やさしい一般外科講座
1.ドレーンについて
- そもそもドレーンはなんのために入れるのか。:ドレーンは先ず体内にたまった血液だのリンパ液の排出のために入れてます。次に何かが漏れてしまった場合、これを吸い出しにかかるために入れます。このドレーンの挿入によって2回目3回目の手術を回避することができるようになりました。
- であるためこのドレーンの観察というのは大変重要な事項になります。なんせ開腹しなくても腹腔内の状態がある程度分かるのですから。
- 腹腔内に限って言いますとドレーンから出てくるものは次のものがあります。
- 消化液;つないだ所(吻合部)の付きが悪く縫い目の間から漏れてくることがあります。縫合不全といいます。出てくるものは一般には茶褐色の悪臭を伴う液体ですが、食道とのつなぎ目だと唾液が出て来ますし、大腸の場合は便が出てきます。(後述)一般に縫合不全を起こした箇所はばい菌がいっぱいなのでもう一度つなぎなおしても直ぐまた漏れると言われています。通常はこのドレーンで消化液を吸引してばい菌の繁殖をおさえ、肉の盛りを待ちます。大体2週間で治ります。
- 胆汁;黄色い少しねっとりした液が出てくればこれだと思って間違いないです。問題は行われた手術で、ただの胆石である場合一般的には胆嚢管の結紮がゆるんだ為かまたは肝臓に切り込んだ為に肝実質の胆管を損傷して胆汁が出ることがあります。胃の手術である場合は吻合部の縫合不全、壊死性胆嚢炎などの可能性が出てきます。あとは胆管空腸吻合や総胆管結石手術の術後にも見られます(むろん膵頭十二指腸切除後も)。胆汁は状況によって緑色になることもあり、緑膿菌感染と間違えることもあります。判断は難しいので色と性状を正確に記載しあとは医師に任せて下さい。
- 膵液;これはなかなか当初分かりません。通常のパターンとしては最初ドレーンからの排出物が少し褐色またはひどいときにはワインカラーになります。その次にここからスライムと表現してますが、どろどろした緑色の排液があります。膵液の活性が(消化酵素の強さ)高いと周辺皮膚が排液のために真っ赤にただれることがあります。ケアとしてはFOY軟膏、亜鉛華軟膏の塗布、ドレーン周囲にバリケアとかデュオアクティブなどの皮膚保護材をはり、場合によってはパウチをつけます。いわゆるドレーン周囲を人工肛門状態にします。外側は皮膚がただれる程度で済みますが、体内側は大変です。膵液によって血管とか結紮の糸だとかが溶けてしまいます。場合によっては仮性動脈瘤を作りそこからの出血で難渋することがあります。ですから外側のただれのみに気を取られず、ドレーンからの出血の有無をよく観察する必要があります。
- 便汁;大腸の手術のあと縫合不全が起きるとこれが出てくることがあります。量が多い場合は緊急手術を行い、一時的な人工肛門を吻合部の口側に作ります。(ダイバーティングコロストミーと呼んでいます。)またこのコロストミーは漏れやすそうな吻合の場合はあらかじめ作ってしまうこともあります。
どの縫合不全でも同じことですが、まず漏れはじめた時点では造影を行いながらじっとドレナージが効くのを待ちます。量が多い場合は持続吸引をかけることもあります。こうして術後約1週間を越すと漏れた箇所周囲は膿瘍腔(キャビティとかヘーレと呼んでます)ができあがります。もうこの時点ではこの腔は限局化されており、周辺にどんどん漏れて汎発性腹膜炎状態にはなりません。たいがいドレーンはこのキャビティ内に入っているはずです。上手くはいっていないときはこの時点でドレーンを動かし、ドレナージがよく効くところに入れ直します。またペンローズドレーンはドレナージ効果が普通の管状のドレーンに比べ悪いため、管状のドレーンに入れ直します。量があまりにも多いときや膵液など消化力の強い液をドレナージするときはサンプチューブなどに入れ替え持続的に吸引します。(通常の管状ドレーンで持続吸引をかけると、壁にくっついてしまってドレナージが悪くなるためです)洗浄もこの時点より開始します。洗浄の液は生食のみとか抗生剤入りの溶液とかイソジンなどの消毒液を薄めたものとかを使います。治りが悪いときは嫌気性のばい菌の関与を疑いオキシドール(酸素を出すため嫌気性菌にとっては住み難い環境になります)を使用することもあります。
次回は胸腔ドレーンについての講義を行います。
