Q1 国会は何をするところか

国民主権の下では、理論的には、国民が直接、国家の意思決定を行うことになるわけですが、実際には国民が全員どこか一個所に集まって、議論し、決定を行うことはできません。

そこで、現実には、国民の代表者によって構成される代表機関が必要になります。その代表機関が、衆議院と参議院(Q2)とで構成されている国会という国家機関なのです。衆議院も参議院も、それぞれの選挙制度(Q3)を通じて選挙された国会議員によって構成されます。

国民の代表機関である国会は何を行うのか、それを一言で言えば、主権である「国民」になり代わって、国民の生命、自由、平等、生活等に関する重大な事柄を決定するのです。

このことをもっと具体的に言い換えれば、まず第一に、国会は、国民の生活等を規律する社会規範である法律を制定します。国家機関の中で法律を制定する権限を有するのは、国会だけです。ですから国会は「国の唯一の立法機関」と規定されています(憲法第41条)。

もっとも、法律案を提出する権限が内閣にもあると解釈され、法律でも内閣の法案提出権を認めており(内閣法第5条)、実際に成立する法律は国会議員が提出した法案よりも官僚によって作られた法案の方が数も多く、成立率も高いことに注意する必要があります。

第二に、国民の生活に大きく関係する財政に関する統制権を有しています。憲法は、「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて、これを行使しなければならない」と規定しています(第83条)。したがって、予算については内閣が作成しますが、国会がそれについて審議し議決する権限があるのです(第86条)。

国民生活は外国とも関係しています。そこで、第三に、日本が外国との間で条約を締結する場合には、その締結について国会が承認しなければなりません。

条約を締結する権限は内閣にありますが(憲法第73条第3号)、国会の承認がなければ内閣は条約を締結できませんので、国会のこの承認権は条約締結にとって不可欠なものなのです。

第四に、その他の国家機関との関係で幾つか権限があります。内閣との関係では内閣総理大臣の指名権があり(第67条)、衆議院だけですが内閣不信任決議権があります(第69条)。参議院が内閣不信任決議を行っても政治的効果は別にして法的にはなんの効力も持ちませんが、衆議院がこれを行えば、内閣は衆議院を解散しない限り総辞職しなければなりません。

裁判所との関係では弾劾裁判所の設置権があります(第64条)。内閣や裁判所との関係では、衆議院と参議院の各院は、それぞれ国政調査権(Q6)を有しています(第62条)。

第五に、憲法改正の発議権があります。発議権とは、憲法改正案を国民に提案する権限です。憲法改正を決定するのは主権者である国民です。国民投票でその過半数の賛成があれば、憲法改正となりますが、その国民投票に付される改正案を提案する権限は国会にあるのです(第96条)。

問題になるのは、国会で審議して、国民投票に付する憲法改正案を確定する場合に「たたき台」となる原案を提出する権限が国会議員だけではなく、内閣にもあるのか、ということです。法律の場合には内閣にも法案提出権を認めるが通説ですが、憲法改正案の原案の提出権については、これを内閣には認めない立場が有力に説かれています。国の最高法規である憲法を改正するわけですから、国民の代表者である国会議員にしか原案の提出権はないと解釈するべきです。

(上脇博之)