医師は減っているか?

 厚生労働省の発表ではさほど医師数は減ってないのにあちらこちらで医師不足の話。どこにそのからくりがあるのか。ますます厳しくなっている医師の状況について検証します。

 マスコミが報道している医師というのは二つの物をごちゃごちゃにしていることをまず認識して下さい。医師は一つだべえと思われるかもしれません。しかし現在医師は大きく二つに分かれその生態はまるっきり違っています。
 それは開業医と勤務医です。厚生労働省の発表はふたつの区別無くまるめこんでいます。(むろんこの間に勤務医から開業医になる人もいますので区別は難しいところですが。)一方医師の意見として医師会の意見を採り上げているのがマスコミです。医師会はそもそもが開業医が集まって出来ている物で、勤務医の参加も若干あるものの意見の主体は開業医達のものです。では医師不足といわれているのはどこなんでしょうか?全く不思議なことに報道はこれも医師として扱います。足りないのは実は勤務医なのです。
 小児科、産科で医師がいない地域というのはどういう地域でしょうか?大都市の真ん中?違います。中小の都市や町村です。ここで開業したいという人がいるでしょうか?人口が少ない地域でコストは都会並みにかかる。赤字になってしまいます。さらに開業して重症が来たときはどうしましょう。大都市では大きな総合病院が多数ありたくさんの勤務医が働いています。紹介状一つ、場合によっては夜間など受付もせず、留守番電話に大病院へ行って下さいと入れておくだけでよいのです。小児科の夜間の救急や産科の帝王切開などで主翼を担っているのは勤務医なのです。つまり中小の都市や町村の設立した病院で勤務医が減っているというのが問題の真相です。
 なぜ勤務医が減ってしまうか。勤務医というのは雇われサラリーマンです。銀行員や会社員とかわりません。給料をもらって仕事をするわけです。しかし現状では勤務医は24時間担当患者の全責任を負わねばならず、常にオンコール状態で、救急外来からの患者でも時に要請があり、他に当直や待機の当番が回ってきます。要するに完全なオフは有給休暇以外にはあり得ないのです。(土日もオフにはなりません)これらの大変な仕事の見返りは開業医に比べ遥に低い賃金と増加する当直回数さらに患者からの訴訟の渦です。抗議する方法は全くありません。勤務医による勤務医の団体というのは皆無だからです。開業するしかないのです。こうして実戦部隊の勤務医は減り続けていたのでした。
 むろん開業してからもそういった業務を希望されるお医者さんもいますが、しかし病院としては何らかの事故が起きた場合の責任の所在の問題、トラブル時に誰が助けるのか(開業しているお医者さんでは自分のクリニックがありますから24時間駆けつけるわけにはいきません。)それを明確に出来ないためあまり歓迎はしません。
 余談ですが、三重県で産科医がいないため年収5000万で募集し、市議会が紛糾したという報道がありました。通常に勤務医であれば部長が3人雇えます。しかし開業している先生にとっては自分のクリニックは診療を止めるか減らすしかない、誰の助けもなく手術などのハイリスクな事をこなさねばならない、この金額でも割に合わない仕事だったと思います。
 現在解決策として医師会が地方自治体とタイアップして勤務医の派遣業を始めるらしいのですが、もともと勤務医と開業医では利害は対立しているのです。まさしく噴飯ものです。現在の保険点数(つまり料金表)はかなり医師会に牛耳られていて厚生労働省としては保険で出て行く金を減らすため開業医さんには関係のない難易度の高い手技の料金をかなり低く設定しています。これまでこのHPで報告したように1−2時間で出来る両側の豊胸術が8時間以上かかる食道癌手術の料金と一緒と言うことです。最近まで開業医の方が勤務医より診察料が高く設定されてました。どちらが良いとか悪いとかの問題ではなくこういった利益誘導を、政治家を利用しながら行っている医師会に果たしてまともな勤務医の派遣が出来るのでしょうか?

結論;減りつつある勤務医の確保には労働条件、収入の向上は必須です。しかしもう一つ、現状のように過剰になろうが楽な科へ研修医達が行きたがる傾向にも歯止めを掛ける必要があると思います。これには研修病院を主体とした研修先のマッチアップだけではなく、自分の希望する診療科も後期研修のマッチアップのかたちで全体を制限していくべきと考えます。(大学は文科省管轄なのでこれらを行う権限がありません)さらに全国の医大で女性が多くなりさらに昔のような仕事一筋を掲げる女医さんが減っている(家庭も子供も持ちたい人が増えている)ことも考えに入れるべきでしょう。24時間の病院附属の保育園を病院に義務づけ、厚生労働省が補助をする必要があると思います。(なんで補助せにゃいかんのかと厚生労働省に言われそうですが、それがなければせっかく税金を投入して育てた女医さん達は引きこもってしまい結局投資はまるまる無駄になります。) 
【マッチアップとは何か】お見合いのようなものです。学生が行きたい病院を3つほど志望として出し、病院はそれを選抜するという形です。診療科についても行きたい科3つほど出し、後期研修枠で研修病院がそれを選抜する、駄目なときは他の病院のその診療科へ希望を出すというややこしい作業。現在研修病院のマッチアップは行われていますが、診療科のマッチアップはありません。また研修病院のマッチアップは良いのですが、とても研修には向かない研修医を単純労働のみに使う病院があるので研修病院自体の絞り込みは必要でしょう。