小鹿

 雪が舞っていた。  季節外れの雪が。  もう5月だというのに、この世界ではまだ雪が降り続いている。  しんしんと。  誰かの傷を癒すように、しっとりと降りしきる。  空を見上げる。  雪は絶え間なく、地面に落ちては、はかなく消えていた。  小鹿の頬にも落ちる。  落ちては、小鹿の肌に吸い込まれるように、消える。  吸い込まれるような雪天と、どんより曇り空を見上げる。  そうか、雪は降り続いているのではない。  雪は、空に向かって上がっていっているのだ。  自分が何者かと言われれば、僕は困る。  時々、夢遊病のように僕は自失してしまうこともある。  僕は杜崎小鹿だ。  それだけは間違いはない。  でも、杜崎小鹿ってなんだって言われたら、僕だって答える自信がない。 「なにか悩み事でもあるのかな、お姫さま」 「おっ、お姫さま!?」  黄昏どきの放課後、たった二人だけの教室で、有栖川圭が愛飲の缶紅茶、『ろいやる』 を飲みながら小鹿をおちょくる。 「放課後の窓際で、机に頬杖を付いて女の子みたいに憂鬱な表情をしていたら、そう呼び たくなるのも当然だと思うけどな」  圭は小鹿の息が感じられるくらいに近づいて言う。 「また、有以のことでも考えているのかな?」 「そっ、そんなこと‥‥」  小鹿の心の中まで見透かしたように圭は小鹿の瞳を見つめ、そしてからっと笑う。 「あるわけないよな。有以に気があるのかと思ったら、まなかにまで食指をのばし、挙げ 句の果てには葉月加絵ちゃんとも仲良くしているらしいからな」  そう言った所で、ふたたびずいっと圭は小鹿に近づく。 「さて、誰が本命なのかな?」 「そうじゃないってば!僕が考えていたのは‥‥」  なんだったんだろう。ほんの少し前までは考えていたのに、今はすっかり忘れていた。 「わかった、わかった。俺のことが好きなんだな。まいったなぁ。俺にだって想いを寄せ てくれるコの1人や2人は‥‥。まっ、真剣に考えておいてやるよ」  ポンっと小鹿の手の中に『ろいやる』を渡す。そしてそのまま、圭は教室を去っていっ てしまった。あっけにとられてから我に返ると、せっかくいただいたお茶を口につけた。  あいつは、いったい何しに来たんだろう‥‥。 「杜崎‥‥小鹿‥‥‥‥か」  暗闇のなかでつぶやいた。  杜崎飛鷹の弟。  それだけで説明をつけてしまって、はたしていいのだろうか。  まなかは口の中だけでつぶやく。  飛鷹は私たちにとって、欠けがえのない、そう代わりのいない大切な人だった。  では、小鹿は?  その大切な人の弟。  不幸な、後悔してもしきれない不幸な事故によって永遠に失ってしまった人の忘れ形見 だろうか。それとも、私も有以も彼に飛鷹の代わりを求めているのだろうか?  彼がこの学園に来るのはわかっていた。  そうでないと、全ては解決されないのだから。  彼は私達を救えるだろうか?

続く・・・。




あとがき
 また変なところで途切れたり。(笑)困りました。難しいのなんのって。さらに短いで すし。私はコミックスでしか見ていないので設定がかなり古いです。もっと面白い話を書 きたかったですけど、しょうがないですね。また続きます。でもこのシリーズはリンクを つくらないですし、さらに横の関係で伸びていきます。(笑)次は楽しいお話を書きまし ょう。その場合は有栖川と加絵ちゃんがきっと主役ですね。せっかくリクエストもらった わけですし、近日中には(2週間以内ね。(笑))あっぷしたいと思います。ではでは。
戻る