厚生省の願い;いい医者を育てたい。ほんとう?

 このところ厚生省がうるさく言っておる研修医の教育とやらについていかに馬鹿げているか検証してみたいと思います。

 そもそも医者の仕事で大事なものは何でしょう。官僚が言うには研究、教育、診療の3本柱だそうです。で実際教授戦などえらいさんをきめるときの基準は論文の数になることが大変多いようです。この論文というものまず「教育」ではほとんど雑誌に掲載されません。全く無視かたま−にもうえらくなった人が総論を載せるくらいです。診療はどうでしょうか。診療での論文で私たちに一番ありがたいのはたくさんの症例で検討したものかまたはまれな症例または新しい手技についての報告です。後者は症例報告と呼ばれ一般に業績としては低く見られます。前者はそれを出そうとすると多施設での検討が必要となり、現在のおやまの大将的な大学のシステムでは共同研究など夢のまた夢です。要するに手前味噌のレポートしか出てこないというのが実状です。残る研究は・・・動物実験とか細胞培養とかとにかく人間以外のものを相手にしていますので、こちらの都合だけでどんどん進めることができます。余談ですが医学博士号というのはほとんどこの研究での(要するに人間以外のものを相手にした)レポートでとられているのが実状です。別に悪いことではありません。
 さてここまで書くと賢明な読者のみなさんは察していると思うのですが、自分たちを診療している医者が診療とか教育といった面では全く評価がなされていないことに気付くでしょう。つまり下手をすると極端に臨床経験の乏しい医者がトップに立ってしまうことがあるわけです。研究のみで評価がなされているために。
 現在外科系の学会でも確かにこの臨床面での評価をしようと専門医制度、指導医制度などいろいろシステムを考えてはいます。しかしそれを提唱しているのは研究のみで評価されがちな大学のえらい先生たちであることを忘れてはいけません。
 今回厚生省が提唱しているのは2年間のローテート研修を義務づけてしまおうということです。これ自体はかまいません。私の出身大学ではもっとずっと前からローテートをずっと前から実施しており何ら困ることはありません。しかしこれを問題になっている極端に研修医の待遇が悪いところで実施したらどうなるでしょうか。たとえば給料五万円でで働かされている某大学の研修医などたまったもんではないでしょう。地獄がのびるだけですから。さらにバイト禁止です。給料を保証することと厚生省はいってますが、ではいくらなら妥当なのかとかの線は全く引いてません。
 また研修内容も形式的に区割りをしただけです。内科が半年外科系が半年、つぎの2年で精神科などマイナーな科をまわることというのは、医師国家試験の際の受験科目の内容とそっくりです。机上の議論で決めた線引きでいい臨床医ができるわけはありません。第一麻酔科や精神科など人でのただでさえいないところに研修医が大挙して誰が教えられるんでしょうか。研修医にすれば何が教えてもらえるんでしょうか。
 また研修医になってから(国家試験合格してから)しか医者としての教育ができないところにも問題はあると思います。学生は資格がないからと言って実技より講義ばかりではいざ病院へ出たとき全く使いものにならないわけです。この教育に関しては文部省が責任を負ってますが、例のごとく縦割りなので全く厚生省との連携はとれていません。だいたい文部省の目的はいい医師を作ることではないのですからこれも仕方がないわけです。文部省にとってはいい医者よりいい研究者が望ましいというわけです。
 いい医者を作りたい、いい医者に診てもらいたいという医療業界人、患者さん(つまり国民)のニーズに応えるためにはもう文部省にも厚生省にも医学生、研修医の教育に携わらせない、手を出させない、口も出させないことが肝要です。別の団体をこれらのあほ官僚の集まる省庁の上に置いて医学部入学からスタッフドクターになるまでのカリキュラムを総合的につくらっせたほうがいいと思うのです。たわけた学校群制度を作り全国でこけてしまった文部省や、薬害が(エイズに限らずサリドマイドの昔から)全く予防できないどころか国民の健康を害することに熱中している厚生省なんかがこれに関わってもらったらハッキリ言って困るのです、現場にとって。あなた方にとっては机の上のお遊びでこけても自分には跳ね返らないでしょうが、変なカリキュラムを押しつけられた医学生研修医また彼らに診療される患者さんにとっては多大な迷惑がかかるのです。

結論;研修医教育を変えたいならその前の医学生の教育システムも変えなさい。どちらにしろ誤った方針や無能であることで責任をとることのできる団体が医学教育を担当してほしいと思います。このまま研修医や医学生の自らの熱意だけに頼っているととても危険です。