あきらめたらあかん!
(Don't give up it!)

1.はじめに

 あきらめたらあかん!、なんと響きの良い大阪弁であろう。標準語では、「諦めないで!」と訳すのだろうが、迫力がまったく違うので、やはり大阪弁のほうが好きだ。
 「諦めず最後までやり通せば、かならず笑顔の女神様が訪れる!」と、子供の頃に教えられた記憶もあるが、何事にも最後まで挫折することなく、執拗に接することが肝要と考え、今まで歩んできたつもりだ。
 ところで、今回ほど諦めないことの大切さを身に染みたのは初めてであり、これからの人生を有意義に過ごすためにも忘れないよう、あきらめたらあかん!を執筆して公開することしにした。


2.舞台になるのは


 経済産業省の提示を受けて、情報処理技術者試験センター(JITEC)が毎年春と秋に実施する、初級システムアドミニストレータ試験(以降は初級シスアド試験と略す)がある。ここで舞台になるのは、10月21日に実施された平成13年秋期試験である。

 情報処理技術者試験には、現在のところ13の試験が存在するが、大別すると情報システムの「開発運用側」と「利用側」に別けられ、初級シスアド試験は後者の「利用側」の入り口に相当する。合格率が比較的高いことと、基本情報技術者試験(旧第2種情報処理技術者試験)のような専門的なプログラミング能力を問わないことから、比較的手軽に受験できるので、情報処理技術者の登竜門とも言われている。
 とは言えど、国家試験に準じる試験だけあって、合格率は約33%前後と3人に1人の狭き門でもある。合格点は公開されてないが(正答すら未公開)、ここ数年の問題の難易度においては、午前/午後試験の正答率が共に70%が合格ラインとされている。

 試験問題は、「企業において、情報技術に関する一定の知識・技能を持ち、部門内又はグループ内の情報化をエンドユーザーの立場から推進する者」として、十分なスキルを持ち備えているかを問われる。また、午前と午後の試験に分かれていて、午前は基礎知識、午後は基礎知識の応用力を問う問題が出題される。
 一般に難しいと言われているのは午後問題で、午前問題は暗記で答えられるのも多いが、午後問題は知識を組み合わせたロジカルな解法が要求される。また、どちらも時間との格闘で、長いように思える試験時間の150分(2時間30分)であるが、日常フル稼動で頭を使ってない者にとっては、頭脳の持久力への挑戦でもある。(^^;)

 ※参考 平成13年秋期・初級シスアド試験の統計情報推移表(全国)平均年齢から
  ○応募者:135,795名 ○受験者:97,795名 ○合格者:36,259名
  ○合格率:37.1% ○合格者平均年齢:29.2才(^^;)


3.受験棄権の危機!

 週末が受験日(10月21日)と迫った17日夜に親父が帰らぬ人となり、18日が通夜、19日に葬儀と慌しい日を過ごし、葬儀の後で思い出したのが日曜の初級シスアド試験であった。親父は長期療養中で、すでに覚悟を決めていたこともあり、大きなショックはなかったが、弔事の慌しさで試験準備が全くできていない。特に午前問題は、暗記する部分も多いので、直前が効率的と考えて、この週を直前対策に充て込んでいた。

 「さてどうするか?」としばらく考えたが、これも親父の供養と思い受験することにした。家族には「実力で勝負!」と空元気で応えたが、自信など毛頭あるはずはない。もっとも、もしやという思いがあったのも事実だ。次回受験時の経験になればと、オリンピック精神(参加することに意義あり)で受験することを決め、あきらめたらあかん!のスタートを切った。


4.午前問題の貴重な2問

 「一夜漬け」など、もう何十年も記憶にないが、できる限りのことをした満足感で、試験日の朝は快く目覚めた。話をすると、折角の記憶が薄れるような恐怖に駆られ、家族との会話もほどほどにして、早めに試験会場へとに向かった。

 試験会場は京都産業大学で、京阪電車と叡山電鉄鞍馬線を乗り継ぎ二軒茶屋駅で下車後、徒歩で約20分の洛北山中である。あいにくの雨混じりであったが、すでに秋の香りがする景色を楽しみながら、会場着いたのは予定通り開始時刻の約1時間前であった。
 到着後は、まず会場を一回りして雰囲気を掴んだが、受験者の年齢の幅の広さに驚いた。息子や娘たちと同年代の若者に圧倒されたり、同年輩の方を見てホッとしたり、準備不足の不安などは忘れて、試験場の雰囲気を楽しむ余裕さえ出てきた。そして、試験に対する気持ちが、参加するだけでなく、獲物を狙う鷹のごとくに移り変わりつつあるのを感じていた。

 午前問題が配られ試験開始となった。今回の問題は、「適切でないのはどれか?」のように、一瞬思考能力が殺がれることもなく、「適切なものはどれか?」とストレートな設問はありがたかった。
 そんなこともあって、約40分の試験時間を残して全ての解答を記入することができ、余裕を持って見直しに掛かった。その結果、8問の解答を訂正することができたが、訂正で正答になったのが3問、訂正で誤答になったのが1問であった(4問は訂正の前後も誤答)。見直しによって、差し引き2問の正答が増えた勘定になるが、この2問は重要なポイントになった可能性がある。

 後日のアイテックによる初級シスアド試験午前解答速報との答え合わせの結果では、正答率は72.5%(58問/80問中)で、見直しによる2問の正答追加がなければ、正答率は70%で午後問題の成績次第では涙を呑んだ可能性もある。やっぱり、あきらめたらあかん!


5.午後問題の命運を別けたPERT図

 午前問題の成績はもちろん当日は知るすべもないが、感触としてはいい線と感じていたこともあり、勝負は午後に持ち越されると考えながら、「やっとここまで来たじゃないか!もうあと一息だ!」と自分に叱咤激励していた。

 午後問題が配られ試験が開始された。まず、44頁にわたる問題に目を通し、どれも難しそう!と感じたが、「でも、みんな平等に難しいのだ!」と自分を奮い立たせた。
 こんな時には、できる問題から手を付けるのが常道だが、しかしどれもこれも難しく、どれから手を付けてよいか分からない。よ〜し、では最初から順番に解答してやろうと腹を決めてやってみると、なんとか解答が出来る。気を良くして進めたが、引っ掛かったのは、問5の設問1であった。

 問5は「パソコンに新しいシステムを導入するための作業計画の立案」に関する問題で、設問1はあらかじめ用意された条件付の作業工程を、PERT図の8つの空欄に埋める問題である。この手の問題は、全問正答または全問誤答の可能性が高く、解答数も多いことから合否の命運を別ける可能性も高い。
 なんとか空欄を埋めてチェックするがなんだかおかしい。何回かやり直したがうまくいかず、とりあえずは後回しにすることに決めて、最後の問題まで急いで進めた。PERT図の問題を残して、答案用紙に全ての解答を記入し終わったのが、試験時間の終了前30分であった。

 あきらめたらあかん!と自分に渇を入れ、残された30分に挑戦する。すでに3回ほどやり直したであろうか、空欄に埋まったPERT図を見て、「これや〜!」と思わず叫びそうになりながら、急いで答案用紙に書き込む。時計を見たところ、終了2分前のぎりぎりであった。

 後日の午後解答速報の答え合わせの結果では、PERT図の問題の8つの空欄は全問正答の快挙で、全体の正答率が70.3%(52問/74問中)であった。PERT図の問題に失敗していれば、まず間違いなく不合格であろうが、どうやらボーダーラインで期待はつながった。やっぱり、あきらめたらあかん!


6.ついに笑顔の女神様が現れる!

 試験結果の正答率は、午前問題が72.5%(58問/80問中)、午後問題が70.3%(52問/74問中)となったが、合格を確実なものにするためには、あと数ポイント欲しいところだ。なぜならば、実際の合格ラインは正答率よりも合格率が優先するので、問題の難易度によって合格時の正答率が変化すること。また、問題の重要度によってウェイト付けした配点になるので、正答率より得点が低くなる場合がある。

 ところが、11月2日に情報処理技術試験センターから、問題の不備が発表された。その内容は、午後問題で不備があったので、受験者に不利にならないよう、該当の4ヵ所について、受験者全員を正答とする特別措置である。実のところ、4ヶ所とも誤答だったので、一挙に正答が4つ増えることになり、午後問題の正答率が75.7%(56問/74問中)へと跳ね上がった。まさしく、ついに笑顔の女神様が現れた のであった。やっぱり、あきらめたらあかん!


7.あきらめたらあかん!(Don't give up it!)

 11月22日に合格発表があったが、合格者受験番号の中に、私の受験番号(AD618-0979)を見つけることができた。

 受験棄権の危機!でスタートを切ったあきらめたらあかん!だったが、あの時に諦めていれば、貴重な2問命運を別けたPERT図もあるはずもない。そして、あきらめたらあかん!の心は、運をも呼び、女神様さえ現れる結果となった。諦めないことの大切さを痛感し、人生の生き様を教えられたようだ。

 思い起こせば、60才になって運転免許証を取ると言って家族を驚かせたが、見事に手にした親父でもあった。そんな親父が教えてくれた、諦めないことの大切さであったのだろうか。
 まだ四十九日にもならない仏前に、合格発表のコピーを添えて報告したのはいうまでもない。

[2001/11/23]
















 親父の正四十九日(実際は昨日行った)が明日となった12月3日、経済産業大臣の名入の合格証書が届いた。

追記[2001/12/03]
第AD-2001-10-28337号
初級システムアドミニストレータ
木村俊一郎