京都IBD(炎症性腸疾患)友の会は1998年4月、「京都わらび会」(稀少難病者・児と家族の会)に所属していた潰瘍性大腸炎・クローン病患者・家族43名により、患者・家族による患者・家族のための地域の患者会として結成されました。(2005年度の会員は約140名)
京都わらび会は、1981年に結成された稀少難病患者と家族の会です。当初は潰瘍性大腸炎患者は一人だけでしたが、その後少しずつ増えていきました。当時を振り返ると、みんなとにかく「情報がほしい、同じ病気の人はどうしているんだろう」という気持ちでいっぱいでした。そうして1986年に、初めて炎症性腸疾患専門医による医療講演会を開催するなど、増えていく新しい仲間たちと共に地道な患者会活動が続きました。
その後、阪神大震災をきっかけに1996年2月、全国規模の炎症性腸疾患の患者団体連絡組織『IBDネットワーク』が結成されると聞き、私たちも加盟しました。そしてIBDネットワークを通じて、はじめて全国にはいろいろな潰瘍性大腸炎、クローン病の患者会があることを知りました。なかでも専門医のいる療機関に所属する患者会の方たちの豊富な医療知識や会誌を見せていただき、「進んでいる」と驚きました。また、治療面での地域差というか医療機関による格差が大きいこともわかりました。
これは私たちが同じ患者でありながら、医療機関や医師による治療レベルの格差という不利益をこうむっていることであり、患者会はもっと進んだ情報などを当事者に提供する必要があると思いました。これはその後、わらび会からの独立の大きな要因でもあります。
最近はインターネットの発達など情報化社会といわれる中で、患者会の活動も変わりつつあることを実感しています。そして、炎症性腸疾患は、発症の原因ははっきりとわからないまでも、この数十年の間で対症療法などは少しずつ進歩していました。一方、最初は医療費の本人負担が無かった特定疾患制度は1998年に一部負担が導入され、さらに2003年からは所得に応じた負担や軽快者制度が導入されるなど、私たちにとって命の綱である医療制度も徐々に厳しくなりつつあります。
私たち自身も、ある程度体調が安定できるようになると、ただ療養していればいいというわけにはいきません。特に若年発症が多いだけに、就労や結婚など長い人生を生き抜く上でQOL(生活の質)をどのように高めていけばいいのかという現実に直面しています。
こういった中、患者会は何をすればいいのかということになりますが、患者会運営の先輩たちから学んだことを踏まえ、次の3つを基本目的にしています。
@自分の病気について学習し正しく理解すること
まず自分の病気を科学的にしっかり理解していないと病気と闘うことはできません。自分が病気をしっかり理解しているのと理解していないのとでは治療レベルにも差がでます。
また、自分の病気を正しく理解することで、自分が今どの位置にいてどうすればいいのかということもある程度見えてきますから、それによって将来の見通しも立てることができると思います。たとえ今すぐ解決策が無くても、それはそれで覚悟を決めて受け止めることもできます。これには、専門医の講演などから学ぶ方法と先輩患者の体験等から学ぶ方法があります。
A病気に負けないで生きていく力を培うこと
病気と正面から闘っていこうという人、うまく付き合っていこうという人、できるだけ意識しないでかわしていこうと考える人など、その人によってさまざまだといいます。しかしいずれにしろ病気に負けてしまってはどうにもなりません。そして、自分ひとりががんばっているわけではありません。同じような境遇にある人同士で気持ちを分かち合い励ましあうことにより勇気付けられ、病気に負けないで生きていくことが大切だと思います。
そのためには友人や仲間、家族の存在が不可欠です。患者会はこういった仲間たちとの出会いの場でもあります。
B療養環境を整えていくこと
病気についての理解ができ病気に負けないで生きていこうという気概もできた。しかし、社会が私たちの生存を許さないよう環境では生きていくことはできません。特に医療は私たちにとっての生命線です。必要な医療が支払い能力に関係なく受けられなければ、私たち難病患者は生きていくことはできません。病気の原因究明や治療法の確立は、私たちの大きな希望です。
また、難病問題は社会の谷間に置かれているともいわれ、福祉サービスなどのセーフティネットがほとんどありません。
社会や行政に働きかけることにより、私たちが普通の社会人の一人として生きていくための医療、就労などの環境を整えていくことも私たちの自身の大きな役割だと思います。
以上の3つの基本目的を達成するため、私たちの会では次の活動に取り組んでいます。
T 医療講演会、医療相談会の開催
近年はインフォームドコンセント(説明と同意)や患者自身が治療に対して自己決定権を持つ時代といいわれていますが、患者自身に医療知識がないと、本当の意味でのインフォームドコンセントや自己決定はなりたちません。
当会では毎年、IBD(炎症性腸疾患)の専門医や関連する分野の講師をお招きし、講演会を開催することで病気や療養などに関する正しい知識の普及に努めています。
U 交流会、親睦会の開催
最初発病したとき、多くの方が「なぜ自分だけがこんなことに」と悩み、病気になったことで、自分の人間としての価値が低下したような気持ちになるといいます。しかし、悩んでいるのはあなた一人ではありません。個人差はあるもののみんな同じように悩みながらも、それを乗り越えていこうとがんばっています。また、自分と同じような境遇にありながら自分よりすてきな生き方をしている人もいます。そういった人たちを生きた鏡にすることで、自信や目標を持つこともできます。
あまり調子がよくならないけど自分の治療はほんとうにこれでいいのかな?食事療法ってどうすればいいの?一般の人と同じように働くことができるの?など治療や生活上の悩みや心配もあると思います。
当会では会員同士が交流を通じて、情報・気持ち・考え方を分かち合い学習しあいながら克服していただけることを目的に、年数回、患者・家族交流会や会員相互に親睦を高めるため、お腹にやさしいメニューでの食事会・ボウリングなどのレクレーションを開催しています。
V 会誌の発行
会誌は全会員と友の会を結ぶ重要なパイプであり、私たちにとって必要と思われる情報の提供や会員の体験談、活動報告などをお届けしています。
京都IBD友の会会誌『たんぽぽ』を年3回定期発行しています。
W 京都難病団体連絡協議会への加盟及びIBDネットワークへの登録と協力
京都難病連を通じて京都府・市への要望、日本難病・疾病団体協議会(JPA)による『難病対策の早期確立を求める』署名活動や国会請願などの協力をしています。
IBDネットワークを通じて全国のIBD患者会との交流と情報交換や厚生労働省への働きかけに協力しています。
X 地域の保健所や医療機関等との連携
私たちの活動に賛同いただける保健所や医療機関等とも連携を深めながら、地域に根付いた活動を目指しています。
京都市委託事業での「医療講演会・個人相談会」を地域の医療機関と連携して開催しています。保健所主催のIBD疾患に関するイベントにスタッフが助言者として参加させていただくこともあります。
*目の前に立ちはだかる壁を一つひとつ乗り越えながら進んでいきましょう
難病だと告知され目の前が真っ暗になった。病気になり劣等感・孤独感に苦しめられたという経験を持った方も多いのではないでしょうか。人間は自分のよく知らないことに偏見を持つといわれますが、IBDを含め難病患者への偏見や差別は今でも根強くあると感じています。しかし、実はこの偏見と差別には二通りあるようです。一つは、他人から受ける場合、そしてもう一つは自分自身が自分や自分の病気を偏見や差別している場合です。後者は「どうせ俺なんかもうダメなんだ」と思い込んでしまう場合です。
それから自分自身が偏見や差別の被害者でありながら、自分もいつの間にかそれに加担してしまっていることに気付かない場合もあります。「他の難病や障害者にはもっとひどい人がいるが自分はまだましだからよかった」という優越感で自分を満足させようとしたり、「同じ病気のものが集まっても前向きになんかなれない」、「同じ病気でも自分は違うんだ」とついつい思ってしまうのがそういったときです。
一方、最初は苦しい思いをしながらもそれを乗り越えていくことで、「病気になったことで他人の苦しみがわかり、人にやさしくできるようになった」、「今までは、高い地位や金持ちになることが成功者だと思っていたが、人生観が変わった」、「病気になったことで新たな人との出会いができた」と肯定的に受け止める人も多くおられます。
病気になったことは、自分が悪いわけではありません。恥ずかしいことでもありません。私たちが病気に負けないで社会の困難を乗り越えていくためには、何よりも私たち自分自身を尊敬して生きる(心を閉ざす抑圧から解き放ち活き活きと生きる)ということと、自分だけが良ければいいというのではなく、IBD患者全体から難病患者全体、そして社会全体が支えあっていくのだという気持ちが大切ではないでしょうか。それは逆にいえば、私たちが社会から好意的に受け入れられる道でもあります。
当会では学歴、収入、職業による上下関係はありません。社会のしがらみや干渉もありません。一人ひとりが人生の主人公として緩やかな連帯の中で支えあい、一歩一歩自分の生活を積み重ねていけるようにがんばっています。そして、患者会は社会資源のひとつとして、大切な役割を担っています。
2008年6月 京都IBD友の会
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