第1回 納豆 (99.10.18)
菊泉の仕込みスタッフは、4名。南部杜氏・高橋淳と杜氏と同郷の蔵人、そして社員と私です。仕込みは11月中旬から始まりますが、仕込みが始まると食卓から納豆が姿を消します。
朝と昼は、皆で一緒に食事をします。皆納豆が好きですので、しばらくの間好物を絶たなくてはなりません。なぜ、納豆を食べてはいけないのでしょうか。それは、麹造りと大きな関係があります。麹は、蒸米に麹菌が繁殖してできたものです。一方、納豆は大豆にナットウ菌が繁殖してできます。
万が一、蒸米にナットウ菌が繁殖してしまうと大変です。正常な麹にならないばかりでなく、仕込み全体に大きな影響を与えてしまいます。したがって、お酒の仕込み期間は、絶対に納豆を食べてはならないのです。
3月になると、仕込みが終わり、朝食に再び納豆が登場します。私たちは、久しぶりに納豆を見ると、今年の仕込みも無事終わったと安心するのです。
ここで、一句仕込み終え 食卓かこむ おかめ顔
最近、「炭」を使ったさまざまな商品が開発されています。代表的なものは家庭用の浄水器でしょうが、その他にも冷蔵庫の脱臭剤、また炭を配合したシャンプーなども登場しました。
炭にはたくさんの穴があいており、不純物や臭いなどの成分を吸着します。これらの商品は、こうした炭の優れた特徴を利用したものです。
清酒にも炭は使われます。清酒に用いられる活性炭は、粉末状になっているものが多く、これをお酒に加えてろ過します。
しかし、活性炭を多量に使うと、雑味、色、臭いなどとともに、本来酒にあるべき味や香り、色もなくなってしまい、非常に線の細い酒になってしまいます。
「菊泉(きくいずみ)」の商品は、全体的に淡麗で、キレの良い酒が多いのですが、これは決して活性炭を多く使っているからではありません。特に、大吟醸、純米吟醸、吟醸、純米といった高級酒は、活性炭の投入量を極力減らしています。
創業以来、手造りにして、菊のように香り高く、泉のように清らかな酒を造ること。これが菊泉たるゆえんなのです。
菊泉 隅におけない さわやかさ第3回 酒粕(99.12.11)
師走に入り、酒蔵も活気づいてきました。滝澤酒造では、12月11日現在でタンクに5本、仕込みました。最初に仕込んだもろみは、12月20日前後に搾る予定です。いよいよ新酒ができあがります。
さて、もろみを搾る際に、液体である清酒と固体である酒粕に分離されます。酒粕は、それ自体アルコール分が約8%あり、また、カリウム、カルシウム、ビタミンBなどの成分を豊富に含んでいます。
酒粕は、生成されてすぐに出荷されるものと、タンクに入れて踏みこみ熟成させるものがあります。
前者の場合、色は白く、甘酒や粕汁などに用いられます。また、そのまま焼いて、砂糖醤油などをつけて食べても結構いけますよ。
後者の場合は、主に、なら漬け用として使われます。酒粕は、熟成させるとやわらかく、味もまろやかになり、色も白から茶色になります。一見、味噌のようです。なら漬け、おいしいですよね。ごはんのおかずだけでなく、酒のつまみ、お茶などにも合いますよね。
酒粕は、こんなにがんばっているのに「かす」と呼ばれているのですね。でも酒粕さん、名前を気にしないでください。大丈夫、あなたの活躍は十分わかっていますよ。
酒のかす 食卓に咲く 酒の花
2000年、明けましておめでとうございます。
お正月はいかがお過ごしでしたか。正月はいいですよね。朝からお酒を飲むのが許されるのも正月くらいですものね。私も酒は大好きですが、その割にはあまり強くありません。
さて、お酒のアルコール分とは、酒に含まれるエチルアルコールの割合のことですが、お酒を飲むと、アルコールは体内にあるアルコール脱水素酵素らによって、まずアセトアルデヒドに分解されます。
このアセトアルデヒドが、二日酔いや悪酔い、赤ら顔の原因となる物質なのですが、アセトアルデヒドはアルデヒド脱水素酵素(ALDH)によって、無害な酢酸に分解されます。
ALDHは2種類あり、1つはアセトアルデヒドが充分に増えないと働かないタイプ(ALDH1)、もう1つは少量のアセトアルデヒドでも分解するタイプ(ALDH2)です。
一般に日本人の約半数は、ALDH2をもたないか、あっても活性が弱いといわれています。
すぐに顔が赤くなってしまう私は、恐らくALDH2をもっておらず体内にアセトアルデヒドが蓄積しやすいのでしょう。
これから、新年会のシーズンですね。私を含め、アセトアルデヒドがたまらないよう、皆さんも飲みすぎにはくれぐれも注意してください。
新年会 畳に転がる りんご狩り
第5回 酒豪番付(2000.1.24) 1月10日の朝日新聞朝刊に、「“酒豪遺伝子”南北に集中」という記事が掲載されていました。
記事によると、筑波大学の原田勝二助教授らは、前回のコラムで紹介したALDH2(アセトアルデヒド脱水素酵素の1つで、悪酔いのもととなるアセトアルデヒドを次々と分解する)をつくる遺伝子の型に注目しました。
そして、全都道府県別に、酒に強いとされる遺伝子の型(NN型)をもつ人の割合を調べたところ、北海道、東北、九州、沖縄地方に、その遺伝子をもつ人が多いということがわかりました。
下表はその順位を示したものです。
1位 秋田 2位 岩手 2位 鹿児島(同率) 4位 福岡 5位 栃木 6位 埼玉 7位 北海道 7位 沖縄(同率) 9位 熊本 10位 愛媛 逆に、中部、北陸、近畿地方では、NN型をもつ人の割合が少なくなっています。
43位 大阪 44位 岐阜 45位 石川 46位 愛知 47位 三重 ちなみに、東京都は19位です。
NN型をもつ人の割合に地域差が出るのは今のところわかっていませんが、原田助教授は、その原因を縄文人と弥生人との遺伝子型の差と考えています。
同助教授は、現在の日本人は縄文人と弥生人の特徴を合わせもち、酒に強い体質の遺伝子型をもつ人は縄文人に多く、弥生人に少なかったといっています。
つまり、酒に弱い遺伝子型は、弥生時代に海外から近畿、中部に多く移り住んだとされる北方系の住民によってもたらされたのではないかというのです。皆さんは、縄文人ですか、弥生人ですか。
合コンで 出身地を聞き もう一杯
ただし、無理強いはやめましょうね。