Q3 どんな選挙制度がいいのか

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1994年の「政治改革」の結果として、衆議院議員の選挙制度は、

それまでの「中選挙区制」から、小選挙区本位の小選挙区比例代表並立制へと「改革」されました。

これは小選挙区選挙とブロック制の比例代表選挙の2本立てですが、前者の定数が300であり、後者の定数は180(当初200)しかない(公職選挙法第4条第1項)。その上、重複立候補が認められ比例表名簿の登載順位が同じであれば小選挙区選挙における惜敗率で名簿順位が決定される。したがって、小選挙区選挙の比重が重いので、「比例代表制を付加しただけの小選挙区制」と表現することもできる。

参議院議員の選挙制度は、地方区(定数152)と全国一区の比例区(定数100)である(公職選挙法第4条第2項)。地方区選挙においては、選挙区47のうち定数2の選挙区が24あり、定数4のそれが18ある(公選法第14条、別表第3)。参議院議員が半数改選のため(憲法第46条)、これらはそれぞれ事実上1人区と2人区であり、47のうちこれらが合計で42もあるわけである(ただし、この度、比例代表選挙が拘束名簿式から非拘束名簿式に「改正」されたと同時に、参議院議員の総定数も252から242へと減じられたことに注意していただきたい)。

したがって、地方区選挙は、中選挙区選挙とも言えず、限りなく小選挙区選挙に近いものであり、衆議院議員の選挙制度と類似したものとなっています。

そもそも、選挙制度は最終的には国会で決定されるべきものですが、選挙法が実質的意味での憲法に相当することを考えれば、「全く国会の自由裁量であり、どのようにでも決定できる」と考えるべきではありません。国民の代表機関の構成員を決定するのが選挙制度ですから、どの政党に有利で、どの政党に不利である、とならないように選挙制度は「中立的な」ものでなければなりません。

憲法が要請する原理としては、まず第一に、一人一票原則の原則からも明らかである「投票価値の平等」です。この場合、いわゆる議員定数の不均衡が問題となります。これについては、投票価値に格差が生じざるを得ないとしても、1対1に近づけるように国会は努めなければなりません。格差が2倍を超えればこのような格差は憲法が決して許容しないと解すべきです(Q5)。

現行の、衆議院議員と参議院議員の各選挙制度は、この点で憲法違反と判断することができます。

第二は、国民の意思が国会の構成にできるだけ正確に反映するべきであるというもので、いわゆる社会学的代表の要請と呼ばれるものです。日本のように国民の意思が多元化している政治状況のもとでは、民意を集約しすぎる小選挙区制や小選挙区本位の選挙制度はこの要請に応えるものではありません。特に2000年の総選挙においては、連立与党は、得票率で50%を割っているにもかかわらず、議席占有率では50%を超えて絶対安定多数を確保してしまった。政権交代を容易にするという「政治改革」の謳い文句にも反する結果が生じています。

したがって、学説における多数派の立場は、小選挙区本位の選挙制度を憲法上好ましくないものと評価するでしょう(政治改革オンブズパーソンの声明「民意を正確に反映する選挙制度への改革を! 第42回衆議院議員総選挙の結果の分析を通じて ―」および声明「今優先すべきは政治改革のやり直しだ!! 参議院議員比例代表選挙の非拘束名簿式化を批判して ―」もご参照ください。)。

(上脇博之)

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前述の多数派の立場からさらに一歩踏み込んで、選挙制度についての違憲論を主張することを真剣に検討すべきではないでしょうか。

まず、小選挙区本位の選挙制度を多元化している日本に適用する限りにおいて憲法違反であるとの、いわゆる適用違憲を主張することも考えられて然るべきではないでしょうか。

この点を補強する原理が、私見によると、現代的権力分立制という考え方です。権力分立制は、裁判所を除けば、「国会」対「内閣」という対抗図式が妥当していますが、議会内多数派が内閣を掌握する実態に着目すると、この図式だけで権力分立制を語ることは不十分になります。そこで、「議会内多数派=内閣」対「議会内少数派」という現代的な対立図式を付加して権力分立制を理解する必要があります。この場合、このような対立図式だけではなく、議会内多数派が過剰代表になることを予防する必要があると考えないと、現代的権力分立制の存在意義はほとんどありません。この考え方によりと、議会内多数派の過剰代表によって国会と内閣の二権を掌握することがないよう、選挙制度につき、民意ができるだけ正確に反映するものが憲法上要請されていると考えるべきです。

そうすると、前述のような結果を招き、いったん適用違憲が結論づけられた小選挙区本位の選挙制度は、制度それ自体が憲法違反である。多元化している日本の政治状況においては、このように評価することができるのではないでしょうか(上脇博之『政党国家論と憲法学』信山社・1999年、435−443頁)。

また、私見では、投票価値の平等は、選挙の前だけではなく、選挙のとき、選挙後にも、要求されるものだと考えます。投票価値の平等は、一票の価値の平等ですから、議員定数の不均衡を考える場合には、選挙権を有しない未成年者などを含む人口数ではなく、選挙権を有する有権者数で比較されるべきです。これは選挙前の比較基準ですが、選挙のときや選挙後には、実際に投票した投票者数が基準になるべきです。選挙の前に平等であって、実際に投票したときに自己の一票が他の投票者と同じように平等でなければ平等の意味は形式的なものになってしまいます。

そうなると、事前に選挙区の定数が決まっている方法は、投票を強制しない限り、問題があることになります。というのは、各選挙区で同じ投票率になる保証はどこにもないからです。有権者数のまったく平等な選挙区が二つあったとしても、一方が投票率90%で、他方が投票率45%であれば、格差は2倍になってしまうからです。

このような私見に基づくと、全国一区の単記投票制(かつての全国区)又は比例代表制か、選挙区(ブロック)の定数が投票後に決定される方式か、でなければ、投票者の投票価値の平等は保障されなくなるでしょう。この点からも、小選挙区制は憲法上許容されないのではないでしょうか。

(上脇博之)