海外のデータ
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現在抗癌剤など使用の可否については海外のデータに基づいて決められております。では海外と国内では成績は同じなのでしょうか?過去に色々でてきた海外データとの差を披露するとともに海外のデータを安易に信じることは大変危険であると警鐘を鳴らしたいと思います。
まずは旧いところで早期胃癌です。これは日本発の疾患です。つい最近までアメリカンファミリー保険は上皮内癌はがんとして認めないという一文を載せてましたが、これは海外での早期胃癌の見方がよく分かる場面です。早期胃癌とは専門的に言いますと粘膜にとどまるか粘膜のすぐしたにとどまる胃癌で、リンパ節転移はあるなしを問わないというのが定義です。しかし海外の病理医はこの病変を癌ではないと判断しました。早期であってもリンパ節に飛ぶわけですから、立派な癌です。このために早期胃癌ならなんでも内視鏡で切除できるというわけにはいかなかったのです。限られた大きさ限られた形態のものだけが切除可能というわけです。この範疇のものは統計的にリンパ節転移が0パーセントです。さすがに最近はこれもがんと認めたらしく海外の論文に早期胃癌という題名がついております。またアメリカンファミリーも以前の一文を消して大腸のポリープ癌は除外するという表現にかわっております。(ついでに言うと海外の保険屋さんは実にこの医学論文をよく読んでおります。日本の保険屋さんは保険点数表だけに固執するため明らかにとんちんかんな話になります。)
次に乳腺です。これについてはかなり反論もあるでしょうが、以前の統計(ただしこのころは5年生存率を採用、現在はその後でも再発することがあるため10年生存率を使っています。)で日本人の胸筋温存の乳房切断術(おっぱいを取る手術です)のあと5年生生存率が8割を超える成績を出しております。さすがにこれは欧米から「うっそー!」という反響がありました。違う病気じゃないかと。しかし今では国内でも海外データをだして乳房温存手術に走っております。悪性度が違う要するに海外ではおっぱいを取ろうが残そうが成績が悪いためあまりかわらない生存率であったというのをそのまま持ってきたわけです。日本人での大きなデータの集積は残念ながらありません。
次はまた旧くなりますが一応最近話題になっているエコノミークラス症候群について。海外ではいぜんからあったんでうすな。しかしその当時日本ではほとんど報告例が無く、海外からは日本の医者は肺血栓の診断もつけられないヤブというありがたい結論を頂きました。しかし私自身で経験したことでも足の血栓症はときどき見かけるのですが、(足が腫れ上がって赤くなる)肺に飛んだというのは知識としては知ってましたが、体験することはありませんでした。最近日本でこの報告が多くなったのは多分食生活の変化によるものと言われています。その通りだと思います。これはその当時ヤブといわれた日本の医師が研究を行い遺伝子的に欧米人より日本人は血栓症を起こしにくいという結論を出していたとのことです。環境というのはばかにできませんね。
消化器癌領域でも近年様々な新薬が紹介されています。しかしこれらが認可される元は海外のデータです。認可はよいのですが、国内のデータは?とMRさんに聞くと少数の例外を除いて必ずありませんの答えが返ってきます。なぜ国内のデータが出ないのでしょうか?国内メーカーは臨床治験をなぜ海外でやるのでしょうか?日本には健康保険制度があります。これはどんな治療でも患者さんの意向で決まるというものです。こういう治験に参加すると治療費がただという患者さん側のモチベーションがあがるようなものがあれば多分日本でも出来るのですが、ほとんど保険でまかなわれている状態ではとても大きな臨床試験など出来ません。
脱線ついでに最近騒がれているタミフルの話をしましょう。厚生労働省の態度はご存じの通り当初突っぱねておき今度は10代では投与を控えるようにというお達しです。現在調査を進めていると報道されていますが、どんなもんでしょうか。多分相変わらず起こってしまったことのみ拾い上げて全処方数で割るという粗雑な分析を行うつもりでしょう。ではその粗雑な分析で何%以上異常が出たら差し止めるべきと考えているのでしょうか。言い換えると厚生労働省は全くタミフル被害について海外でも報告できるような確かなデータを作ろうとはしていないということです。海外で評価されるためには無作為に患者さんを割り付けタミフル投与群と非投与群の間で比較をする必要があるのです。しかも施設によるバイアス(偏り)が出ないためには開業医さんから国立何とかセンターまですべて一緒くたにまとめる必要があるわけです。こんな大変なことを厚生労働省がやるわけがありませんしそんな計画も報道されてはおりません。脱線ついでにバイアスのことを紹介します。以前大阪で行われた調査(報道されました)で胃癌、卵巣癌などについて施設の成績を比較した結果ものすごく差が付いていると非難ごうごうでした。しかし現実早期の人ばかり来る施設はあります。いわゆるがんセンターと言われている病院です。こちらを訪ねてくる患者さんというのは総じて知識が豊富であり普段から検診も受けている人が多いのです。翻ってうちの病院などでは意識消失で神経内科に運ばれた患者さんが死後解剖したら胃癌の末期だったということも珍しくありません。要するに調子が悪かろうが何であろうが放っておく人も存在し、そういった人たちは成績の良いがんセンターなどにはハナからかからないというわけです。結果末期に近い人が行く病院とがんセンターでは成績が違ってきます。これをバイアスといいます。
「あるある」でこのようなごまかしの一端が見えては来ましたが、こういう全く科学に裏付けられていないしかも海外には恥ずかしくてとても出せないというインチキな統計は厚生労働省を筆頭として様々に出されています。これらを防ぐことが出来るのは患者さん自身の意識です。インチキくさいなと思えるようならすかさずデータを出すように医師に依頼すべきです。海外のデータしかないなら国内のデータを出すように更につっこむべきです。今のままの祭祀の一部としての医療なら薬害や医療過誤を未然に防ぐなどとうてい出来ません。