声明 「政治改革」の公約を守り、企業・団体献金の全面禁止を!

政治改革オンブズパーソン 代表 小林 武(南山大学総合政策学部教授)

T 声明内容

1994年の「政治改革」後5年が経過しても政治資金規正法の規定および国民への「公約」に反して国会は企業・団体献金の全面的禁止措置を全く講じることなく、企業・団体献金と政党助成との「二重取り」を今後も継続しようとしている。私たち「政治改革オンブズパーソン」は、このことを厳しく批判するものである。 そして、各政党・議員には一刻も早く企業・団体献金を全面的に禁止する措置を講じて政治資金「二重取り」の解消を実現するよう強く要求するものである。

U 声明理由

(1)1994年の「政治改革」の中で、政治腐敗の温床である企業・団体献金については、政治資金規正法の改正を通じて当時、一定の改革が行われ、また将来の改革も約束された。すなわち、@政治家個人に対して直接企業・団体が献金することは禁止された。そして政治家が資金管理団体を一つ指定して、この資金管理団体に対する企業・団体献金を許容したが、これについても法律施行5年後「禁止する措置を講ずる」ことになっていた(附則第9条)。 また、A政党に対する企業・団体献金についても、同5年後「見直しを行う」ことになっており(附則第10条)、これは、一般に、企業・団体献金の全面禁止が法律を通じて「公約」されたものである、と理解されていた。この点は、参議院での「政治改革」関連法案否決から約一週間後の1994年1月29日未明の細川護熙内閣総理大臣と自民党の河野洋平総裁(いずれも当時)との「トップ会談」における「合意」の「主な事項」の中に、「企業・団体献金は5年間に限り公職の候補者が届け出た1つの資金管理団体について年間50万円を限度として認めるものとすること」が含まれていたことからも明らかである(これについては、第128回国会の会期最終日の1月29日に衆議院本会議で両院協議会協議委員議長・市川雄一(当時)より報告されている)。その後、これに対する抵抗もあって実際の法改正では前述の「見直し」規定となったが、これを法律施行5年後の「禁止」と理解したからこそ、国民の中には「政治改革」に期待した者が少なからずあったと思われる。

(2)ところが、周知のように、前国会において資金管理団体に対する企業・団体献金については、紆余曲折の末ようやく禁止の措置がとられたものの(ただし罰則の適用は今年4月1日から。「官報」1999年12月20日号外248号2頁)、政党に対する企業・団体献金については、全く「見直し」の議論が具体的に行われなかった。 これは「公約」違反以外の何物でもない。したがって、「政治改革」における「公約」を実現するためには、政党に対する企業・団体献金についても禁止するしかないのである。 当時、「政治改革」によって企業・団体献金を禁止する気の無かった政党や議員もあっただろうが、しかし、かかる禁止の実現を目指した政党や議員があったからこそ、当時、政治改革関連法が成立したという経緯を、前者の政党・議員はもう一度想起すべきである。

(3)また、資金管理団体に対する企業・団体献金の禁止を徹底しようとすれば、政党に対する企業・団体献金まで禁止するしかないであろう。 というのは、@政党に対する企業・団体献金を許容した状態においては、政党の支部長に政治家を就任させれば、党所属の議員にとっては自己への当該献金は事実上禁止されていないに等しいからからである。A政党の本部に対する企業・団体献金であっても、それが特定の議員への配分を明示して行われてしまえば、政治家個人に対する直接献金と同じ効果を発揮するおそれがあるからである。B政党の支部を通じたものであれ、政党の本部を通じたものであれ、その利益に与かれるのは、何らかの政党に所属する議員・候補者に限定され、無所属の議員・候補者はこの利益に与かれない点で、議員・候補者の間で不平等な取扱いが生ずるからである。 それゆえ、政党に対する企業・団体献金については、資金管理団体に対するそれの禁止を徹底するためにも、全面的に禁止するしかないと言えよう。

(4)さらに、企業・団体献金がこのまま禁止されないにもかかわらず、年間310億円を超える国民の税金によって賄われている「政党助成」がこれまで通り存続することの問題を厳しく指摘せざるを得ない。 法律施行5年後には、政府腐敗の温床になってきた企業・団体献金は禁止され、それに代わって政党助成が政党の主要な財源になると一般に理解されたからこそ、国民の間では「民主主義のコスト」として政党への税金投入を許容した者が少なからずいたのだろう。 ところが、いまだに企業・団体献金を禁止しない上に政党助成についても継続して受け取るというのは、これまた「公約」違反であり、国民・納税者にとって政治資金の「二重取り」として決して許容できるものではない。「リクルート事件」等の政治腐敗を起こしてきた議員を抱える「政党」にとって、このような「二重取り」は、明らかに「政治改革」前よりも財政的に都合の良いもので、「焼け太り」状態である、と言っても過言ではない。 このような状態をこれ以上国民は決して許してはいないだろう。だからこそ、国民の政治不信、政党不信は日々益々増大しているのであり、「焼け太り」となっている「二重取り」は国民の間に無党派層を増殖させる大きな原因の一つになっていると思われる。各政党・議員は、政治不信、政党不信の大きな原因を生み出しているのがこの「二重取り」であることを真摯に受けとめて、一刻も早く「二重取り」の解消に努め、政治不信、政党不信の原因を絶つべきである。

(5)政党が開き直って「二重取り」を続け、もはや政治腐敗の温床を断つ努力をしないというのであれば、衆議院議員の選挙制度を含め「政治改革」そのものを「政治改革」前に戻すしかないことになる。そうしたくない、そうすべきではない、と言うのであれば、少なくとも企業・団体献金については速やかにその全面禁止の法改正を行なうべきである。一刻の猶予も許されない。 各政党・議員は、「6月総選挙」に向けてすでに始動しているようであるが、少なくとも当時の政治改革関連法に賛成した各政党・議員は、政治腐敗の温床を絶つために企業・団体献金を禁止するのか、それとも政治改革を振出に戻すのかにつき、遅くとも衆議院解散・総選挙の前に、自らの立場を明らかにすべきである。

なお、政党助成の問題については、他日、声明を発表する予定である。

2000年4月26日(水) 以上。

◇「憲法研究者による『政治改革オンブズパーソン』結成と声明」『法律時報』72巻7号(2000年6月号)に掲載。

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