救急医療その1
えー久々にアップしますが、本日で救急当直は多分人生最後となりました。思えば40過ぎになってまだ一人で救急外来を仕切るなど考えてもいませんでしたが。マスコミはネタが無くなると救急医療24時などと銘打って番組の穴埋めをしています。一生懸命心臓マッサージをする医師、駆け回る看護婦、家族の緊張など確かにそのまま取ってドラマになります。ついでに救えなくて涙を流している新人ナースなどいれば全くマスコミが期待しているその絵になります。確かに私も新人の頃そんな世界を空想していました。またそのころは確かにわりと救急といえる医療をしていたようにも思います。しかし時が移り、段々そんな世界は崩壊していっています。今夜はその実状についてレポートしてみたいと思います。
まず救急とは何時から何時まででしょうか?通常の外来をやっているときは救急車がきても人手はおりますので、あまり通常の外来と変わりありません。保険で言う時間外診療、つまり病院の営業時間が終わってから次の日の営業時間までと言うことになります。つまり人手が通常よりぐっと少ない当直のみで診療を行っている時を救急体制と言うことにします。
で、問題点その1です。まずはお金の問題です。この通常の業務時間の外来では診療費に時間外、深夜、休日などの加算がつき、お値段は約2倍強になります。さらに交通事故の自費診療の場合、さらにその倍くらい請求できるのです。で、これはこれでいいのですが、例えばあなたがスキー場でスノボで転倒して怪我をしたとしましょう。地元に通常は診療所がたいがいおかれており、整形外科の医者もおり、その怪我が手術が必要かどうかまで時間内の診療で見てくれます。(まあ無いスキー場もありますが。)ところがこういう人もいます。とにかく家の近くまで帰ってそこで見てもらう。で延々何時間もかけ地元の病院にやってきます。そこで私などが当直をしているとどうなるか。写真を撮って骨折があるかどうかを判定する必要がありますが、いつもは胃や腸のレントゲンばかり見ている人間に骨の写真を見せてもはっきりした骨折でない限り分かりません。ギプスも普段巻いたことはないので、副木を当てる程度で、お帰り戴いてます。料金はというともう時間外なので診察料だけで5000円以上になりレントゲンを含めると2万円近く払う必要が出てきます。(無論保険を持っていれば自己負担は減りますが)事故ったばかりで診療所にかかれば、半額以下ですむわけです。さらにそこで次の処置、手術が必要とかなら紹介状と写真を持たせてくれます。手術にならないようならギプス固定して近所の医者にかかるよう説明されます。後者の場合時間外を通らずに来ている分だけ圧倒的に医療費は安いのです。自ら時間外にしてしまい、高い金を取られ、専門的な医療を受けられない、(救急の当直ですから)なら踏んだり蹴ったりです。
そんなのは想像の世界と思われる方、私自身の経験を聞いてください。その患者さんは2年以上前に1回だけウチの病院で入院検査を行っています。
ある休日彼はゴルフに出かけました。昼飯のあとあたりから、お腹が痛くなってきました。他の病院で以前胃潰瘍で治療を受けていましたが、カメラがいやなので最近は通院もやめており薬も飲んでません。痛いのに我慢してラウンドを終え(もう夕方です)自分の車に乗り込むと、近くの病院を受診すればいいのにそこから100KM以上離れている1回短期入院しただけの病院へ自分で運転して出かけました。彼にとっては運の悪いことにその病院は救急当番日ではなく、通常の病棟当直医と婦長当直がいるだけでした。ところが婦長は「院長が外来を増やせといっている」のを盾に取り患者さんは引き受けてしまいました。どうなるかというと検査レントゲンの技師をそこから呼ばなければなりません。当直ではなく呼び出し当番なので来るまでに時間がかかります。当直医から連絡を受けたときレントゲンが出来たら呼んでちょうだいと話していたのですが、いつまでたっても連絡は来ない。結局レントゲンや検査が出来たのは来院後2時間後でありそこから手術の準備をしていたので手術が始まったのは来院して3時間以上はたっていました。幸い術後もトラブルはなくまたこちらに来る運転の上でも事故がなかったから良かったようなモノですが、近所でまず診断を受けていれば何ら問題はなかったはずです。また痛いお腹を抱え3時間も待っている必要もなかったはずです。さらについたときには時間外ですから倍くらいのお勘定を請求されたはずです。
オレははらえるからいいもんねーなどとうそぶいたあなた、アウトです。あなたの治療費の大半は保険から出ています。自らの選択ミスでいかにたくさんのお金が保険事務所から病院に払われたか、よーく考えるべきです。自分の命を危険にさらし、わざわざ高い治療を受けて満足でしょうか?
もっと身近な例では、処方箋をもらったけれど薬をもらいに行ったら処方箋薬局が閉まっていたので、救急外来に薬を処方してもらいに来た人(これも通常の倍の医療費がかかります)1週間前から腫れていた足の付け根を救急でわざわざ見せに来る人、しかも土曜日の午前中(ほとんどの開業医さんは土曜日も営業しています。)無駄なカネが保険基金からどんどん流れ、肝腎なモノは引き締めの対象になってたりします。
結局第1だけで長くなりすぎてしまいました。第2以下についてはまた機会を見て書きます。
保険基金及び厚生省は患者さんに「時間外はこんなに高くなるぞ。時間内にやっているところに行けば安くなるんだ。」ということを声を大にしてアピールしていただきたい。基金のカネがないから技術料を安くしてしまう、使える薬を制限してしまう(特に血液、血液製剤は最近しばりが異常にきついです。)のは本末転倒です。