メーカーの態度を斬る


最近あまりうちの若手以外には怒りをぶつけていない(愛の鞭ですが)平和な日々でしたが、先日某メーカーの相変わらずの怠慢な対応に大変腹が立ちました。売り上げ重視なあまり使われる患者さんのことを忘れてしまったメーカーに捧げます。

私がまだ外科医になって数年目のことでした。非常にショッキングな出来事が起きました。
それは術中血が止まらないという事態でした。もちろん当時非力な私の手術ではなく部長の手術で、胃全摘でした。多分脾臓膵臓も合併切除していたと思います。特に大きな血管からの出血もなく順調に進んでおりましたが、術野になぜか血が溜まっていきます。どこかと探すと腹膜の表面のあちこちから少しずつじわじわと出血があります。充分止血をして手術を終了したにもかかわらず、翌日も翌々日もドレーン(排液用の管)からの出血はとまりませんでした。出血のためか腎機能の悪化もあり、休日にひとりで透析器を回しておりました。結局出血は止まらずその患者さんは亡くなりました。20年以上も前のことで当時の常識として特に家族とのトラブルもありませんでした。その患者さんは当時出たての”パ・・”という抗凝固薬を飲んでいました。止め忘れかと思って後で調べましたが、その当時の中止日数は充分満たすだけ薬は止まっていました。しかしこの薬はそれ自体が血小板の凝集抑制(血を固める血球が機能を果たすことを邪魔する)作用があるばかりでなくその代謝産物も同様の効果があることはわかっていました。現在でもその薬は使われていますが、添付文書上は手術などの場合1週間の休薬と書いてあります。しかし現場では常識的に2週間止めてます。上記のようなこの薬で血が止まらない話はあちこちにありみな経験上1週間くらいでは足りないことを知ってます。このメーカーのMR(営業担当)にこのことを何度問いただしても全く誠意のない対応で(相手にしない)以後不信感を持っています。
そこで今回です。他のメーカーさんではまずMRが薬の副作用、服用方法の変更などについてはまだ陰に陽に説明してくれるのですが・・・
某抗菌剤(ク・・・)について最近大きな変更があったようです。(メーカーはまだ説明しないので推測です)それまで一日3回で1錠ずつ飲んでいた抗菌剤を朝一回にして、しかも増量になったそうなのです。知らずに私は今までのオーダーで3錠分三にしたところ薬局から過量投与だと注意されました。なんのことやらわからない私はさんざんごねて困らせましたが、結局薬を変更しました。後で薬剤師に聞いたところ、変更した方法の方が効果があるそうです、とのことです。私も科学者の端くれなので伝聞を信用して使うわけにはいきません。変更するならそれなりにデータを見せて貰わないとなどと考え、近々ここの説明会があるからと期待しておりました。説明ナッシングです。話題にものぼりません。
抗凝固剤については我々が処方するわけではないから説明を省略しましたというのはまだわかる。(でも副作用はこちらが被るわけだからもう少ししっかり説明しろとは当然思いますが)しかし今回の抗菌剤については常識的に外科で使われている薬剤です。DIニュースなど院内の薬局が出すニュースにお任せしていいんでしょうか?MRは何も説明しなくていいんですか?さすがに変更があったんでしょとつっこみましたが、20年前と同様誠意のない対応です。

結論:営業は大事です。売り上げも大事です。自分たちのウリはどんどん説明して頂いて構いません。しかし議員の選挙ではありませんが、連呼するだけで何がウリか全く理解していない、こちらが教えてあげなきゃいけないMRもいっぱい居ます。逆にネガティブなデータもできればどんどん説明してください。以前こあるメーカーさんは血圧の薬の説明などと全く我々に関係なさそうな薬の説明をしてその合併症(これはなかなか我々には理解できない)について詳しく話をしてくれ、拍手喝采でした。(そのメーカーと今回問題になっているメーカーが合併しているのですが)患者さんは他科での薬のトラブルも私らに相談するのです。また他科の薬によるトラブルをこちらで発見することさえあります。ネガティブデータを出すと処方されないと信じているMRさんが居ますが、逆です。処方しちゃいけない場合や処方中の合併症がはっきりしていればしているほど薬は出しやすいのです。いいことばかり言ってくるMRには眉唾を付けているのが常識的な医者の態度です。薬は効けば効くほど両刃の刃になることは医師免許もっていりゃ誰でも知ってます。まあいいことだけいっときゃいいんだよというJR西日本みたいな会社が多いのも問題なんですけど。(ま確かに関係者が生きている間に問題が起こらなきゃ良いわけだけど東海村のバケツでウランも多分そういう考え方が基本にあったんでしょうなあ)