心の中に響く声がある。
『殺せ。お前の瞳に映るもの全てを、殺せ!』
私は、心の声のままに剣を振るった。
モンスター、ニンゲン、オンナ、コドモ、関係ない。
私以外のヤツはみんな敵だ。
自分以外に信じられるヤツなんているものか。
『殺せ、殺せ、殺せ‥‥』
無我夢中で敵を殺すとき、その時だけ、私は心が安らぐ。
目の前の動くモノが、絶望色に染まって倒れ行く時、その時だけが私を孤独から救う。
べっとりと額に付いた血を拭う。
真っ赤な血。新鮮な、べとべとした血。返り血。
ワタシハ、イッタイ、ナニヲシテイルノダロウ‥‥。
「‥‥ジェン‥‥‥‥」
雑音が聞こえる。
「‥‥‥‥ジェンド‥ジェンド‥‥‥」
はっ!と気づかされる。
顔をあげる。金髪のさらさらの髪、おせっかいそうな笑顔、清濁併せ持った綺麗な瞳、
見知った顔だった。
カイ‥‥。
「どうしたんだ、お前がそんな感傷的になっている所を見ると、つい口説きたくなっちゃ
うじゃないか」
密かに手に一輪の花を持って、カイは有言実行、口説きにかかる。
“ずっしーん!”
「やかましい!」と言わんばかりにジェンドが必殺の一撃を見舞う。きゅ〜と大岩に押
しつぶされたカイはそれでも笑顔を絶やさない。
「愛情表現がカゲキなんだかラ」
「もう一発、食べたいか?」
さっきの倍以上の大岩を担いで示威行為をすると、カイは冷や汗をかいて沈黙する。
「おこりんぼな君が素敵」
やっぱり懲りていなかった。今度こそ“どっしーん”と沈黙させた。
「貴様なんぞに私の気持ちがわかってたまるか」
ポツリと吐き捨てる。
そう。誰にも自分の気持ちなんてわからないのだ。
ジェンドはキャンプから一人離れて長い夜明けを待った。
いつの間にか、激戦の中に放り込まれていた。
「十六夜、危ないから下がってろ!」
カイがぽよぽよとしている十六夜を制す。そして襲い来るモンスターの一匹を一刀両断
にした。
朝、起きたらいつの間にかモンスターの群れのなかに入ってしまったようだ。
いや、野営地そのものがモンスターの巣だったらしい。迂闊だった。
「ふにょ?」
危ない!とジェンドが十六夜を蹴飛ばす。その一瞬後の空間を、モンスターの鋭い爪が
空を切った。
続けざまにジェンドはそのモンスターを袈裟斬りにして殺す。モンスターの赤紫色の返
り血がジェンドに容赦なく浴びせかかる。そして忙しいことに、蹴飛ばされた十六夜はぽ
よぽよ転がっていたが、モンスターも本能でカイやジェンドが強いことを悟り、最も弱い
十六夜を狙いはじめた。かばっては(蹴飛ばしては)モンスターを斬り、また十六夜を衛
る。ジェンドも忙しいが、それでもソツなくこなしているように見える。
「7、8‥‥。キリがないぞ。十六夜を護りながら戦うのも限界があるし‥‥」
自分が倒したモンスターの数を数えて言う。カイの額にうっすらと汗が滲んでいる。
「ふん、もう泣き言か?この程度のモンスターの100や200は軽いぞ」
ジェンドは相変わらず、バカ力を頼りにモンスターをなぎ倒している。カイから見れば
動きが大きすぎるように見えるのだが、それでも底無しの体力には呆れさせられる。
にやっと笑ってジェンドはまた一匹を沈黙させた。
「この刺激を望んでいたんだ。
お前たち、私を憎め。狂気を剥き出しにしてかかってこい。
それでなくて、なにが怪物(モンスター)か」
トランス状態になるジェンドの襟首をひょいっと掴んでカイはモンスターの巣から離脱
する。その後をまるで決められたかのようにちょこちょこと十六夜がついていく。モンス
ターたちは、まさかいきなり逃げられるとも思ってなく、ただ呆然と一行を見送ってしま
った。
薄紫色の儚い野草をカイは手に取って十六夜に説明する。
「この花を煎じて飲むと解毒作用があるんだ。森の木の根元によく生えているから、籠に
いっぱい探してきてくれないか」
カイのお願いに十六夜は元気良く返事をして森の中に入っていった。お使いを頼んだ親
の気持ちでカイが十六夜を見送った後、沈痛そうな面持ちで苦しんで横になって眠ってい
るジェンドを見る。
「無理しやがって。こんな状態で3日もこんな過酷な原野を通り抜けたとは‥‥。まった
く、信じられないよ。強がりも程が過ぎると‥‥」
意識が混濁しているジェンドを優しく見下ろしながらお得意の?説教をする。しかし、
カイは「ふぅ」と一息ついて、考えを改める。
こいつが無茶をしないわけないんだ。まったく、可愛いヤツだよな。素直で純真で、問
題もあるヤツだけど、でもまぁ、それがジェンドってわけだし。
お湯を沸かしている。解毒のために。ふつふつと沸く姿を見ながら、カイは優しくジェ
ンドの頬を撫でた。
「うっ、き‥‥さま、今なにか俺の悪口を言ってなかった‥‥か?」
夢現でジェンドはまるで聞こえているかのようなことを言ってくる。一瞬、びっくりす
るが、構わずジェンドのほっぺたを引っ張ってみる。みゅ〜ってのびるジェンドのほっぺ
は、まるで十六夜のように柔らかかった。
「カイ‥‥、覚えてろよ、あとで殺す‥‥」
十六夜が帰ってくるまでの間、カイはしばらくジェンドで遊ぶことにした。
どうせいつもは岩攻撃やらなにやらでやられているのだから、今日くらいは日頃のお礼
もかねて楽しもう。
ジェンドとカイが戯れている横でクツクツとお湯が沸いていた。
あとがき
中途半端に意味のない話です。(笑)たまにはこういうのもいいですよね。(いつもそうじゃない)いや、えっと、やっぱり刻大は難しいですよ。十六夜が絡むと特に。戦わせられないです。(おい)しっかし、いるんだかいないんだかわからない十六夜ですね。次はもっとちゃんとしたの書きたいです。
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