カルテをちゃんと見ろ!
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今回は業界内の人間にうるさいことを言います。医療訴訟に備えて記録の不備がないように、またちょんぼが隠せるように各病院の業界の方様々に努力していると思います。しかし問題は記録することではないのです。問題が起きてくるのはその記録を誰も読んでいないということなのです。血圧、脈拍、血糖値、呼吸などなど基本的なことはカルテに記載されますが、それを見ている人というのが非常に少ない。以下事例を上げて説明します。
まず最初にカルテは医師記録と書いてあるものもありますが、実際はみんなのものです。看護婦さんのものでもあり、薬剤師のものでもあり、医療事務さんのものでもあり、リハビリの先生のものでもあります。要するにそこに誰が書き込んでも良いのです。
まず外科医がカルテで見ていくのは体温の記録かと思います。熱が出るというのはどこぞに感染しているからであり、感染を早く発見するのは外科医の義務です。
事例ですが、ある手術患者さんの家族(他の病院の看護婦さん)が術後約2週間経っている患者さんの傷を見て言いました。「傷が赤いよ。」傷が赤く腫れているのは傷のすぐ下に膿の固まりを持っているからなのです。主治医は全然気がつきません。指摘されて初めて傷をあけに行きました。これだけでも恥ずかしいのですが、同一の医者は点滴の(中心静脈栄養といって心臓の近くまでカテーテルが入っている。)周囲が赤いと再三指摘されているにもかかわらず、熱が出るまでは抜かないとカルテに記載し、しょうがないので放っておいたら、部長に見つかり、手術延期にまでなったという極め付きの人間です。消毒していれば皮下膿瘍は治ると思いこんでいるので論外なんですが。
また他の医者で、術後2週間近く熱が出ているにもかかわらず、全くカルテを見ないために気がつかず、縫合不全を起こしたまま食事をとらせていたというのもあります。
また別の医者ですが、やはり2週間くらい熱が出たままで、「胆嚢炎だ。」で抗生物質をダラダラ使って、一応絶食になったのでまあ良かったのですが、結局再手術になりました。胆嚢は異常なく、「大腸憩室炎だ。」で手術を終えようとするため、「この固まりは何なの?これは吻合部の縫合不全じゃないの?」と聞くと「ドレーンがちゃんと入っている。」と怒りだし、(ドレーンはあらぬ方に入っていたのですが)何とか説得して縫合不全のドレナージをしたこともあります。これはレントゲン写真すら見ていないケースです。この男は私の患者が胆嚢炎疑いで再手術になったとき胆嚢炎でないと分かった瞬間から「縫合不全だ」としつこく繰り返し報復しにきました。(結局縫合不全はなく膵臓の炎症でした。)
肺の手術でも同様のことが起こります。ドレーンからの量を見てドレーンを抜くのですが、少なくなっているにもかかわらず1週間以上ほったらかしなので、カルテに「ドレーン抜去可」と書いて置いたところ、よほど面子をつぶされたのでしょう、私の患者のカルテにまで「ドレーン抜去可」と書き始めました。私はドレーンの量などあたりまえでみてますから余計なお世話なのですが、とにかく仕返しがしたいようです。
まあこれまでよくもこんなカルテを見ないろくでもない医者達とつきあってきたものだと思います。
看護婦さんも同様で、特に受け持ち制になってからひどいのが目に付きます。受け持ち医外の患者のデータはあまり見ようとしないのです。結局申し送り(仕事の引継)が延々かかることになり、日勤の看護婦さんが夜8時まで帰れないと言う状態になります。
大事なことは記録するだけではなく、その記録を見ていくことだと私は思います。いくら記録が優れていても誰も見ていないのでは記録がないのと同じです。
2週間は抜糸するなと大書きしていたにもかかわらず、6日目に糸を抜いてしまう外科医、ドレーンを抜いてはならないと書いたにもかかわらず、平気で抜いてしまう医者。全てカルテからきちんと情報を収集していないために起こったことです。
医療ミスをなくす第1歩はやはりカルテを良く読んでおく事につきます。聞いた話だけで動くとやはりミスが出てくると思います。(でも矛盾するかもしれませんが、口頭での指示が守れない人はカルテに書いてあっても全く見ません。)カルテから十分情報を収集し、さらに患者さんの元に行ってそれを修正する、この繰り返しがなければミスなど容易に起こります。全体像をつかむことがいかに大事か。我が病棟の看護婦さん、今後ともよろしく。