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 第5回勉強会報告

 ◆日時:2007年9月2日(日) 13:00〜16:10
 ◆場所:アポロラーニングセンター (ファイザー株式会社研修施設)
  (東京都大田区)
 ◆テーマ:「医療保険制度の基礎を学ぶ」 
  講師: 全国保険医団体連合会 社保・審査担当事務局 前谷 かおる氏
 ◆参加者:30団体、41名 

 ◆内容
 ・主催者あいさつ(水谷実行委員長)
 ・情勢報告(伊藤JPA代表)
 ・講演「医療保険制度の基礎を学ぶ」(前谷かおる氏)
 ・質疑応答
 ・3日の厚労省懇談、政党への要請活動についての説明、その他
 ・全体での意見交換
 
 今回は30団体41名と多くの参加をいただき、特定疾患だけでなくそれぞれの団体が抱える問題や医療制度を中心に幅広い意見交換を行うことができました。また、6団体が初めて参加いただくなど、「勉強会」の活動が大きな広がりをみせていることを実感しました。
 終了後、実行委員から「難病対策を考えるうえで、医療制度全体をとらえながら運動していくことの重要性、共同をひろげながら運動していくことの重要性を感じました。診療報酬制度の改悪など全体をとらえないと、難病対策関係の予算の枠だけみていては「木をみて森をみない」ことになると思いました。」といった感想があったり、初参加された患者団体の方から「今後色々な形で自分達の主張ができることを知り、明るい見通しが開けたように感じた。」といった連絡をいただくなど、今後の「勉強会」の活動に、高い期待が寄せられています。

 

 》》08年度厚労省難病予算概算要求等についての資料

■情勢報告「厚生労働省難病対策予算08年度概算要求について」(伊藤JPA代表)

 厚生労働省全体では2200億円のマナスシーリングがかかっている。その中で特定疾患研究費については20%増、51300万ほどの増額、治療研究事業では32.7%増、806000万ほどの増と増額要求になっている。
  
難治性疾患克服研究事業では、20%増の308000万円(19年度予算:257000万円)
特定疾患治療研究事業では32.7%増の327億円(19年度予算:246億円)

 現状ではそれぞれ123疾病とか45疾病となっているが、それはまだわからない。123疾病で30億なのか、45疾病で327億なのかについてはわからない。もっと多くの疾病を対象にしているのか、削る気になっているのかはわからない。ただ、自立支援医療も2.8%増となっているが育成医療、更生医療は減額になっている。26.9%減、3.9%減と。ただ、精神の通院費が8.3%増で64億円。小児慢性特定疾患は、0.6増の7000万円の増額にとどまっている。これをどう見るかは明日の厚生労働省との話し合いの中で質問していきたい。

 従来から見ればたいへん増額になっている。運動の成果があったようになっているが実際はどうなのか。特定疾患については都道府県の超過負担を解消するにはまったく足りない増額だから、それが全体像を反映しているのかといったさまざまな問題がある。

しっかりとみんなさまざまな勉強を、要請の勉強もしてその上で、私たちが目指す要求は何なのか、本当に難病患者や長期慢性疾患、子どもの難病、さまざまな病気の人たち、家族が安心して暮らすにはどういった制度が望ましいのか、そういった提案をしていくことができるのか、最終的にはそういった目標に向けたこの勉強会も進めていきたいと考えている。

 今日の先生の勉強はもっと時間(日にち)をかける内容であり、2時間でやるのは無茶は話だが、概略だけでも頭にいれていただきたい。

■講演要旨   PDF版(208K)はこちらからどうぞ

参考資料  》》グラフで見るこれからの医療(全国保団連HP)

  テーマ:「医療保険制度の基礎を学ぶ」

 講師:前谷 かおる氏(全国保険医団体連合会 事務局)

今日は医療制度の基礎ということだが、日本の医療保険制度の内容は社会保障制度がどのようになっているか、ということと切り離せない。

   社会保障としての医療                                

・社会保障とは

 社会保障とは「労働者とその家族、国民が、病気やけが、労働災害、身体や精神の障害、妊娠・出産・育児、失業と老齢、そして働き手などの死亡といった社会的事故・原因によって、一時的にせよ、生活がおびやかされたときに、労働者や国民の基本的な社会的権利として、正常な生活をいとなめるように、所得の保障、あるいは現物給付ないしサービスという手段により、国家が措置・保障する制度を言う」。  

こういった概念は、「第2次世界大戦中と戦後にかけて、資本主義の矛盾のふかまるなかで、人間の尊厳・生存権に立脚し、平和と民主主義をもとめる思想のもとに発展してきた。1961年の『国際社会保障憲章』では、賃金労働者、農民、自営業者、学生、働くことのできないすべてのものに、いっさいの社会的責任と災厄に対して、全費用の資本家と国家による負担、管理は労働組合、および受益者代表によるなど、権利としての社会保障の原則、具体的内容を明確にした」。

戦中、戦後を通じて社会保障を拡大していこうという大きな労働組合運動を通じて、世界的に社会保障の考え方が確立していった。そういった歴史があるということを頭に入れていただきたい。社会保障は、基本的人権、特に社会権、生存権的基本権を守るシステム。

 資本主義社会の大原則とその転換

社会保障という考え方は、もともと「けがと弁当は自分もち」といわれ、個人生活は自己責任でやっていくんだという資本主義が持っているすべての責任は自己原則、自己責任で貫かれている。社会保障は、「資本主義に固有の生活原則(自己責任)とは異質な修正形態」。もともとは飲み屋(pub)での労働者同士の助け合いから始った。貧困に陥っている方々は、それはすべて自分の責任なのだと言う考え方が支配的だった。それが貧困の社会的原因説が確立され一大転換した。調査により、貧困の原因が個人の道徳的堕落(浪費、飲酒、博打)にあるのではなく、雇用問題(低賃金、不安定雇用)と境遇(多子、病弱)にあることが解明された。このような現実を背景に社会的原因を自覚した労働者の運動の発展によって、支配層の間に、労働者階級の生活問題は「自由権」を土台とする資本性秩序の維持・存続にとって放置できない重大な社会問題であるという状況認識が作り出された。

 労働者側がこういった事態に陥っているのは自分たちの責任ではなく、社会に原因があるということで労働運動が発展した。そういった状況を見た資本家や支配層が、自らの支配の基盤が脅かされるという危機感が大きくなり、社会保障が必要だと言う状況が必然的に作り出された。社会保障は世界の常識になってきている。

 社会保障の概念整理

社会保障には、所得保障と人的、物的サービス保障がある。所得保障には私たちがこれから問題にしょうとしている社会保険(医療保険)、公的扶助、手当て(児童手当等)がある。人的、物的サービス保障は、社会福祉といった内容で構成されている。

  社会保障の大原則

@必要性原理 A応能負担(能力に応じて負担する) B現物給付。

今の日本の医療制度が現物給付の制度。日本には一部負担はあるが、お医者さんのところに行けば医療が受けられるという制度。

 社会保険の原理

@被保険者本人の拠出が受給資格。私たちがまず拠出するということ。保険技術(統計的リスク管理)が混ざっている。
A強制加入。
B第三者による費用負担。

こういった原理でなりたっている。3番目の第三者による費用負担が特に重要。これは私たち自身の拠出と併せて政府、企業が費用負担することでなりたっている制度である。一般の私的保険と比べてみるとわかるが、私的保険は私たち自身がお金を出し、企業が運営して給付を受けるという形になっていて、拠出するのは自分たちだけになっている。

多くの国が社会保障というものをやっていくときに、社会保険制度を採用している。なぜ多くの国が、国や企業の負担だけでなく本人からも拠出金を取る社会保険制度を採用しているか考えてみる必要がある。私たちは資本主義社会に生きているが、資本主義社会というのは自己責任、自助が基本と言うことになっている。この自己責任、自助と言う考え方を世論の中に組み入れる必要があった。これは生活保護で考えてみるとよくわかる。生活保護による扶助は保険給付よりも何か望ましくないものという感じを抱かせるため、つまり国から恵んでもらっている感じを抱かせ、社会保険はそうではないという位置づけを国としてする必要があった。そして、一部負担金を患者さんからいただくことによって、「あなたにはお金をもらったんですから権利がありますよ」という形に国としてはしたかった。拠出する側の患者さんに誇りをもたせる必要があったから、このような保険制度として運用していると根本では言われている。

 新自由主義のバックラッシュ(反動・逆流)

ただ、こうやって発展してきた社会保険制度のこの反動、逆流が起っている。新自由主義のバックラッシュ(反動、逆流)→レーガノミクス/サッチャリズム・・・1980年代「小さな政府」「自立自助」の強調する政策やその政策に基づく施策。日本では小泉構造改革がかなりこれまであった制度、規制等を壊して市場の拡大、社会保障の切捨てを進めてきたのが現状である。現在、医療の構造改革が進められていて、政府はよく「医療費の適正化」という言葉を使うが、政府の言う適正化とは@患者負担増、A公費負担削減、B公的保険はずしと医療の市場化といった内容で進められている。

国民皆保険制度

日本の医療は国民皆保険制度をとっていて、これは1961年に成立している。一応すべての人に医療が提供できるようになり、患者の医療を受ける権利を拡大してきた。しかし、政府はとくに80年代以降この形骸化を策している。具体的には、社会保障審議会の50年勧告と95年勧告。

社会制度審議会の50年勧告と95年勧告

社会保障制度審議会(1945年厚生省保険局に設置)というのが作られて、2回勧告を出している。1950年の勧告では、憲法25条は、「国民には生存権があり、国家には生活保障の義務があるという意である」と書かれていて、1950年代には日本も社会保障理念が正しく解釈されていた。ところが95年勧告というのが出されて、これは基本的人権としての社会保障を否定し、国と資本家の負担ではなく、国民の相互扶助・自助努力システムに理念を変質させるねらいをもっている。このようにまず考え方の部分が変質してきた。

 □ 医療制度保険のしくみと特徴

3つの法律と保険診療

現状の日本の医療制度のしくみと特徴は、3つの法律@健康保険法、A医師法、B医療法と保険診療で構成されている。

・医療保障の3本柱

医療保障の3本柱は(1)医療保険、A後期高齢者医療制度(06年医療改悪で設置、08年施行)、B公費負担医療。

1)医療保険は、a.職域保険(政府管掌健康保険、健康保険組合等)、b.地域保健(国民健康保険)、c.退職者医療制度(サラリーマンOBとその家族)といった制度になっている。これとは別に(2)高齢者医療制度が来年(08年)からスタートされようとしているが、これまで老人保健法で運営されてきた75歳以上の高齢者の方の医療制度を新たに再編して実施する予定。これは高齢者すべての方から、負担金を取り年金から天引きという内容で窓口負担も取り、内容的に詳細に検討すると、たいへん問題のある制度になっている。(3)公費負担医療は、保険ではカバーできない人を対象にするということで、公衆衛生関係と社会福祉関係に分かれている。特定疾患治療関係は、公衆衛生のほうに入れているように思う。公費負担制度は保険制度になじまないということで、別に分かれて保障するという形で運営されている。

保険給付の内容ということで、法定給付は「医療給付」と「現金給付」に分かれているが、一般に病院で受ける医療は、医療給付の「現物給付」の中の「療養の給付」となっている。

 診療報酬について

診療報酬について。私たちが病院に行って受ける医療は、診療報酬ですべて決められている。その点数、運営の仕組みを診療報酬制度と言っている。診療報酬は国民医療の内容と水準を規定するものであって、医療機関の経営と医療労働者の賃金に影響を及ぼすものでもある。この診療報酬の内容が充実するのかあるいは後退するのかによって、私たちの受ける医療の水準が大きく変わる。

診療報酬は、患者・国民にとっては社会保障としての医療を受ける権利と給付内容を規定するものであり、医療従事者の待遇改善や設備更新に必要な経営の原資でもある。

しかし、最近の診療報酬改定の手法は、法律改定を待たずに診療報酬で実質改定すること、「合理化」「簡素化」の名により包括、定額制を拡大していることが特徴。ここ数年間は、どんどん診療報酬が切り下げられていている。

  日本の医療制度の現状 (資料:グラフで見るこれからの医療(全国保団連HP))

日本の医療 世界から見ると

(1)日本の医療はどのような状況なのでしょう

  医師数の比較  (資料)

人口1000人当たりの医師数の国際比較(2000年)では、ドイツは3.3人、アメリカは2.7人、日本は1.9人でドイツの6割、アメリカの7割、看護師数は、7.8人(日本)でドイツの8割、アメリカの9割という状況になっている。

2)世界的に突出した日本の窓口負担 (資料)

OECD加盟国の基礎的な医療への適用のための公的な制度における患者一部負担額・割合という表を見ていただくと、日本以外のところは患者負担無しや非常に小額な負担だということがわかる。

OECD)加盟国の3分の1が、入院や一般開業医の医療に対する患者の一部負担は無い。そして、一部負担がある場合でも、「定額」や「年額上限つき」が多数派で、「定率」は少数派。また、高齢者、児童、妊産婦、障害者や低所得者などについては、負担を免除している国が多くある。世界的にはこういった状況になっている。

日本の場合は、一般開業医にかかると3割負担、専門医も同じ。薬をもらうと3割負担。入院も3割負担とあらゆる場面で負担がかかってくる。これは窓口負担の話。医療費に対する患者の実行負担率でも他の国に比べて突出している。先進国と比べて非常に高い負担率である。

3)日本の医療に関わる費用を比べてみると (資料)

日本の医療費は高いのか?日本の医療費30兆円は確かに大きい額。しかし、世界第2位の経済大国の国力から比較するとどうか。

国内総生産(GDP)に占める医療費の割合を比較してみると、日本は、OECD2002年の発表では19位、2005年の発表では18位となっており、国際的にみて国力に見合った医療費を出していないことがわかる。

4)日本の医薬品市場のかたち

特に指摘したいのは、大手製薬企業は、不況のなかでも大もうけをしているということ。薬価については私たちの運動もあったが、最近少し見直す動きも出てきたが、依然としてこういった状況は続いている。

高収益をあげる理由のひとつとして、公定価格の薬価が高いことがあげられる。とりわけ「新薬」といわれる薬剤は、薬価が高く設定されているが、そのシェアは大手15社でほぼ100%を占める状況。

この国のかたち世界から見ると

1)日本の社会保障水準を比較してみましょう (資料)

 日本だけが支出を減らす

日本だけが支出を減らすということでは、日本以外の5カ国(アメリカ、フランス、ドイツ、イギリス、スウェーデン)をみると、平均で5.9%から7.8%へと、国庫支出を増やしているのに対し、、日本だけが4.1%から3.4%に、その割合を低下させた。

2)社会保障財源を考えてみましょう (資料)

国によって大きく異なる事業主負担の割合。勤労者の年収に占める保険料率を本人負担分と事業主負担分にわけて、国際比較してみる。

給与から天引きされる本人負担は、スウェーデン7.0%、フランス9.6%、ドイツ21.0%、日本10.9%となっている。一方、事業主負担分は、スウェーデン28.6%、フランス32.0%、ドイツ21.0%、などと日本の11.3%を大きく上回っている。いかに日本の事業主負担が少ないかがわかる。

給付率の変遷では、80年に至るまでは拡大されてきたが、80年を堺に給付が減ってきた。

    特定疾患治療研究事業について

これはみなさんよくご存知だと思うので、基本的な特徴だけ述べる。対象者をみていただくと、国保の被保険者、社会保険等の被保険者又は被扶養者、老人保健法の規定による医療を受けることができる者ということで、ベースは社会保険制度に加入している者となっている。

給付の内容は、現物給付を原則とし認定疾病及びその疾患に付随して発現する傷病に対する医療に対し、医療保険の一部負担、入院時食事療養の標準負担額が給付される。要するに医療保険制度がベースにあって、発生する一部負担金と入院時食事療養の部分について補助するということが特定疾患医療給付事業の内容。だから私たちの受ける医療は、社会保険制度に基づく医療制度に左右される。今、所得に応じて(一部負担金の)限度額が決められているが、たとえば一部負担金が増えれば増えるほど、一応所得によって上限はあるが、負担額が増えれば上限いっぱいまで負担金を取られる。あと医療制度そのものが改悪されていけば、受ける給付の内容に大きく影響が出る。

最近特に問題になったのは、リハビリテーションが一部医療保険から外されて介護保険から給付を受けるという形になり、かなり社会的に大きな問題になったが、そういった影響をもろに受けるという状況になっている。それから療養病床の大幅削減が昨年来計画が進められている。それに伴って診療報酬の中に療養病床基本料というのがあるが、この中に医療区分という規定がある。その3にスモン等が位置づけられているが、これは患者さん方が要求したから。

    今後の運動について

医療保険制度自体を改善するのか後退するのかによって、難病の医療制度があるとは言いつつも、そこに安心してはいられない大きな影響を受けるということ。そのためには私たちの運動を盛りあげて、こういった状況を変えていかなければならない。

保団連として今何を取り組んでいるかということを若干お話しする。

07年)78日に保団連の夏季セミナーを行い、ここで厚生労働省保険局医療課の役人に話をしていただいた。保険局医療課というのは、診療報酬制度改定の中心になっているところ。その話の中で、次期診療報酬の改定について森光氏(役人)は「医療崩壊が進む中で財務省はまだ効率化できると言っている。実務を担当する者としては、非常に厳しいし、引き上げてほしいと思っている」と述べる一方、ただそのためには秋以降12月に至るまでの大きな社会的動きがないと厳しい、医療崩壊を食い止める大運動が広がるかどうかがカギと、事務の担当官からぜひ運動を盛り上げてほしいと言うニュアンスの期待を表明された。

参議院選挙があり民主党が勝利したわけだが、自民党自体が思うような運営ができなくなった状況がある。これは私どもとしても運動を前進させるチャンスだと捉えている。民主党がどのように動くかと言うことに大きく関心を寄せている。

あと、厚労省が(社会保障自然増分)2200億円圧縮するということを08年度概算要求で出した。その内容については案の段階でこれから年末にむけて調整が進むと思うが、これをこのまま実施させるのかどうか、これは今後の運動に大きく関わっているということを認識して、私たちの運動を大いに盛り上げて行きたいと考えている。



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