カツン、コツン、カツン・・・
狭苦しい空気が充満する地下。・・・。
カツン、コツン、コツン・・・・。
一人の手負いの獅子がいた。
コツ、コツ・・・。
橙の髪を戴いた若き勇士が。
コツ・・・。
身体に数発の銃弾を受け、出血が彼の体力を奪う。
ハァ、ハァ、はぁ・・・・。
息も荒い。全身にこびりついている泥と汗は、銃撃だけでなく、爆風や衝撃を受けた証
拠でもある。
いったい、彼の身になにが起こったのだろうか。
歩みを止める。
そしてゆっくりと壁にもたれかかり、どさっと重く腰をおろす。
俺がなにをしたっていうんだよ。
つい口からは弱音が吐かれるが、それでも野性の瞳は残っている。まだ、安全圏に逃げ
込んだわけではないのだ。
ベレッタのマガジンを入れ換えて敵の追撃を待ち構えた。
勇基にしては、それはなんでもない仕事だった。ハヒンク社というマフィアの子会社に
某大企業の子会社から受け取った書類を届けること。危険が伴う仕事ではあるが、ガルド
のなんでも屋の仕事というのはこんなものだ。危険度で言えばDランク。ガルドにはもっ
と危険な仕事があるし、この程度は最低限の仕事とも言える。
当然、依頼料も高くはない。
他の仕事の片手間にできなくない仕事である。勇基も書類を届けた後には別の仕事が入
っていた。
書類ケースを受け取ってからハヒンク社に届けるまでこそ勇基は襲撃者を警戒したが、
まさか届け先で事件に巻き込まれるとは思ってもいない。
少なくとも、自分が持ってきた書類によって引き起こされるものはないと思っていた。
勇基の入念な下調べによっても、危険は発見されなかったからである。
それでも、巻き込まれてしまった。
それはちょうど書類をハヒンク社の者に渡そうとしたときだった。突如としてハヒンク
社のビルが揺れ、それと同時に爆音も響きわたった。危機察知能力の高い勇基だから、そ
の爆発が何であるのか瞬時に悟る。すなわち、
プラスティック爆弾。
テロか?とも思ったが、予想は最悪の方向にしか向いてくれなかった。すぐに武装した
私兵が数十人規模でやってきて(もちろんハヒンク社の兵士じゃない)、いきなり軽機関
銃をぶっ放しやがった。
ハヒンク社は一瞬で地獄と化した。
小爆発、銃弾、悲鳴、怒号。周りにいたハヒンク社の社員たちは刹那のうちに殺されて
しまった。そして冷静な襲撃者たちの指令の声が聞こえる。
勇基は一瞬のうちに机の影に隠れることができたから瞬殺されることは免れたが、それ
でも安全が保証されたわけじゃない。
「俺、部外者だから家に帰してくれない?」
そんな言い訳が通じるような連中でないことは、いきなり銃をぶっ放したことでわかる
というものだ。相手はプロだ。ハヒンク社の連中も反撃に出たみたいだが、いったいどこ
まで通じるか。勢いは襲撃者の側にある。
「皆殺しだ!情報の漏洩だけは避けなければならない。一人も逃がすんじゃないぞ」
情報?
自分が持ってきたのはハヒンク社が委託したチーズの製法別による研究データとか言っ
ていたか。
手元にある書類ケースをこの際、開けてみる。
・・・・・・・・・・・。
詳しくはわからないが、なんらかの農産物に対する研究報告書といったやつだ。間違い
ない。こんなものを奪い返すために軍隊は出動させない。
「ったく、とんだとばっちりかよ!」
悪態をつく。今日の運勢はどうだったかと少し考えながらもどうやって脱出をしようか
と思索する。と・・
「なにを隠れている!?」
私兵に見つかってしまったようだ。一瞬、背中に冷や汗を感じながら言い訳を考える。
幸い、いきなり銃をぶっ放すような真似をされなくて助かった。
「かくれんぼ・・・」
無気力そうに答えた勇基の言葉に私兵は刹那、混乱したようだった。もちろん、その刹
那の隙があれば勇基には十分である。
突きつけられている銃口を手で弾き、銃が暴発する。慌てふためいた私兵に対して背中
に隠しておいた銃を滑らして引き金を引く。
“ぱん”
勇基の放った銃弾は私兵の右胸を撃ち抜いた。驚愕の顔をしながら私兵がもんどりをう
って倒れる。勇基は私兵が倒れたのを確認して立ち上がる。
「16点。不審者を見つけたら問答無用で撃ち殺せって教われなかったのかね」
倒れている兵士の胸ぐらをつかんで生死を確かめる。というか、この手の兵士は防弾チ
ョッキなどというものをご丁寧に着てくれている。ちょっとやそっと胸を撃ったくらいじ
ゃ殺せない。肋骨にヒビくらいは入るだろうが。
「ちっ、気絶しやがったか。いったいどうしてここを襲ったのか聞こうと思ったのに」
胸ぐらを放して今度は気絶している兵士の装備を探る。勇基の手持ちの武器だけでは心
もとない感がある。どれくらいの武器を持っているのか。それは敵の戦力の分析にもつな
がり、絶対に必要だった。
「拳銃2丁。赤外線スコープがついてるやつか。けっこう贅沢だね。サブマシンガンに手
榴弾が4つか。これは使えるな。もらっとこ。んあ、なんだこりゃ?通信機・・に見える
けど違うな。通信機能ももちろんついてやがるが、なんらかのコントロール装置だ。使い
方はさっぱりだがな」
まさか自爆装置はついていないだろうが、使い方を間違えて味方(敵)をごじゃんと呼
びつけられても困る。一応、通信機は聞こえるようにだけして持っておく。
「敵さんは入り口を封鎖しているはずだ。ここはガルドだし警察なんて来てくれねぇしな
ぁ。ここは生憎、5階。飛び下りるには高すぎる。・・・。
まったく、戒が羨ましいね。チョーノーリョクがあれば外に一発で出られるのに」
戒を連れてくるべきだったろうか。ちょっと思ってすぐに考えを改める。
いったい俺はいつの間に戒がいなきゃなにもできない腑抜けになったんだかな。こんな
んじゃ戒に笑われちまう。
「あ〜、武器が足りない。こんな物騒な会社だから武器かなにかがその辺に隠してないか
な」
ごそごそと探しはじめる。やっぱり?手頃な壁板を外したら武器がどさっと出てくる。
「うひゃ−。こいつら溜め込んでやがるな。拳銃42丁、フルオートのも13丁ある。マ
グナムも5丁あるし、マシンガンも8丁もありやがる。警察の手入れがあったら言い訳で
きないね」
勇基はそのなかからさらに物騒な武器を選びだした。バズーカに4連式のロケットラン
チャーだ。まるで某海坊主のような重武装になる。
「さて、これで正面突破ができるだろうか」
いくらなんでもこんな重武装で封鎖されている正面を突破できるとは考えていない。そ
れよりもハヒンク社がこういうときのために作ってある緊急の脱出用通路を探すべきだっ
た。
ここは5階か。応接室らしいからこの階にはないかもな。
周りは静かだった。きっと、この階はもう制圧されて、襲撃者たちは上層の階に向かっ
ているのだろう。このビルは25階建てだ。
襲撃者たちを追いかけることになるのはちょっとぞっとするものがあるが、それでも追
いかけないわけにはいかなかった。
勇基は一気に部屋を出て階段を駆け上がっていった。
バン!バババ!バンバン!どっかーん!!
23階。階上で銃撃戦が行われているみたいだった。
これまでに勇基は巡視の兵士6名を打ち倒してきていた。他の兵士に気づかれては困る
からバスーカなどは使っていない。全て拳銃だけで倒してきた。
そろそろストレスのはけどきかね。
戦闘が行われている背後にたどり着いて勇基はひとりごちる。
襲撃者たちは勇基の登場に気づいていないみたいだった。勇基は会心の笑みを浮かべて
4連ロケットランチャーを構える。
「部外者の俺を巻き込んでくれたお礼をしてやるぜ」
勇基にはじめに気づいたのはハヒンク社の人間だった。勇基が構えるロケットランチャ
ーを見て泡を食って、社長室なのだろう、室内に逃げ込む。そしてその異変に気づいた襲
撃者たちがこちらを振り返ってきた時は、もう既に反撃、回避するには遅すぎた。
「Good luck!」
心の中でだけ兵士たちに手を振って引き金を絞る。しゅぱ、しゅぱ、しゅぱ、しゅぱー
ん。と4連続でロケット弾が発射され、重囲の兵士たちのど真ん中で炸裂する。10人単
位の兵士たちが衝撃でふっとび、残りの大半がその下敷きになる。あとの数名は幸運にも
攻撃範囲から逃げることができた。
「よし!血路が開けた」
全弾撃ち尽くしたロケットランチャーをピクピク倒れてている兵士の一人に投げ捨てて
一気に社長室に突入する。ここまでは、全てが勇基の思いどおりにいっていたのだった。
ハヒンク社の緊急脱出路は地下に通じていた。
下水を利用した脱出路は入り組んでいて容易に地上への道へたどり着けるわけがなかっ
たが、それでもハヒンク社の人間4名と一緒に移動していた。
装備も、武器も弾薬も十分だったから相手が人間である限り勇基は生き残る自信があっ
た。そう、相手が人間なら。
いつが発端だったのか知らないが、本当に遠くで断末魔が響いてきた。俺たちに一瞬の
緊張が走ったが、それでもまだ遠いようなので安心はできた。
地上への道へ急いだ時、突然、最後尾にいたヤツが消えた。
「なっ、なんだこれは?」
これは誰の発言だったのだろう。ふと、後ろを振り返った一人が言った。
赤く光る目。全身鉄によって覆われた鎧。筋肉が収縮するたびにウイーンという駆動音
が聞こえる。ソレが人間でないのは一目瞭然だった。
「ブランデッド?」
違う。アレはあくまでも改造人間だった。これは・・機械人形か。ただ、一部には生体
パーツも使われているので、どっちがどっちだかわからないが。
コイツがとんでもない戦闘能力を持っているのは間違いがない。
腰が引けた瞬間だった。機械人形の両腕から銃口が出現して弾丸を乱射してくる。すぐ
にハヒンク社の人間も反撃に出た。地下道は一瞬のうちに戦場となった。
勇基も、社員たちと一緒に応戦する。機械人形の銃弾を身をかがめて避け、サブマシン
ガンを構えてぶっ放す。
“カン、カンカン!”
こいつもブランデットと同様に堅いのかよ。
数百発という銃弾をぶち込むが、装甲と言うべき鉄のボディによってダメージを与えて
いるのかわからない。
「ちっ!」
勇基は舌打ちをしてマシンガンを下げる。そして、とっておきの武器のバズーカを構え
た。
「喰らいやがれ!」
ぽすん!という音をたてて数十ミリの砲弾が放たれる。衝撃で砲身が上向き、そして勇
基自身も吹き飛ばされそうになるが、ぐっとこらえる。敵の様子を見た。
“ボッン”
ヒット!砲弾は敵の右腕をえぐり取ることに成功した。
よし、こいつはブランデッドほど強くない。
勇基は確信して次弾を装填しようとしたが、一瞬のうちにバズーカを捨ててどぶ川に飛
び込む。機械人形の口が開かれ、そして喉の奥が光ったのだ。危ない!
ものずごいエネルギーの高熱波が勇基のいた場所を突き抜けていった。ちょうど、放り
出されたバズーカがエネルギーの餌食になって、チョコレートのように溶ける。
マジかよ!?
「怯むな!撃ちつづけろ。ダメージを与えられないわけじゃない」
どうやらハヒンク社の人間は生き残っていて戦っているようだ。しかし、一人、また一
人とやられていって、どんどん不利な状況に追い込まれる。
あんなヤツにいくら豆鉄砲をたたき込んでもだめだ。
勇基は手榴弾の安全ピンを口ではずし、そしておもいっきり投げつけた。
「逃げろっ!」
こんな狭い空間で手榴弾を使えばどうなるか。少なくとも生身の人間なら大怪我をする
だろう。ドボン!ドボン!と川に飛び込む音が聞こえた。その1秒後、爆風が機械人形を
なぎ倒した。
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。
勇基は傷ついた身体を引きずりながら、乱れた呼吸を整える。
人造人間は一体だけじゃなかった。ヤツを倒したと思ったら、数十体の仲間が湧き出て
来やがった。さらに兵士も10人はいた。戦いつつ、逃げる間にハヒンク社の人間は全滅
した。俺だって死んでもおかしくなかった。5体の機械人形に囲まれた時はさすがにヤバ
いと思ったが、地下道を崩壊させてでもなんとか逃げることができた。おかげで武器のほ
とんどを失ってしまったが。
手元にあるのはベレッタだけ。マガジンに入っている弾だけだった。予備のマガジンも
ない。それでも人間相手ならこれで十分だが、化け物相手には素手も同然だった。
さらに身体には数発の銃弾を受けている。さすがに、銃の乱射に対して避けられるのに
も限界があった。体力も底を尽きつつある。
俺は死ぬのだろうか。
洒落でなく考えたくなる。死んでしまったらどれだけ楽だろう、と。
いったい、どの程度敵から離れるととができたのか。逃げきれることはできるのか。
信じられないことばかりだった。だが、理解できることもある。
今になってようやく事態が飲み込めてきた。それでも、敵が誰であるのかという程度だ
が。
敵は、12企業のどこか、さらにアシュラムでもないどこかだろう。これほどの技術力
と軍事力、実行力を持ち合わせた企業はそうはない。12企業以外にこんな芸当はできな
いだろう。だが、アシュラムほど強力じゃない。アシュラムだったら能力者にせよ、ブラ
ンデットにせよ、俺はとっくに死んでいた。
戒・・・か。
ふと思う。戒が今の俺の状況を見たらなんと言うだろうか。
苦笑する。
きっと、笑われるだろう。生意気なんだよ。あいつは。
馬鹿みたいに何でもできるが、小学生みたいに何もできない。スキルは一流なのに、精
神面が子供同然だった。
人のことは言えないか。
急に、戒を殴りたくなった。
戒を殴るまでは死ねないな。
敵の来襲に気づいて勇基はふらつきながらも立ち上がった。
「俺もみくびられたものだね。俺を殺すのにたった一体の化け物しかよこさないなんて」
勇基が直立する3メートル先に、赤い目の機械人形がいた。ボロボロの勇基とは対称の
壮健な人形。勇基が前にダメージを与えた痕跡もなく、状況はとことん不利と言える。
「さぁ、お得意のマシンガンでも高熱波でも出せよ。今なら簡単に俺を殺せるぜ。あんた
らのお仲間を3匹ほどやっつけたのは知っているだろ。復讐したくないのか?」
人形には感情というものが存在しないようだった。勇基は一瞬、失望して向き直る。
「まったく、ヤなヤツだ。どっかで見たことある顔だと思っていたら、戒のやつにそっく
りだ。だから戒のことなんて思い出したのか」
勇基の感想ははっきりいって大間違いだった。外見はまったく戒に似ていない。ただ、
攻撃もせずに黙って勇基を見つめるその姿が、疲弊した勇基の脳裏に重なっただけにすぎ
ない。
「言っておくがな、ノーリョク者だからってなんでもできると思ったら大間違いだぜ。俺
が丸腰に近いからって簡単に殺されてやると思ったらさらに大間違いだ。
お前の命で授業料にかえてやるよ」
そう言って勇基は右手に握っていた銃を水平にもっていった。
“パン”
勇基が撃った弾は人形のフレームに直撃した。少しだけフレームを歪めて弾は弾かれて
いく。その繰り返しが3つほど続いた。
“パン、パン”
と、同時に人形の方も動きだす。右腕を勇基の方に向けて、そして銃口を剥き出しにし
た。
ここだっ!
狙いを変更させて、人形のマシンガンの銃口を狙う。ウイーンと腕が起動音を唸らせて
発射準備をするが、勇基の狙撃によって銃口がぶれる。
“パン、パン、パン・・・”
もう少し。
“バン!”
見事、勇基の放った弾丸が人形の銃口にもぐり込み、そしてマシンガンを暴発させた。
暴発は人形の右腕を吹き飛ばすに十分な威力で、その後には、人形の肘から先がなくなっ
ていた。
人形が一瞬驚くが、それでも圧倒的な優位は変わっていないと今度は左・・ではなく口
を開いて高熱波の準備をする。
「甘い!」
その瞬間を勇基は狙っていた。機械人形の最大の武器であったが、ここが最大の弱点で
もあった。性格に狙われた一撃は高熱波の発射口を破壊した。
“パン、パン、パン、パン・・・・・”
二つの攻撃手段を失った人形は、最後に残った武器、左手に仕込まれているマシンガン
は使わずに、接近戦を挑むために突撃してきた。取っ組み合いになれば、疲れていること
を差し引いてもどちらに部があるか一目瞭然だったが、微動だにせずに銃を撃ちつづけて
いる。
ドンッ!
アクションを起こされない限り、勇基に人形にダメージを与える手段は残されていなか
った。心臓を狙い済ました一撃は、しかしながら無情にも強靱な人形のボディによって弾
かれる。そして、ついに勇基は人形の体当たりを喰らって吹き飛んだ。
“パン、パン・・カチっ、カチカチ”
弾が切れた。馬乗りにされた勇基は絶体絶命であったが、それでも表情にはどこか余裕
さえうかがえる。
人形は無情にも勇基を見下ろしていた。感情のないと思われた人形らしからぬが、絶対
的優位を見てなぶるように、おもむろに残りの左手から銃口を開ける。
人形は数百キロ規模の重さがあるので、のしかかられるだけで勇基は潰されそうな思い
になる。撥ね除けることは不可能だった。弾切れになったベレッタを勇基は放り投げる。
「さぁ、殺せよ。それとも人形のくせに躊躇いっていうのがあるのか?」
もう殺してくださいと言わんばかりの状況に、人形は仲間を多数壊した敵に対して優越
感を味わうように銃の照準を合わせる。実際、撃てばあたるような距離ではあるのだ。人
形の悲しさといえば、それまでなのかもしれない。しかし、勇基にはなぶられているよう
に見える。
ウイーン
照準が合わさったようだ。人形の銃口は、確実に勇基の心臓を狙っていた。
“BANG!!”
鼓膜が傷つくような爆音が鳴る。と同時に、馬乗りになっているはずの人形の身体が吹
き飛んだ。胴体の、人間でいえば心臓にあたる部分に大きな風穴を開けて。人形は「信じ
られない」というような表情で倒れていく。
“BANG!!”
“BANG!!”
左腕が吹き飛び、次に右足に穴が開く。
どすーんと音をたてて人形は倒れた。そしてそれと変わって勇基が立ち上がって人形を
見下ろす。
「つー。至近距離でこいつを撃つと耳がやられるんだよな」
聴覚が詰まったような感覚に陥る。勇基の手には銀に光るごっつい銃が握られていた。
「優位な状況になったら即止めをさすべきだね。俺が隠し武器を持っていないと思ったら
大間違いだ。採点は13点だね」
コルトパイソン。勇基のお気に入りで、アクセサリーがわりに持ち歩いている、実用は
しない最後の銃だった。44マグナムという弾丸は小さなバズーカといっていいほどの威
力を発揮する。下手をすれば、当たった手が吹き飛ぶくらいのな。普通は撃つだけでも苦
労する化け物銃だが、緊急の事態に使わないわけがない。
勇基は憮然と、まだ自分の敗北が信じられていない人形を見下ろす。
人形は、全ての武器を失い、そして片足も破壊されながらも、まだ起き上がろうとして
いるのかもがいていた。
「まるで、人間みたいだな」
ふと感慨深く思う。
もし、俺がこいつと同じ立場だったら、俺は間違いなく死んでいただろう。どうして自
分は生き残っているのだろうか。
考えてもしかたがない。人形に人間と同じ感情を求めるのが間違っている。ロボットに
はロボットの論理があったのだろう。そのために攻撃が遅れた。それ以上考えないほうが
よさそうだ。
「あ〜、血がだいぶ抜けたな・・・」
ふらふらする。血とともに流れ出た体力が、勇基を立ちつづけさせることを困難にさせ
る。2、3たたらをふんで勇基は壁にもたれかかった。
「これ以上追手が来たら、もう勝てねぇぞ」
勇基はどさっと崩れ落ちる。そしてそのまま眠りこけてしまう。
勇基が夢を見ている間に、勇基を助ける一人がいた。
眠っている勇基を見つけ出して、おぶって家まで連れて帰る。
勇基をおぶっているのは戒だったが、その横に、眠りつづける彼の顔を心配そうに覗き
込む褐色の美女がいた。
彼女こそが、勇基を助ける直接の手段を講じたのだった。
勇基は明日、ふかふかのベッドの上でいつもの朝を迎える。包帯ぐるぐるの姿で、心配
そうに一晩中看病しつづけたものの、つい睡魔に負けてしまったかわいい女の子の寝顔を
見ながら。
「あれ、俺はどうしたっけ?」
勇基には眠ってからの記憶がない。当然だが、自力で家に帰ってきた感じもしない。
明日香が助けにきてくれたわけもないしな。
となると戒か・・。
きっと明日香に帰りが遅いのを心配されて、様子をみてくるように言われたのだろう。
そう考えることにした。
「紅茶でもいれるか」
まだ痛む身体を引きずりながら、勇基はキッチンに向かった。
あとがき
天狼星さんからリクエストいただいたお話・・予定です。(おい)本当はもっととんでもないお話をリクエストされていたのですが、一身上の都合でアクションに変わってしまいました。(おい)
でもへたへたです。だめだめです。もっと大事に書きたかったです。異様に長いだけのお話になってしまいました。(汗)機会があれば書き直したいです。
って、それ以上にはっちゃけたお話も半分ほどできています。リクエスト本命として、いつかはしっかりと載せたいです。長いお付き合いありがとうございました。ではでは。
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