった陶芸材料店から宅急便で送ってもらっています。20キロあっても送料込みで二千円強です。粗っぽい土なので成形がしやすく乾燥も早いようです。土味を楽しむ作品には向いています。
水差しを成形。蓋を受ける場所の切り取りが難しい
<成形>菊練りという難しい土のこね方は私のような素人にはできないので、適当にこねてください。本当はこんなことではいけません。成形はまず何を作るか、頭でよく思い描いてから。手轆轤(東急ハンズで6千円くらい)に高台分の土を載せて押し付け、竹べらで円く切り取ります。その上に均等なひも状の土を載せていく「ひもづくり」が一般的です。器の内側は早い段階でなめらかにしておきます。高さのある作品の内側はあとで修正がききません。
久留米の袢天を着た窯元が手轆轤を使って高台削り
<高台削り>成形のあと、弓で口縁を切り取り、濡れた鹿皮で口縁を滑らかにします。次にテグスで轆轤から切り取ります。そのまま常温で1日乾燥させます。高台削りは轆轤のど真ん中に作品を置き、余った土で周りを固定します。真ん中に土を置いてそれに載せて固定する手もあります。中心をしっかり見極めて錐状のもので円を二つ描きます。カンナを使って削っていきます。作品の品性はこの高台に表れます。作業の最後には尖ったもので名前を書きます。篆刻で作った自分の印の落款でもよいでしょう。私の場合は必ず息子の名前の一文字をとって「悠」と書きますが、私や息子が後年、相当有名な人物にならない限り、名前を書いたことによって値打ちが下がったりします。素焼きのあと、筆を使って呉須で描いてから焼く方法もあります。

イースター島のモアイ像の鉛筆立てを成形し、自然乾燥(左)。右は600度で素焼きした信楽赤土2号による作品
<乾燥と素焼き>乾燥は1週間くらい日陰でじっくりやります。初めは高台を上にしていたほうがよいでしょう。作品の重さで高台周辺にひびが入る心配がありません。素焼きは作品を重ねても構いません。600度を目指して一時間に100度のペースで上げていきます。設定温度に達したら1日以上かけて冷めるのを待ちます。


左は我が家の電気窯、右は窯の内部。こんがりと焼きあがった作品と運命のご対面!
<釉薬掛けと本焼き>撥釉剤を高台の周辺に塗ったあと、白マット釉をよくかき混ぜてのち作品に掛けます。厚がけ気味でよいでしょう。しばらく待って窯詰めします。作品同士が引っ付かないように。「一焼き、二土、三細工」と言います。何にも増して焼きが大事です。作品の成否は本焼きにかかっています。窯を1230度に設定します。毎時100度のペースで、ゆっくり温度を上げていきます。600度を超えると攻めに入ります。ねらしは40分、計20時間くらいかかります。冷ましの時間は焼きと同じ時間です。150度以下になるまでじっくり待ちます。「冷ましも焼きのうち」と言います。作品は、赤い地肌に白い釉薬がほんのり載ったものに仕上がります。ただし、急に温度を上げたり、釉薬が濃すぎたりすると作品にひびが入ったり、釉薬が流れて棚板に作品ごとくっついてしまったりという悲劇が起こります。有名な織部やトルコ青といったものはこの悲劇が頻発します。殿山焼の窯は小さいのでなかなか温度が上がらず、冷めるのが早いのでこの失敗の繰り返しでした。窯は、電圧を200ボルトにする工事ができるか、場所はあるか、予算はあるかの自問自答の末、安くて小さい100ボルトのものになってしまいました。窯の中は20×20×20センチしかありません。それでも25万円はしました。電気窯なので煙が出ず、部屋の中でも焼けます。ただし酸化焼成だけなので、志野や均窯などはできません。油滴天目釉も比較的成功しました。作品は湯のみ、徳利、ぐいのみ、皿、花器などです。
<転写紙の焼きつけも一法>先日、神戸市の「ユザワヤ」という手芸品専門デパートに家族と行く機会があり、そこで白い磁器のカップ&ソーサー2客(1客600円)を買いました。そしてイチゴ、プルーン、ブドウ、カリンなどフルーツの「転写紙」も1000円で購入しました。帰宅後、転写紙をハサミで切り、水につけてはがしたのち、カップ&ソーサーに好きなように貼りつけました。夜、これを電気窯にいれて約4時間かけて820度で焼成しました。翌日、自然に冷めたところで窯を開けてみると、まるでリチャード・ジノリのイタリアンフルーツのような自家製カップ&ソーサーが出来上がっていました。手軽でおもしろい楽しみ方です。手描きを試したいのなら上絵付け用の「絵の具」も売っています。転写紙などを扱っている株式会社サンアートへはこちらから→サンアート
↓市販の転写紙。小さく切って水につけてから張り付ける
↓自然に冷めたあと、わくわくしながら窯を開けると……。低温なので絵同士が接してさえいなければ互いがくっつき合うことはない。電気代も気になる。この際、窯に詰められるだけ詰める
↓窯から出した完成品

↑転写紙を使ってフルーツの絵を焼きつけたマグカップ。実に上品に出来上がるし、案外、電気代もかからない
↑陶芸教室で焼いてもらった私の作品。藁灰釉の窯変で割れ目が入っている。題は不気味さから「妖怪人間べムのお茶碗」