教える方の一言。教わる参考に。

 何度も書いてますが、医学部というところは医者を作りあげるところではありません。管轄している文科省は「医者なんかになっても私らの手柄にはならん。できりゃ研究者になってノーベル賞でも。」とでも思っていることでしょう。結果的に卒業したての諸君が医師免許を持っているということがどうなっているのか。たとえとして最近使ってますが、「路上教習を受けたこともないのに2種免許を取ってすぐに営業に出るタクシードライバー。」学校では点滴をしたこともなければ縫合したこともない、ましてや治療の計画や戦略を立てるなど夢の又夢で、臨床医として必要な物は全て欠落している状態;これが路上教習を受けたことがないということです。まあ卒業してから就職先で路上教習を受けるわけですが、残念ながら教習を専門としている人間は一般病院にはいません。みんな様々な実力を持つタクシードライバーです。営業もしてるわけです。(ただし営業成績に対する歩合給はありません。これを認めるとどのような弊害があるかは又書きます。)
 教わることがへたくそだった私は教えるのも苦手です。若い先生にすぐいらっときてしかりつけることもしばしばです。(もともといらちです) ということで怒らないですむように教える上でのコツを自分なりに記しておこうかと思います。(すぐ忘れてしまうので)

シーズン1:手術にあたって

手術前; 
1.予診の確認;状況のプレゼンテーションをしてもらう。主訴と現病歴、既往歴、通院中の疾患、薬剤での副作用歴。
この中では既往歴、通院歴が良く抜けてます。特に抗凝固薬の服用歴がとれてないと致命的になりかねません。
緊急手術の場合はなかなか全て揃えにくい物ですが、聞き逃さないで欲しいのは最終の食事時間です。
2.術前検査の確認;カルテに所見が書いてあるかどうか確認しています。採血、心電図、胸部レントゲン。
採血では凝固機能のチェックがよく落とされてます。致命的になります。腰椎麻酔での手術だとレントゲンや心電図が盲点になっていることがあります。チェックがなければ前日夕方までに担当の若手に連絡を取ります。
3.手術伝票と必要物品の確認
手術伝票と道具の申し込みがちゃんとされているかどうかチェックします。ここから先のこまごまは私が自分でやってます。(ここからは単なる愚痴なので飛ばしてください。)というのはチューブ類や鉗子類は伝票に書いただけでは出てこないことがあるからです、恥ずかしながら。術前に現場に出掛け「これこれのサイズのチューブと○○鉗子だしてね」と手術室スタッフに直に伝えます。帰ってくる返事は「ない!(中国語で没有メイヨー)」。探すとものはたいがい出てくる。当院メイヨークリニックと申します。(嘘)
4.術前の指示;絶食期間、IVH挿入の有無、内服続行の指示、下剤の指示。書き入れるテンプレートがあるので確認してますが、今ひとつ遅れることあり。今はクリニカルパス(工程表)があるので殆ど指示がなくなり問題ありませんが、少し前まで直腸癌に対して浣腸の指示が出ることがあり慌てて止めてました。腸閉塞気味の患者さんに下剤を出す指示もだいぶ減りました。抗凝固剤中止の指示が守られているかどうかもチェックの必要があります。(ま、これは病棟の薬剤師さんがチェックしてくれてます。)
5.シミュレーション;ここらから外科医らしくなるのですが、病棟で担当の若手を捕まえ、画像を出させます。これを見ながら予定手術の進め方を説明させます。ここが大事ですが、1本道で理想通り手術が進んでしまうことなどそんなにありません。非常に細かいところで想定外のことが起きます。(繰り返しますが、医療ミスをしたってことじゃないので念のため)顔がそれぞれ違うように患者さんの身体はそれぞれ微妙に違うのです。いかにその想定外を術前に拾い対策を立てておくかが手術を安全に行えるかどうかの瀬戸際になります。可能性をいっぱい考え、それぞれに自分自身で否定をかけるまたは対策を考えてある、こんな若手がたくさん存在するような状況にしたいと常に思ってます。
繰り返してますが、「神の手」的なことを覚えることには猛烈に反対してます。アクロバティックな操作をすると私には怒られます。常に紛れのない単純なしかも危険性の低い手技を行うように教えてます。