TS的じじばば小説。
「おい、シグナル。紀伊国屋からまた手紙が届いたぞ」
「げっ、またあのぼくを女装させたりとかひどい目にあわせたりするのか!?」
「そうだ、シンデレラのときの恨みは忘れないぞ!今度会ったら高分子ブレードの錆にしてくれる」
「あら、シグナルさんのところにも招待状が届いていたんですか?」
「エララさん!召還状の間違いですよ。そんなお気楽にしていられないですよ。あの作者の非人道的なやり口と言ったら・・・」
「何か呼んだかな」
「のあっ、作者!どうしてあんたはいつもいつもぼくを泣かせるんだ?」
「いや、まぁ。その、ねぇ。なんとなく、いじめたくなるじゃない」
「なんとなくで人を不幸のどん底に突き落とすな〜〜〜〜〜〜〜〜」
「まぁまぁ。今回は比較的マシな方だから。ささ、早くこれを着てよ」
「なにこれ?ヒゲ?しかも白髪のカツラといい・・・」
「台本はこっちだよ。今回の題名はTS的ジジババ。君たちが老人になったら〜って話なんだよ」
「ちょと待て。ジジババなら教授なり妖怪じじいなり適任者はいっぱいいるじゃないか。TSは高齢化社会も見据えた素晴らしい老人方がいる漫画なんだから」
「たとえばハンプティのおっさんみたいに?」
「いや、あんな風にはなりたくないけど」
「とにかく、エララさんは乗り気だし、がんばってやってくれよ。では、はじまりはじまり〜」
「はじまりはじまりじゃない〜〜〜〜〜〜〜」


 舞台はトッカリ老人ホームから始まる。
 トッカリタウンのはずれ、吸血鬼一家の隣にある老人ホーム。そこに入所しているのはAナンバーズからはシグナル、パルス、エララ、オラトリオ、オラクルの5人。他一般人数名。鬼所長として名高いのがラヴェンダー。この所長は老人相手に耐久富士登山とか寒中水泳だとかとんでもないイベントを用意する。いわく、「老人とは言え身体をまったく動かさないのはよくない。適度な運動はしてしかるべきだ」などと、彼女の基準での"適度"で判断している。まったく、困ったものだ。そして鬼の所長と対応して仏の副所長がカルマ。料理長も担当していて、優しさと5ツ星級の料理の腕前から所員から絶大な人気を集めている。あとは数人のスタッフと、そうそう、看護婦のような役割をしているのがクリス嬢だった。
「ん〜、今日もいい天気で絶好の格闘技観戦日和ですのぅ。エララ婆さんと一緒にテレビでも見るですじゃ」
 シグナル爺さんは久しぶりに目覚めのいい朝を迎えた。そう、今日は待ちに待ったエララ婆さんとのデートの日だったのだ。さすがにホームの外に出ることは出来ないが、それでもロビーの300インチ多角的大画面テレビで見るだけでも十分なご褒美なのだった。
「・・・・・・・・・・・・」
 ぼくの口調ってこういうのでいいのだろうか。
 シグナルはそう思う。それでもエララさんに会えることが嬉しくてたまらないのでそれなりに気にしないでおく。
「えっららさ〜ん。待ちましたか?」
 ロビーに行くとどうやらエララさんが先に来ていたらしい。早めに朝食をとって、予定の時間よりかなり早く来たつもりだったのに。残念。
「あ、シグナルおじいさん。お早いのですね。ちょっと今、水戸黄門を見ていたところなんですよ」
 テレビ画面にはちょうど水戸黄門役のちびが得意顔で印籠を突きつけたところだった。
「あ、ぼくも見ます。って、そうそ、この時間が終われば格闘技のテレビ中継が始まっちゃうんですよ。その前に何か飲み物買ってきます。エララさんは何がいいですか?」
「ほえ〜、シグナル爺さんや、メシはまだでしたかいの〜」
 と、いきなり話し掛けてきたのは、なぜか隣に座っていたパルスじいさんだった。
「パルスじいさんや、朝ごはんの時間はとっくに過ぎたじゃありませんか」
 なぜだかパルスじいさんはボケていて、たまに目からレーザーを所構わず乱射したりする。この前なんて食堂でいきなり乱射して大惨事。ぼくなんて5針も縫ったんだから。
「ほえほえ〜、時間が過ぎてしまったかいの〜。どうやら、遅刻してしまったらしい〜の」
「ちょっとパルスじいさん、朝食は一緒に食べたじゃないですか。それに、ほっぺにご飯粒つけているじゃないですか」
 ほっぺたについているご飯粒を指摘されて、パルスじいさんもご飯を食べたことを思い出したらしい。汗を浮かべてちょっと考え込んで、いきなり睡眠モードに入ってしまった。
「まったく、都合が悪くなるとすぐ寝ちゃうんですから」
 本当に、こうはなりたくないよね。
「あれ?またパルスが睡眠モードに入っちゃったんですか?まったく、パルス?こんなところで寝ていたら風邪ひきますよ。夏風邪は長引いて大変なんですから。看護する身にもなってよね」
 所員のクリスが通りかかって、呆れたように言う。ホームのみんなが言うパルスの奥様だ。クリス自身はそう言われればきっぱりと否定するが、行動を見ているとまんざらでもない。クリスが小突いても眠り続けているパルスを引きずってたぶんパルスの寝室に向かっていった。
「おっじょうさ〜ん♪私、オラトリオと盆栽鑑賞でもしませんか?それともゲートボールを手取り足取り教えてあげてもいいですよ。人生経験70年のオラトリオ様にまっかせなさ〜い」
 老人ホームのロビーには不謹慎なまでに明るい声が響き渡る。またオラトリオが見舞いに来ていた若い女の子をナンパしているのだ。年をとってもまったく変わらないのはいいことかもしれないけど、『枯れない』のはどうかと思う。この前もクリスのお尻を触っておぼんで思いっきり殴られていたものな。というか、都合のいいところで老人を武器にしたり、ボケたふりをしたりとある意味で磨きがかかっている。
 オラトリオがいるってことは、オラクルも一緒にいるはずだな。国会図書館勤務だったオラクルは激務だったために、退職した後は反動が来るものだと思っていた。仕事を生きがいにしている人が退職後によくなる症状だよ。でもなんだかそれなりにうまくやっているみたいだ。一日中の暇をシミュレーションゲームをのんびりとやって過ごしている。この前も1000年亀とかいうとてつもなく成長の遅い亀を育てるゲームを楽しそうにやっていた。この1000年亀とやらは成長どころか動きも鈍くて、1日のうちに身体を動かすのは数回程度なんだけど、オラクルは微動だにしない亀を何時間でも楽しそうに見つめている。ちょっと気が長すぎるくらいだよね。そうそう、オラクルはいつの間にかすごく気が長くなっていたんだ。反応が遅いというかもしれないけど。
 それから、オラクルは慰問に来る子供たちに人気があった。それはところかまわずレーザーを乱射する人間凶器やら、女性と見れば子供にだって「10年後にお付き合いいたしましょう」とか平然と言うオラトリオみたいな人ばっかりだから、オラクルのおっとりした性格が人を懐かせるのだろうけど、実は折り紙とかおはじきとかが上手だからっていう理由もある。
 ぼく?ぼくはねぇ、それはパルスなんかよりはマシだけど、子供たちとは一緒に格闘ゲームなんかするんだけど、つい熱中しちゃって負けてあげられないんだよね。
 もちろん、エララさんも大人気だ。
 さて、そろそろ格闘技大会が始まるからまたね。
 年を取っても、みんな案外変わらないものだよ。エララさんなんて相変わらず綺麗だし。
 これからのデートがどうなるかって?それは秘密。恥ずかしいじゃない。
 本当はこっそり抜け出して生で見たいんだけど、チケットを取るのが難しいくらい大人気だしね。それに、ラヴェンダーにこっそり抜け出したことがバレたら恐ろしくてたまらない。きっと、「ほぅ、そんなに格闘技が好きか。なら本物を見せてやろう」とか言って文字どおり生死を賭けて戦うハメになる。
 あ。飲み物とおつまみを買ってこないと。早くしないと始まっちゃうよ。じゃあっ。


「ふぅ。今回は短めだったね。それにぼくはひどい目にあってないし」
「こらこら〜、なんで私がボケているのだ。作者はどこだ?ここらへんでしっかりと話し合っておかないと私の名誉が損なわれる」
「作者?あれ、どこ行ったんだろうね。まぁ、いいや。それはそうと、名誉って頭のこと?実は文中には出ていなかったけど、パルスってボケてハゲていたんですよ。みなさん、ハゲボケパルスのブロマイド写真、抽選で100名プレゼント。宛先はこちらまで」
「ば・ら・す・な〜、シグナル。貴様はちゃんと白髪だからっていい気になりおって。いや、ハゲの何が悪い。オラトリオなんてバーコードハゲを隠すためにアートネ○チャーしているんだぞ」
「あ〜あ、言っちゃった。オラトリオが聞いたらきっとキャメルクラッチ食らわされるよ」
「でもさ、ぼくたちが話を演じたって広がりがないよね。それよりも教授とかマリアさんとかの話の方がずっとよかったのに」
「しかたあるまい。ジジババ小説といっても、教授たちを書いても普通すぎて何も変わるまい」
「まぁいいや。ぼくはエララさんと一緒に格闘技を観戦できてよかったよ。ノックアウトのシーンなんて感動的でさ、圧倒的に不利だった方が殴られても殴られてもじっとこらえて、そして一瞬の隙を狙ってカウンターアッパー。ノックアウト!エララさんにも抱きつかれちゃったし、いいことずくめだね。こんな話なら毎回でもいいのに」
「ほぅ、その話、詳しく聞きたいな」
「げっ、コード?いや、その、うん。たいしたことじゃないんだな。エララさんがエララさんで可愛いなってだけで。そういえばコードはまだ未登場だったよね(注:違います)。今度、主人公の食卓に出てくるローストチキン役で出てほしいって・・・」
「んなわけあるか!抱き着かれたどさくさに紛れてこっそりエララのほっぺにキスをしただろう。しっかり見ていたんだからな」
 ごごごごっとコードを取り巻く空気が震える音がした。
「・・・・(汗)。さっ、さいなら〜」
「こら、またんかシグナル。そこへなおれ。この細雪でお仕置きしてくれるわ。必殺、細雪っ!」
「え〜、こっそり作者です。次は普通の学園モノでもやりたいです。まぁ、今はシグナル君の生命の危機ですので詳しくはのちほど」
「はっ、そういえばぼくに細雪は効かないじゃん」
「ぬぅ。そうだった。しかし、甘いぞ。鞘に入ったまま殴ってくれる。物理攻撃ならしっかり効くだろう。死んで反省しろ」
「コード、待った。待ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、げふ・・・・・」
「次は俺様が監修してくれる」
「・・つ、つまりロースト・・チキン・・・で監修・・・・・と・・・」
 無理です。無理。




終わりました。まったく、これってジジババな感じになっていないような。(汗)まぁ、誰もオリジナルの老人が無気味に笑っている小説なんて見たくもないですよね、うん。というわけでこんな感じに。ちょっとだけRPGの雰囲気が入ってますね。もう少しらしさを出すようにがんばらないと。次、がんばります。(しっかしとコミックス読み直さないと)
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