児童虐待サバイバーの魂の叫び121篇を収録。
身も心もぼろぼろになりながらも
必死に生きてきた人たちの声を聞いてください。
カバーの装画は森野さかなさんによるものです。
森野さかなさんのホームページがあります。どうぞご覧ください。
〈はじめに〉
矢川珠貴
いつの頃からだったでしょう。
自分の家族といることが、なぜか苦しいということに気づいたのは。いつの頃からだったでしょうか。魂を殺される、そんな日常を生き抜かねばならなくなったのは……。
血を吐くように渇望し、刻み込むように言葉を綴り、死を薄氷の下に見ながら、私たちはある時認めなければなりませんでした。断腸の想いで、認めなければなりませんでした。
あれは、虐待だったのだと。
愛され、守られ、尊重される、唯一の故郷などというものは、私にはないのだと。
それを認めなければ、私たちはまた虐待者の元に戻らなければならない。盆、正月、父の日母の日、誕生日。あの人たちは親だから、子を傷つけるはずがないと、子どもとしてこんな想いは間違っていると……自分をごまかし、否認したままでは、私たちは加害者から離れることも逃れることもできない。
私たちには還る場所がない。私たちはそこを逃げ出さなければ、生きていけないと感じたのだから。
長らく、私たちは親を恨むことも、愛されなかったことを嘆くことも、禁じられてきました。「家族なんだから」「親なんだから」……愛を実感しながら育つことのできた幸運な人たちに、そう言われてしまう、理解されない私たちの心。
孤独でした。孤独によって人は死にもするのだと思うほどの、孤独でした。
……けれど、私たちは、いつしか同じような境遇で、死と孤独と恐怖と憎悪と、死に絶えたと思っていた愛に震えながら、生きることにあがいている仲間に出会いました。
この詩集は、インターネットを通じて知り合った、年齢も職業も性別もまったく違う、ただ、心の奥底に秘めた想いだけを共通項にした者たちの詩です。
同じ想いを秘めた方に、ぜひ手にとっていただきたい。あなたの想いは独りだけのものではないのだと。あなたは孤りではないのだと。
また、被虐されるということはどういうことかを理解したい方にも、ぜひ読んでいただきたい。被虐待児が、親から離れた後も、どれほどの恐怖と絶望とを抱えて生きていかなければならないのか、ぜひ知っていただきたいと思います。
虐げられる屈辱と恐怖、そこから抜け出すための苦悩と葛藤、人間という存在、世界という存在そのものに対する憎悪と絶望……けれどそれでもなお生き、豊かな歓喜と希望に昇華させる、人というものの在り様の深さ。
私たちは特別な人間ではありません。あなたの隣にいるかもしれない、ただの人間です。そして私たちはいつでも祈っています。どうか、同じ苦しみを抱える仲間が、一人でも楽になれますように……と。
私たちの言葉が、あなたに届きますように、と。<親たちにこそ聞いてほしい虐待された子らの魂の詩> 弁護士 山田由紀子
全国の児童相談所が2000年に通報を受けた児童虐待は18804件で、10年前の17倍にものぼっている。しかも、通報があるのは氷山の一角であり、実際には約3万件の虐待がこの陰にあると言われている。虐待と言うと、すぐに殴る蹴るといった身体的虐待を思い浮かべる人が多いが、ネグレクト(保護の怠慢ないし拒否)や性的虐待、心理的虐待もまた虐待である。
この世に生を受けて、まず真っ先に愛され自分が生きていることの価値や人間に対する信頼を教えられるべき親に虐待された子供の心の傷は深い。そのトラウマからの脱却には、過去の被虐を再度心の中で体験し、怒りや悲しみなどの感情を外に向かって吐き出すプロセスが必要だ。
本書は、そんな彼らの呻きにも似た感情の表出である。私は、彼らの絶望の深さに言葉を失い、『虐待』ということの罪深さを改めて思い知らされた。
日本では、虐待する親への教育的プログラムがほとんどない。「しつけだ」、「子どものために良かれと思って」と言い、虐待していると言う自覚がまったくない親も多い。
私は本書を、虐待してしまいそうな不安にかられている親、虐待をやめなければと思いながら繰り返してしまう親に、そっと渡してあげたい。それ以上に、「自分はいい親だ、虐待とは無縁だ」と思っている親たちに、ぜひ読んでもらいたい。そして自分自身に問いかけてほしい。「私は、あるがままの我が子を丸ごと受け止めて愛しているだろうか」と……。
本書のもくじをご紹介します。
収録全詩篇のタイトルと執筆者がご覧になれます。ホームページからもご注文いただけます。こちらでどうぞ!
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