国会は衆議院と参議院によって構成されています(第42条)。両院は相互に独立して意思決定を行い、両院の意思の合致によって原則として国会の意思が決定されるわけですが、幾つかの権限につき衆議院の優越があります。ですから、日本の国会は全く対等ではなく、非対等な側面を有する二院制です。
日本国憲法が「制定」されるとき、かつての貴族院を廃止して一院制にする案がありましたが、両院とも国民の選挙で議員が選考される民選の二院制となりました。
二院制については、「上院は下院と一致するなら無用であり、下院に反対するなら有害である」というような見解が主張され、批判が存在してきました。では、このような批判に従って、一院制にするべきなのでしょうか。
日本の議会制民主主義の成熟度から判断しても、今の二院制で今後も行くべきでしょう。二院制にはそれなりの存在意義があるといえます。そこで、現在の二院制の特徴をもう少し説明しておきましょう。
憲法が認める両院の議員の任期や権限における各特徴としては、まず第一に、衆議院は任期4年で解散の可能性のあり、内閣不信任の決議権があるのに対して、参議院は任期6年で解散はなく、内閣の不信決議には法的効力がないことが挙げられる(憲法第46条、第45条、第69条)。両院議員の兼職の禁止の規定があり(憲法第48条)、参議院議員は3年ごとにその半数が改選されることになっている(憲法第46条)また、衆議院の解散中に緊急の必要があるときには、内閣の求めにより参議院が緊急集会を開いて処理することができる(憲法第54条第2項)が、緊急集会で取られた措置は、次の国会開会後10日以内に衆議院の同意がないと、効力を失う(憲法第54条第3項)。
第二に、法律でも各議院の議員定数は異なり、現在、衆議院は480、参議院は252である(公職選挙法第4条)。選挙制度については、衆議院が小選挙区本位の小選挙区比例代表並立制であり、参議院はこれと類似するものである(Q3)。
第三は、参議院に対する衆議院の優越である。原則として、両院は対等であるが、衆議院が参議院に優越する場合がある(詳細は後述)。
以上のような特徴を有する二院制の存在意義はどこにあるのでしょうか。
まず第一は、審議が深められ、問題の所在を明らかになり、慎重な審議を行うことができる、というメリットがあります。例えば、国民の人権を危険にさらす法律案が、衆議院を通過しても、参議院において審議未了で継続審議になったり、廃案になったりします。一方の院で問題ではないと思われていた法案などが、他方の院で重大な問題が明らかになる場合もあります。国民の側からすると、一方の院で議論しているときに問題のある法律等にすぐに反対運動を展開できなかった場合でも、他方の院で議論されるときに反対運動を高められる可能性を有しています。
第二は、兼職の禁止によって人的な多元性を国会に反映させることができ、選挙区の違いによって空間的多元性を国会に反映させ、任期の違いによって時間的多元性を国会に反映させることができる、というメリットです。したがって、例えば、衆議院も参議院も全く同じ選挙区の単位で選挙するような選挙制度は、二院制の存在意義を損なうものとして好ましくないし、衆議院と参議院の同日選挙も原則として問題があるといえましょう。
このように考えてくると、二院制は、国会内の権力分立制して理解すべきではないでしょうか。とりわけ、民意が反省した選挙制度が採用されず、民意が反映した政治が各院で行われないとなれば、二院制を一院制にしてしまうことは問題であるといえます。
ですから、参議院は要らないということにはらないのです。
ところで、参議院が衆議院のカーボンコピーであるとの批判があります。これは、衆議院が「数の政治」で、参議院が「理の政治」であるという原則が壊れていることや、参議院が衆議院と同じように政党化していることなどに、注目して言われている批判です。
しかし、衆議院が「数の政治」で、参議院が「理の政治」であるという議論(あるいは「権力の衆議院」、「権威の参議院」という議論)については、本当にそのような議論でいいかは疑問です。確かに、せめて参議院だけでも理性的な議論をしてほしいと言う意味で言われているとすれば、その議論を肯定したくなるでしょう。しかし、参議院に限らず衆議院も理性的な議論による政治を行なってもらわなければ困ります。いずれも、国民の代表機関なのですから。
(上脇博之)
参議院に対する衆議院の優越とは、以下のような場合である。
@法律案の議決。原則として法律案は両院で可決したとき法律になるが(憲法第59条第1項)、衆議院で可決したものについて参議院がこれと異なった議決をしたとき(否決したり、あるいは修正して可決したとき)には、衆議院が再び3分の2以上の多数で可決するれば、法律として成立する(第59条第2項)。また、衆議院の可決した法律案を参議院が受け取ってから60日以内に議決しないときには、衆議院は、参議院が否決したものと見なして、再び3分の2以上の多数で可決すれば、法律として成立する(第59条第4項)。
A予算の議決。衆議院が先議権をもつ(第60条第1項)。参議院で衆議院とは異なった議決がなされ両院協議会を開いても意見が一致しないとき、または、参議院が衆議院の議決した予算を受け取ってから30日以内に議決しないときには、衆議院の議決だけで予算が成立する(第60条第2項)。
B条約の承認。予算における議決の優越は、予算の場合(憲法第60条第2項)と同じである(第61条)が、ただし、衆議院の先議権はない。
C内閣総理大臣の指名。両院が異なった指名をした場合で両院協議会を開いても意見が一致しないとき、または、衆議院が指名した議決をしたのち10日以内に参議が指名の議決をしないときには、衆議院の議決を国会の議決とする(憲法第67条第2項)。
D臨時会・特別会の会期延長。法律は、臨時会・特別会の会期の延長につき「両院の議決が一致しないとき、又は参議院が議決しないときは、衆議院の議決した所による」と規定して、衆議院の優越の立場にある(国会法第13条)。
E会計検査官の同意。法律は、会計検査官の任命について、「衆議院が同意して参議院が同意しない場合においては、日本国憲法第67条第2項の場合の例により、衆議院の同意をもって両議院の同意とする」と規定して衆議院の優越の立場にある(会計検査法第4条第2項)。
以上のような、衆議院の優越を憲法や法律は規定しているが、憲法改正の発議(憲法第96条第1項)や皇室財産授受についての議決(憲法第8条)には、衆議院の優越はない。
(上脇博之)