医師と薬品メーカー、甘い関係

 そろそろ出る頃というわけで今回は医者とMR薬品メーカーとの黒い癒着について・・・、話そうと思ったんですが、近年何にもなくなりましたので彼等の愚痴と私の彼等についての愚痴なんぞ。

 えー正直に言いますと以前はかなりのものだったとのことです。祇園あたりでぱーっとだのどこぞのXXX風呂で貸し切りなんて話も聞きました。もちろん私はそんな派手な接待はいっかいもいっかいも、いーっかいも、受けてません。くそ。
今時になりますとまあ大学の教授あたりを除けばたぶんそんないい話は無いと思います。医者が清廉潔白になったから?ちがいます!そんな派手なことをやると対抗メーカーから刺されるからです。病院関係特にリッチな?医者相手になると近年マスコミは喜んでかき立てるようになりました。(学会だの出張費だの負担してもらえない支出を考えるとあんたがたの給料の方が我々より断然上です。)対抗メーカーのチクリ程おいしい記事はありません。実際収賄での逮捕はほとんど対抗メーカーのチクリが原因になってます。現在我々がもらえるのはボールペン、携帯のストラップ(携帯持ってないんだけど)、タオル1本などほとんど銀行の景品に近いものばかりです。去年はカレンダーすらもらえず銀行のお客以下でした。
そういえば一つだけ銀行でくれないものがありました。医学論文のコピーです。ま、確かに一部300円ほどしますから数部持ってくると収賄になるかもしれません。実際数年前医学論文の検索が社内でできないメーカーさんがチクったため、これすら禁止になっていたことがあります。病院は恐慌状態になり、文献検索ソフトを購入しましたが、論文のコピーは自己負担とのことでした。さぞいっぱいコピーすると思ったんでしょう。論文を読み知識を増やすことは病院のレベル上げにもつながるのになんたるケチ!と憤慨しておりました。でも私が当時いた病院で図書館のそのソフトを使っているのは私以外には一人か二人だったように思います。たぶんコピーを病院負担にしても何ら差し支えなかったと思います。まあ自腹を切って勉強しなさいとこういうことだったのでしょうか。(高価な医学書はすべて自腹でしかも経費にもなりませんが。)それとも勉強なんてしない奴もいっぱいいるからいいじゃんということだったのでしょうか。
えーと何を話していたのか・・。そうそう昔のMRさんのことです。そんな派手な宴会を仕切りますから気の利くことはこの上ない(彼等にとっては屈辱だったと思いますが。)人が多かったように思います。明治さんはカールの新製品を持ってきてくれついでに研修医室で昼寝しておりました。マーケティングも兼ねたすばらしいテクだと思いました。協和発酵さんは宴会になると自社の焼酎を持ってきては半分くらい自分で開けてました。おいしいことをアピールしていたのでしょう。学会が近くなると手ぐすね引いて列車の予約と宿泊の予約を取ってきてくれました。お金も下手をすると受け取ってくれないメーカーさんもありました。(そのメーカーさんが後援なのであたりまえか?)
で最近のMRさんです。昔の生き残りのような人も中にはいますが、大半は今風です。ズラーッと並んでいるだけです。声をかけに来たかと思うと上司から販促されている製品をとにかく宣伝します。あんた人のことちょっとは考えたら。滅多に使わないような製品や患者が不幸にも重症になったときにしか使わない製品を連呼されても困るだけですから!こちらがよく使いそうなものや関心を持ちそうな製品を何で宣伝しにこないの?当然この人たちは学会がいつあるかも知りません。昔と違うこともうひとつ思い出しましたあ。かつては学会発表はスライドだったんですね。手書きの下書きを渡して「明日が予行演習だから何とか間に合わせて!」などと酷いお願いをしたもんでした。不思議というかMRさんの必死のがんばりで(レタリング張りも印刷屋さんで手伝ったらしい)何とかスライドは間に合った上「先生ここはレイアウトがこうしたほうがさえますよ」などとスライドづくりのアドバイスまでいただき、感謝感謝だったものです。今?今はほとんどの学会でパワーポイントOKです。誰も必要ありません。自分以外で作るのは無理です。
最近の研究会でのことです。MOの中にパワーポイントで作った原稿を入れ、後援しているメーカーの人に渡しました。写りません。MOが読み込めないのです。どひゃあっと私は焦りました。開始まであと1時間くらいです。どひゃっと焦ったのはなんと私と発表者のみで、メーカーさんはうつらんなあとか落ち着いております。たぶんスライド明日までなんて頼まれていた昔のMRさんなら一緒に焦ったのでしょうが、世代の差をつくづく感じたもんです。結局病院まで戻りCDに焼き直して帰ってきたところ、昔風のMRさんが閉店間際のコンピューターショップまで走って違うタイプのMOの再生機器を手に入れ再生に成功しておりました。「走るのはおっちゃんだけかあ」とため息が出てしまいました。その演題が手違いで落ちてしまったら自社の恥であるということがわからなくなったのかなと思います。
可哀想な面もあります。さっきのチクリではありませんが、メーカーさん同士はものすごくシェア争いに熱心です。絶対数の少ない薬なのに熱心に売り込んでシェア争いをしております。そのメーカーさんはその薬の経口薬を持っています。薬価も高いし適応症も広い、競合メーカーもないものすごく大きくなるパイを持っているのです。宣伝すればするほど売り上げの絶対値はあがるはずなんですが、会社は売ってこいとは言わない。とても不思議です。努力に見合うような成果が上がらないものの売り込みに必死になるのですから。でこの素直で優しげなしかし無関心なお兄さんが珍しく私のところに頼みに来ました。「来週の研究会是非来てください。お願いします。タクシーチケットも出しますから」チケットはたまにもらうんですが、交通がメチャ便利な所に住んでいるのでほとんど公共交通機関で用は足ります。そっちのプリペイドカードがほしいところです。また当日限りとかで使わないと後は紙屑です。でも待ってました。せっかくのご招待だから。何日経っても現れません。さすがに前日には「約束違うんじゃないの、明日は欠席!」。でその翌週ばたっと顔を合わせたので「チケット無いから行くのやめた。」と嫌みを言いますと、「ぼけてましたあ。ごめんなさい。」というならともかく、何でこの人怒ってるんだと謝りはするものの自分の責任ともあまり思ってないようです。数日後「上司がチケットを持っていくように言いましたので」。最低、上司共々。関西人なら「なめとんなよコラア」とケツまくるところです。こんな約束すら守れない人間が「明日スライド」といわれて間に合うんでしょうか?単純な約束すら間に合わない人間に頼み事の口上を述べさせたのなら、上司が謝りにくるのが普通でしょう。売ってこいと尻をたたくけど下の者の尻がもてないようなら上司失格です。平やり直してください。結局この上司は姿を現しませんでした。
中心静脈栄養というのはみなさんわりと耳にすると思います。しかし最近は風当たりが強いです。NHKで数回取り上げられ、1回はビタミン不足で脳に障害を起こした話、もうひとつは経腸栄養の方がはるかに危険なトラブルが少なくしかも免疫力があがるというものです。ですから最近は大体の病院で切り替えられるものは経腸に替えるため消費量は徐々に落ちてきています。ところが中心静脈栄養で新製品を出してしまった会社があったんですねえ。もう小さくなるしかないパイなのに会社は売り込みに一生懸命です。半分シェアがとれても絶対数はどんどん落ちていきます。売り込みにくるMRさんの可哀想なこと。
今後ネットがもっと普及すれば列車の予約も宿泊の予約もほとんど頼まれることはなくなるでしょう。また文献も病院の図書館システムが充実し、文献が手に入れやすくなればこれも頼まれることが無くなるでしょう。そんな時代になったとき彼等シェア争いのため自社製品の連呼だけやったら、・・・誰も振り向かないでしょう。どんなに世の中が変わってもギブアンドテイクという考え方は変わりそうにありません。何が相手に与えられるか考えること、一方的な宣伝だけではつらくなりますよ。とこれは彼等の上司に言っております。
最後に景気がいつでも良い抗癌剤メーカーさんをいびるときの私のテクを。「日本での治療のデータを持ってらっしゃい。一例報告はだめよ。」日本国内には日本人を対象とした抗癌剤の無作為試験がいくつかの例外(JCOGなど特に食道癌関係)を除いては皆無であることを知った上でのいびりです。苦し紛れに彼等は「ASCOの発表なんですけど」「対象は白人でしょ!日本人はそもそも術後の成績が違うでしょ」と。「食道癌についてのASCOの報告なんですけど・」「腺癌と扁平上皮癌がごっちゃになったようなデータが使えるわけないでしょ」てな具合に。でも本当はこんな話を対等むしろ教師となりその薬の不利な部分も大いに教えてくれることが将来のMRさんの仕事になるような気がします。(実際そういう人もいます。)勉強してね。
結論:そんなに勉強しなきゃいけないんなら医者になった方がいいという貴方。間違いとは言いませんが、その場で勉強することができない人はどこに行っても中途半端です。対等になるくらい勉強が好きならもちろん止めはしませんが。(できる限り関わりを避けている変な医者のかわりにとことん関わらなきゃいけない変な患者が出てくることは請け合いです。)