手術のお値段
手術のお値段というのはいったい高いのでしょうか、それとも安いのでしょうか。
医療の点数が0.2%上がったといって世間は騒いでいます。でも本当に日本の医療は高いのでしょうか?
アメリカでは医療は金がかかるものと相場が決まっています。公的な保険がとても少なく殆どいわゆる生命保険から医療費が出ます。ですからかかるコストが利益を含めきちんと計算した上で技術料などが決まります。食道癌で111万円もかかると日本の新聞は書き立てていましたが、これは保健の点数表を元にしていると思います。実際はコストはもっとかかっているはずです。
まず手術自体にかかるコストを考えてみましょう。外科医者が3人と麻酔医が1人、直接介助(メスなんかを渡している看護婦です。)間接介助(外で器械を出したりする看護婦です。)が最低いります。この手術は時間もかかります。早いところでも6時間くらいはかかっているでしょう。準備と後かたづけに2時間づつかかったとして約10時間。点数は約6万点、つまり60万円です。しかし当然これには材料費がかかります。糸が1本で200円から1000円、自動縫合器(ホチキスの親玉です。)が1つ2万から5万、最低でも5個は使います。どう見ても半分以上材料費としてとられるわけです。また手術器具も病院の設備も減価償却があります。どう見ても手元に残る利益は10から20万の間くらい。時給1500円とすると人件費で9万円、殆ど利益はありません。へたをすれば赤字です。
病院は利益を出さなくてイイとおっしゃるかもしれません。でも老朽化した病院を建て直すのに資金はどこから出るのでしょうか。新しい検査機器は買えるのでしょうか。
先の入院費が110万とすると手術で60万が消えますから残り50万です。検査料がとられますので10万が消えるとして残りは40万です。食道の場合入院は短く見積もって60日長ければ80日から100日をこします。平均で80日として入院して3食がついて一日の料金は5000円です。今時どこのホテルに泊まっても3食つけば1万以上になります。個室じゃないからといわれるかもしれませんが、これには日々の回診、看護婦さんの体拭きなど医療的な処置が含まれています。50人の患者さんがいたとして病棟の売り上げは1日あたり25万です。しかし看護婦さんは休みを除いた人数と医者もそのチームの人数がいります。のべで15人の看護婦さんを雇い、医師が6人として時給を1500円としてみます。15人は各8時間働くとして120時間で18万の人件費、医師も同じ時給として48時間で7万2000円、どう見ても赤字です。時間通りに終わるわけはなく、人が重なる部分など入れると人件費はもっとかさみます。(実際は時間外は殆ど病院に踏み倒されていますが。)1500円の時給が安いとは思えません。週5日で6万、4週で24万です。30代の会社員なら社宅などの費用も含めるとこのくらいの収入は多分安い方だと思います。数字が少しアバウトすぎるかもしれませんが、今時床屋でも1時間で3700円取られます。
翻って自費診療をしている美容整形はどうでしょうか。瞼を二重にする手術で10万とられます。これには多分医者が一人と看護婦1人でさらに1時間くらいしかかかりません。また自動吻合器なども使いませんので材料費にもそれほどとられません。半額とられたとして、先ほどの人件費の換算で行くと1時間で4万くらいの利益が上がります。この差は何なんでしょうか。命に全く関わらない方が儲かり、死と裏あわせになっているリスクの高い手術は安いのです。
保険制度は元々が開業医さん向けにできているので、簡単な処置や手術ほど効率よくこなせば儲かる仕組みになっています。難易度の高い手術は天井の料金を低く抑えられているのです。
そこで提言です。生命保険で得たお金の一部を病院に回して下さい。本来アメリカなどでは生命保険の払戻金は病院の支払いに使われるのです。今のままで行くと公立の保険を持っていて入院費の65000円を超す分は払い戻されさらに生命保険でもうけてしまうというパターンができてしまいます。(まあこのような保険行政がこの間の毒入りカレー事件のように働かないで生命保険の金で結構豪勢な生活をするというj事態を生み出しているのですが。)最近映画化された黒い家にはこの極端な形が現れています。要注意病院は実際あります。患者と結託して偽物の診断書を出し、保険金の一部を受け取る医療施設があるのです。
保険制度は戦後のお金がないから治療できずに死んでしまったという中から生まれてきました。しかし現在お金がないといってできない治療はほとんどないといってもイイです。誰もが標準治療を受けられます。日本ほど公的な保険制度で成功した国はないと思いますが、もうそろそろ制度自体が老朽化して巨大な赤字状態になっています。もともと病気して儲かるなんておかしな話なんです。医療に関わる点数はもっと上げて公的保険の負担分を減らし、足りない部分を生命保険から払って貰うというのが当然の策だと思います。生命保険もかけられない人には公的保険がカバーするという現行制度は維持して。