合併症について

外科でも内科でもよく問題になるのはこの合併症の問題です。要するに治療に伴う危険な出来事です。起こらなければ問題ないのですが、ある割合で起こってしまう可能性があるのです。今回はその合併症について不可避なものかどうか検討してみます。

何でも手術でとれるのか?

 事実上手術でとれないものはありません。でもとるとあとは日常生活が送れないとか、死んでしまうということを度外視した場合です。外科ではこの手術をやるといかに患者本人にメリットがあるかということがすぐわかってしまうのです。ある程度これは外科医が判断しますが、患者及び本人からとてもメリットとはならない手術を依頼されることもありますし、外科医自体がこのメリットデメリットを全く理解しておらず、とんでもなく無茶な手術をする場合もあります。手術でとれても直ぐ再発する、またはとてもとっただけのメリットがなさそうな手術は反対して下さい。
 癌の話総集編にも書きましたが、播種や血行性転移があると、いくら目に見えるものをとってもほぼ100%再発します。延命や生活の向上のためにどこまで外科治療を行えるかということが問題なのです。もう半年ももたない人に、たくさんの臓器をとる合併症の危険の高い手術を行う必要があるのでしょうか。

具体的に合併症とは?

 まず術後の出血があります。切るわけですから術後血が止まらないという事態もあり得ます。特に心臓疾患などで血が止まらなくなる薬(一般の病院または医院では血をさらさらにする薬と説明しています。なんというでたらめ)を服用している人はそれだけで手術をしばらく待つ必要が出てきます。薬をやめて血が止まるようになってから手術になるわけです。
 次は術後の肺炎及び肺血栓です。手術のあとは痛みの為もあり痰を出すことがとても難しくなります。また寝たきりになりやすいため、全身の筋力が衰え、痰を出すのに必要な筋肉が衰えやすいという事もあります。これで痰が肺に詰まって肺炎になります。動けないことに伴うもう一つのトラブルは足の静脈に血の塊ができて(足の血液は足の筋肉を動かすことによって心臓まで戻るのですが、動かさないとそこで停滞してしまいます。)さらに肺の血管に飛んで肺血栓を作り呼吸ができなくなるという事です。残念ながら私は肺炎でも血栓症でも患者さんを失った経験があります。どちらもこの合併症について知っていて本人によく注意した上で起こってしまいました。
 手術による外科的な合併症は意外と生命には直接は関わりません。代表的なのは縫ったところがほころんでしまう縫合不全です。これは縫い方の問題も一つはありますが、患者さんの治癒力の問題もあります。縫った部分はその後に肉が盛ってきて初めて治った状態になります。肉が盛ってしまえば縫った糸はもはや不要で、糸を抜いても傷はくっついたままとなります。では肉が盛るのに必要なことはなんでしょうか?
肉が盛ると言うことは傷の部分にタンパク質が運ばれると言うことです。つまり傷の部分に十分な血の流れがないとタンパク質も運ばれず、傷はくっつかなくなります。