わからない生命保険屋さん
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生命保険、たいがいの人が掛けています。その正体は不幸を当たりとする宝くじです。日本に導入された頃、勧誘をしても、そんな縁起の悪いモンには入らない!と断られることが多かったそうです。現在でも縁起が悪いことには変わりないのですが、加入者はあまりそんなことは思わないようです。(でもこういう人たちが退院の日の縁起を担ぐんですからよく判りません。)
医者がこの保険屋さんと接することは滅多にありません。(自分の保険は別ですが)患者さんが持ってきた入院証明などの書類に記入して、患者さんに書類を渡します。患者さんはこれを保険屋に持っていきそこでお金が支払われます。 ところがたまたま書類に不備があったりすると、保険屋さんはリサーチ会社の人間などを間にたてて、医者のところへ乗り込んできます。さてここからが問題です。
先ず医者から保険屋さんへのクレーム:乗り込んでくる保険屋さんや代理人は医学知識があるでしょうか?ありません。素人と同じです。新聞や週刊誌の知識程度でいらっしゃいます。で私ととある代理人との間の事件です。
1.先ずこの代理人はアポも取らずにいきなり病院に来ました。
私「今日は手が空いていたので会えましたけれど本来時間を予約して貰わないと・・・」
代理人「あ、そうでしたか。」
私「今日のご用件は」
代理人「私は南京海上火災の仕事で打留さんの入院証書のことで伺いました。」
私「患者さんの委任状はありますか?」
代理人「あ、ちょっと忘れまして」
子供の使いです。何故かその後二度と来ませんでした。
2.病名が悪性か良性か分からないと訪ねてきた代理人。
私「ご用件は」
代理人「えーとこれがまず患者さんの委任状です。今日の用件はこの腫瘍という病名なんですが、悪性でしょうか良性でしょうか?」
私「これは胃癌ですね。正式には。下に書いてあるとおり肝臓にも肝腫瘍つまり肝転移がありあまり予後が良くないんですね。」
代理人「病名は本人には言ってないんですか?」
私「まあ、あともって6ヶ月くらいですので」
代理人「先生はインフォームドコンセントはしてないんですか。新聞でも病名告知は当たり前だと言われている時代なのに。」
私「いやですから予後が悪いことを本人にわざわざ知らせるのも何ですから」
代理人「それでは困りますねえ。病名はしっかり告知するのが義務ですよ。」
と堂々巡りになり、結局悪性の病名については納得していただいたが、告知義務を果たしていないという彼の考えは変わらずお帰りになった。
私(おまえが同じ状態になったらきっちり告知してやる。後たった6ヶ月なんだよと)
確かに告知を全員にというのは正論ではありますが、まだそれが全員に当てはめられるかどうかは議論がある状態です。例えば今まで一回も病気をしたことが無く、親類縁者にも癌の人はおらず、全く白紙でいる患者さんに、癌の進行のメカニズム、転移の意味、あとこういう治療法があるがあまり効果は期待できない、予後がどのくらい、という説明が簡単に聞き入れられるでしょうか。多分時間をかけて何回も説得すればいいのでしょうが、わかったころには寿命がつきてしまいます。人を見て法を説けと言います。知りたい人は何が何でも医者に説明を求めます。この場合は私は全員告知をしています。本人が知りたがっているわけですから。何となく知りたいけど知りたくない人で家族が告知をやめてくれと医者にいっている場合。患者さんは家族のものに当たり始めます。なんか聞いてるだろうとかカマをかけることから始まって、病名を聞いてこいと家族の人に言いつけます。この場合は本人に覚悟がないので、告知はしません。但し治療方針についての責任は家族の人にいきますので、家族にとっては大変辛い選択になります。例えば抗ガン剤を投与するか否かとか、放射線治療をやるかどうかについてなど全て主治医と家族の相談で決まります。医者にお任せは許されません。
3.病名告知をする保険屋
その人その人で告知の仕方を変えているのですが、わざわざ封までして患者さんに持たせた書類を見て目の前で胆管癌だと告知してしまった保険屋さん。こういう口の軽い人は医療業界には来ないで欲しいのですが。医者の守秘義務はいったい何なのと思わず愚痴ってしまいます。
ついでに医者の守秘義務について説明。基本的に他の人がいる目の前で(守秘義務を負わされていない人という意味です。)本人の病状を話してはならない。日本の病院の外来でこれが守れるような環境の場所というのは果たしてあるんでしょうか?もう一つは同じことなんですが、他の人に患者さんの病状を勝手に喋ってはならない。ということです。これも外来で他の人の病状を聞く人がいるんですね。喋る医者は論外です。また親戚とか称して病棟に電話をかけてくる人、電話ではまわりに話は漏れ漏れです。さらにかけてきた人が本当に親戚かどうかも分かりません。
大げさな、という人もいるでしょう。でもこれは守秘義務というか本人の情報に対するセキュリティを病院は保護しなければならないと言うことなんです。いま盛んに患者情報の開示ということが言われていますが、このセキュリティが守られてこその開示なんです。
開示が叫ばれ始めた頃、患者さんのカルテをベッドサイドにつって置いた病院があったと聞いたことがありますが、これは要するにそのベッドに近づいた人は誰でも見られると言う意味でセキュリティはボロボロなのです。よく話をしてくれて(他の患者さんの話も)愛想のいい先生がいいというこの国の伝統ではこのセキュリティを守るということは至難の業になります。私は他の似た病態の患者さんの話をするときはなるべく本人が特定できなように、例えばずっと昔の人の話とか、性別年齢を一切付けずにとかの形で話しています。
現在健康保険の財政はほとんど破綻しており、医者の手術点数とか看護料とかの労働に対する評価をどんどん切り下げることにより何とかつじつまを合わせてきました。(最近は少しこれに対する評価は上がっています。)しかし今後も高い医療機器や高価な新薬が出続けるためこれの支払いでますます苦しくなるでしょう。これを認めるなとは言いません。認めなければ、医療レベルの低下や作っている企業の景気の悪化をまねきますます泥沼になるからです。ただ安易にこれを認めると膨大なディスポ(使い捨て製品)の為にゴミを増やすことになります。出来ることなら1.オールインワン製品をなるべく採用しない(値段は確かに安いが使わないものが多く、無駄が出やすい)2.ディスポではなくても済むものなら(洗って再使用可能なもの)ディスポではないものを使う。最近腹腔鏡手術でもディスポ製品より何回も使える製品の方が売れ行きがよいようです。3.費用対効果をきっちりと統計として出し、または医学文献から引き、費用に対する効果の悪いものは使用を認めない。例えば猿の腰掛けからとったクレスチン、抗ガン剤としての効果は証明がほとんどなく、保険外にしてアガリクス並みの扱いをした方がよい。(売る方も市販薬にした方が数も出るし値段も自由に設定できる。)止血用のレーザー装置。手術点数には未だにレーザー使用の場合の加算がついてはいるが、実際止血の効果はあまり良くなく、経験的には電気メスにすら劣る。ガン手術のレーザーメスの使用はあまり価値がないので点数表から削る。最近出てきたハーモニックという超音波止血装置については電気メス並みの値段ながら止血効果はそれよりも高いので、加算点数は少なくても良いからどの手術についても認める。
そんなこんなでもとても健康保険の財政では医療費はまかなえません。アメリカで腸閉塞の手術を受けたら請求が100万円で驚いたという記事がありましたが、私が驚いたのは100万くらいはかかるということに気付いていない患者さんの方でした。日本だと健康保険が大半をカバーするためほとんどかからないし、労働力に対する評価が低いため安く済むのです。(同程度の病院でアメリカなら2倍くらいの人員がいます。)で私の提案ですが、まず健康保険負担を引き下げます。例えば4割くらいしか支払わない。(本人6割)今まで通りの本人3割負担との差額は生命保険から強制的に払わせる。本人の収入が極端に低い場合は現行通り医療保護の対象とし全額を健康保険が負担する。要するに生命保険で患者が太るというのは話がおかしいんです。本来生命保険は医療費の支払いのために出来ているはずです。保険の支払いが病院へむいてきてくれるよう誘導できないモンでしょうか?