人間ってなんだろう・・・。
こんなことを考えているとアイツは絶対に「馬ぁ鹿!んなことほざいている暇があったらさっさと
クソして寝ろ!」って言うだろうな。
明日香だったらどうだろう。
苦笑する。
きっと、大真面目に考え込んで、考えすぎで気持ち悪くなっちゃうんだ。どっちが悩んでいるんだ
かわからないほど。
「勇基ちゃん、戒君が『人間ってなんだろう・・』って悩んでるの。勇基ちゃんならわかるでしょ?
人間って何?」
あわわ。勇基にまで飛び火した。勇基は勇基で「コイツ、いらんことを明日香に話しやがって」っ
て目をしている。その目の前で明日香は「ねぇ、人間ってイキモノでしょ?わたしや勇基ちゃん、戒
君のことだよね。となりのおばさんだって人間だし、人間ってなにってなに?」なんて本当にわけの
わからないことを言っている。
「明日香。人間っていうやつはだなぁ・・・」
さすがの勇基も言葉に詰まったのか、一度言葉を区切ってこっちを見る。違った。勇基は「人間と
は能力者じゃないやつ・・」って思ったんだ。だがすぐに明日香の方に視線を下げて言葉を継ぐ。
「明日香だよ。生物学的に言えばホモなんとかっていうやつらしいんだが、まぁそんなこと言っても
お前にわかるわけないしな。とにかく明日香だ。お前が人間って思ったやつはみんな人間なんだ。以
上!いいな」
勇基も無茶苦茶な言葉で明日香を煙に巻く。明日香は明日香で完璧に混乱し、最後の究極の決断、
とびっきりの笑顔で思考中止することにしたらしい。
ほっ。とにかくこの話題(?)は見事解決したらしい。戒は胸を撫で下ろす。しかし、勇基は勇基
でちゃんと戒の仕業を見逃していなかった。
「戒!今度はちゃんとお前が説明できることを聞いてやれよな」
ある意味無茶苦茶な発言なのだが、戒は戒でこの程度で勇基の小言が済んだことを感謝した。「僕
がわからないことを明日香に聞いているのに、どうして僕が説明できるわけなんだ?」この言葉を飲
み込んで。
勇基はダイニングを去る瞬間、ちらっと戒を見た。
「能力者も大変なんだな。『人間ってなんだろう・・・』・・か。昔、俺も考えたっけかな。ははっ、
青春やねぇ」
けっきょく、産まれ持ったものは一生、背負っていかなきゃならないんだ。あいつもそのうちわか
るさね。
それよりも、明日香とアイツが一緒にいるとロクなことが起こらないよなぁ。明日香が動物園を脱
出してきたベンガルトラを家に連れ帰ってきたことがあったが、戒がいるってことはそれ以上に大変
なことだな。
あ〜、ビールまだ冷蔵庫に残ってたかな。
最近、酒量が増えてきた勇基であった。
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